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31.同じ【柊一Side】

「どうぞ」 カウンター席に腰を下ろした俺に出されたのは、透明の液体の入ったグラス。 炭酸の泡も入ってないってことは、…ジンか何かか? 恐る恐る口をつけると、無味無臭。 「って、水かよ!」 「水ですよ。アルコールが入れば思考が鈍るでしょう」 うっとりするような顔で微笑み去っていくマスター。 普通ならばそれは万人が見惚れる表情なんだろうが、何故かゾゾッと背筋が粟立った。 あの人、底知れねぇな。 隣の広川は…さんは、オレンジ色のカクテル?を飲んでる。 「スクリュードライバー?」 グラスを指差して訊ねると、 「オレンジジュース」 ぶっきらぼうに答えた。 「酒飲めねぇの?」 「いや、悠さんが、…って、悠さんのことも忘れてるんだっけ? 俺の旦那さんが、心配だから1人の時はお酒飲んじゃダメって」 「心配って…、確かに可愛いけど、アンタ男だろ」 「だから、ここにはその男を求めて男がやってくんの」 ああ、それがゲイバーだっけか。 「じゃあ、アンタも男が好きなんだ」 マスターみたいに、ゲイだと言われて、なるほどってなるような、男に好かれるような容姿じゃない。 普通の男に見えるこんなゲイも居るのか…と純粋な感想をぶつければ、広川さんは真摯な目をして首を横に振った。 「俺はゲイじゃないよ。悠さんだけ、特別なんだ。秦野だって、同じだろ?」 同じ……? 言われた言葉の意味を考える。 同じ……、確かに。 俺が好きなのは忍だからで、男だから忍が好きなわけじゃない。 なんか、そう言われたら───しっくりきた……。 「秦野が忍くんに告白した日、俺、隣に座ってたんだよ」 告白した日………? ───忍は、さ…、男が男好きって、どう思う…? ───…別に、いいんじゃないかな… また、ザザ…と音を立てて記憶が脳裏に浮かぶ。 ───友達さ、…もう、やめない? ───え……? ───やめよう、友達 俯いたその瞳から涙がボタボタ零れて、カクテルグラスの液体を紫色に染めていく。 ───忍、好き。付き合うって認めないと、俺、泣いちゃうぞ? 不安で胸がドクドク音を立てる。 だけど平気なフリをして、忍の顔を覗き込むんだ。 ───ぜったい、まちがえたって…っ、おもうっ ───思わない。だって俺、忍のこと好きだもん 俺は涙味のカクテルを飲み干して……… ───すき…っ、僕もっ……、柊くんがすきだよぉっ…! とうとう堪え切れずに嗚咽を漏らして泣き出した忍の細い体を思い切り抱き締めたんだ。 隣から拍手が聞こえて…、その音はやがて店中に広がって、大きくなって……… ───おめでとう! そう もらい泣きしながら声を掛けてくれたのが、広川さんだったんだ………。

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