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28.ローズ【柊一Side】

ローズの近所のファミレスに入って、昼メシにありついた。 時間を潰すために漫喫で数時間。けど、何も読む気になれずに考え事をして過ごした。 途中、ネットでローズのことを調べてみた。 ゲイバー△ローズ△○○町駅─── 『 Une roue de roses 』と言う店名らしい。 なんて読むんだ、これ? ───ねえ、これ、何て読むのかな? ───ん?あー、これな。そもそも何語だよ? ───お店の名前…だよね。 ───んー…。今度また来た時訊いてみようぜ。 ザザ───とノイズ混じりに流れる台詞。 これは、俺と忍か……? 過ぎる記憶は、戻ろうとしている前触れか。それとも、こうであったらいいと脳が勝手に改ざんしたものなのか。 パソコンを消して、ソファーに凭れた。 そういや、律子さんに連絡入れておかねーとな…。 もうすっかり良くなってるってのに、記憶が戻るまでは心配だと言われ、俺は暫く忍の家に厄介になることになってる。 お父さんが単身赴任でいないから男の人がいてくれて安心。ってのは、俺に遠慮させない口実か、それともリアルに忍を男扱いしてないからなのか。 メールを打ち終えて数十秒。 律子さんから返信があった。 『気持ち悪くなったら連絡してね。 すぐに迎えに行くから』 心配性…なんだろうな。 そんな人から見りゃあ、男で大学生だろうが忍は、高校生の妹よりも心配な存在だろう。 変質者に襲われないか…ってな。 うちの親なんか、息子が頭打って入院したところで地元から出て来もしやがらねー。 そもそも、なんつったっけ? あの前日、急に電話してきたかと思ったら、…………なんだっけ? なん…か言われたんだよな、俺。 母親がスゲェ怒ってて、兄貴の嫁さんボロクソに貶してて、そんで……… 「ッ───いっつ……」 ───はっ、…なんだコレ…… マジであんの?記憶が蘇る時の痛みとか。 コレ堪えんのかよ? コレ乗り切んねぇと、忘れた記憶、思い出せねぇの? キ───ン、と耳鳴りが脳を襲う。 俺はソファーから転げ落ち、カーペットの上で蹲った。

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