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36.母親【柊一Side】
「……………っ!!」
「秦野!?」
「秦野くん!」
強い頭痛に、気を失っていたのは一瞬の事か。
情けねぇことに、ネコちゃんのツッキーに身体を支えられてた。
息の乱れた俺の背を、ツッキーは向かい合わせで支えながら擦ってくれる。
こんなん、パートナーのオーナーに見られたら、本気で出禁ものだ。
~~♪~~♪
ふと、店のBGMとは異なるメロディーが聞こえた。
……これ、俺のスマホの着メロか。
「…悪ぃ、電話」
店の外に出ようと席を立つと、身体がフラついた。
「…もーっ、いいよ。ここで出ろ」
滅茶苦茶言いやがる、とマスターに助けを求めれば、コイツと同じ考えなのか、カウンター奥の麗しの女神様もコクンと頷く。
いいのかよ、他に客も居るのに。
「…じゃあ、すんません」
軽く頭を下げてから、通話ボタンをタップした。
『ああ、柊一!やっと出た!何度も掛けてるのよ』
げっ…ババアだ。
無意識に顔をしかめると、表情の変化が気になったんだろうか。ツッキーが俺を見て首を傾げた。
お・や、と口の動きで伝える。
『ちょっと、聞いてるの?柊一!』
うるっっせぇ!!
と思えど口には出せず。
出したら最後、この10倍は騒がしくなって、流石に店ん中いられる状態じゃなくなっちまう。
「聞いてる。何?事務の綾崎さんから連絡行った?」
『そんなことより!』
そんなことって…!
いやいや、上京した息子が意識不明で救急車で運ばれたことが、そんなことかよ!!
あー…終わったなぁ。
この人昔から兄貴のことばっか可愛がってたけど、こんなに俺に興味なかったとはな。
完全に、終わったわ。
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