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34.罪【柊一Side】
それから───
俺は、あの日を思い出す。
目が覚めたら病院だった。
何があったか分からないまま、検査をされた。
そして座らされたベッドの上で説明を聞いて、医者が部屋を去った後、入れ替わりに忍が入ってきたんだ。
真っ青な顔で、頭に痛々しく包帯を巻いて。
───誰?
そう訊ねた俺に、まさか悪意なんか有った訳もない。
忍は言葉を失ったきり顔面蒼白で、そこからは一言も発さずに、迎えに来た家族と一緒に帰っていった。
あんな顔をさせたのは、初めてだった。
あろう事か、忍の妹の明理は、俺と付き合っていると虚言を吐き、半信半疑でも俺はそれを否定しなかった。
忍のことだ。
二股を掛けられていたんじゃ、…いや、自分が付き合ってると勘違いしていたんだなんて思い込みそうだ。
なら、俺の一世一代の告白は何だったと思ってるんだ、と今なら言ってやれる。
ただ、それを強く言い聞かせられるほど、俺の罪は軽くは無い。
「なあ…ツッキー。誠心誠意謝って、また告白したら……忍は俺のこと、許してくれるかな?」
弱気な言葉が口をつく。
けど、ツッキーは首を横に振って、
「謝るとか、そういう事じゃないんだよ」
グッと握ったグラスを傾け、オレンジジュースを飲み干した。
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