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24.親友じゃない【柊一Side】
俺も忍も、忍の出したモンで腹も胸もドロドロで、だけどそれすりゃ愛しいってんだから……
「俺、忍のこと好きだったんだろ?…なあ?」
瞼を下ろし、荒い息を繰り返す忍の頬を撫でて訊ねる。
返事は無いだろうと、それは問い掛けというよりはただの独り言のつもりだった。
「……わからない」
ポツリと吐き出された答え。目線を薄く開かれた瞳に合わせた。
だけど視線は絡まない。
「さっきさ…忍、恋人が居たって言ってたよな。…あれ、俺のこと?」
「…知らない」
知らないってなんだよ、知らないって!
お前も記憶喪失か!
「あー…じゃあ、俺ってホモだったの?一方的にお前に好き好き言ってたキモい奴?」
「っ…ちがう!柊くんはっ、……秦野 くんは、女の子が好きだったよ」
名前、言い直してるし…。
距離置かれたみてぇで腹立つ。
「柊くんでいいんだけど」
「で…、でもっ」
「次、秦野くんって呼んだらお仕置き」
揺れる瞳の下の鼻をきゅっと摘んだ。
「………しゅ…う、くん…」
素直に呼び直す忍に、すこーしだけ、罪悪感。
なに俺、記憶無くす前、こんな純粋そうな子相手にお仕置きとかしちゃってたわけ!?
とんだ変態だったんだな。
で、自分の変態ぶりが認められずに、記憶飛ばしたっつー………、んな訳ねぇか。
俺に限って。
「えー…と、そうだ。俺、明理見てもピンと来なかったんだけどさ、ホントに俺ら付き合ってた?」
「……わからない」
瞼は開いてるが、忍は悲しそうに目を伏せてしまう。
「え、分かんないってさ、俺ら親友だったって律子さんから聞いたぞ。俺、なんか言ってなかった?」
「……親友じゃ…ない、から」
「え?ホントは仲良くなかったの?」
「……知らない」
「じゃあ、忍は俺のこと好きだった?好きじゃなかった?」
「……知らないっ!」
小さくそう叫ぶと、忍は俺と逆側を向き、未だぬるぬるの腹を隠すようにひざを抱え込んでしまった。
………怒ったのか?
あんまりにも俺が、デリカシー無い事ばっか訊いたから。
いや、しかし……待て待て待て。
まず、いいか?
こんな純粋そうな子がさ、キスに応えたとこでもう、俺の事好き決定!ってなんねーか?
それともこう見えて忍、実はビッチとか?
結構出たから、昨夜はヤってないのか?なんて安心したけど、まさかの忍、絶倫説?
いや、けど、もうムリって言ってたしな…。
それに、俺は確実に忍の身体を知っていた。
そうじゃなきゃ、男同士のヤり方なんか知る訳もねぇし、忍のいいトコ、探すまでもなく指が勝手に暴いてたことに理由がつかない。
何処舐めてやれば気持ち良いとか、最高にヨガる体位とか、頭で考えるよりも前に体が動いてた。
忍がビッチじゃなきゃあ、完全に俺が忍の恋人だ。
なら、なんで忍はそれを認めようとしない────?
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