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27.花の名前【柊一Side】

……なんつー、騒がしい奴らだ。 飯だ飯だと口々に言いながら進んでいく奴らを仕方なしに追っかける。 正直、俺も腹は減ってる。 「ホントに忘れたんだなぁ、昼はいつも俺らと一緒じゃ無かったんに」 ヒサトが隣を歩きながら、呑気にほうほうと頷いた。 「あ?」 「最近ずっと忍ちゃんと一緒だったよ」 「…そうなん?」 「まあな。…だからさ、シュウ。今なら別に良いよな。忍ちゃんもらっても」 「あ?」 ヒサトの発したのは、冗談を言う雰囲気じゃなくて。 俺にまとわりついたのは、不穏な空気……。 なんだかスゲェ嫌な感じがして、薄く笑いながら見てくるその顔を睨みつけた。 「…ッカじゃねーの。良い訳ねえだろが!」 「でも、忘れたんだろ?ならもういらねーじゃん。  前に言った時はさ、お前がフザケんなって、…やっとの事で付き合えることになったのに簡単に渡せるかっつーから、引いてやったのにさ」 「は…、俺、付き合ってるって言ってた…?」 「んー…確か、チューリップだかたんぽぽ?花の名前のバーで告ったって」 「チューリップ?たんぽぽ?」 ヒサトの言うバーの名前に覚えは無い。 これも、忍のことに関することだから忘れてる一部分、ってヤツなのか? チューリップ、たんぽぽ、…花の名前…… ひまわり、バラ、朝顔、カスミソ……っ!?………待て、バラ? …………ローズ…? 「ヒサト、ローズっつってなかったか?俺!」 「ローズ?…あー、あー?そうかも?」 返事は明確な肯定じゃないが、その名前に聞き憶えが…いや、そんな強いもんじゃない。もっと僅かに、ほんの少しだが、記憶を司る海馬がチリリと痛む。 これは、そう言うことなんだろう? 俺の失った記憶───いや、隠された記憶が表に出たがって暴れてるんだって。 「シューイチ~、ヒサト~、おっそい!」 随分先に進んでたチナツが、振り返り、俺達に声を掛けてくる。 腹は減ったが、そんな事と天秤にかけるまでもねーだろ。忍の記憶は。 「ヒサト、代返頼んだ」 学食と逆側、校門へ向けて走り出す。 「なに?忍ちゃんもらっていいの?」 「良い訳ねーだろ。死ね!」 「死んだら代返できねーし」 声を立てて笑うヒサト。何がそんなに可笑しいんだよ! 記憶を封じられた俺は、頭じゃなく体の命ずるままに、ローズ、ローズ、と唱えながらローズと言う名のバーを目指した。 ───訳だが…… まあ、当然だよな。 俺が食べようとしてたのは昼メシ。 バーの開店は早くても夕方5時。 そこには準備中の札の下りた紅い重厚な扉が、まるで俺の入店を拒むかのように立ち塞がっていた。

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