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40.最高の嫁【柊一Side】

「秦野!もう忍くんのこと泣かせんなよ!」 ビシィッと、美少女アニメのツンデレ少女よろしく、指を突き付けられた。 「泣かさねぇよ。…ま、俺の下では散々蕩けさせて()かせるけどな」 「シモネタかッ!」 「ィテ…ッ!」 殴られた。 んとに、ツッキーは乱暴だよな。 こんな暴力的な気の強い奴、香島さんも一体どっっこ見て可愛いつってんだろな。 ……ま、スゲー良い奴かもだけど。 「はい、秦野くん」 目の前に、ジンライムのカクテルグラスが差し出された。 目を上げると、カウンターを挿んだ向こうでマスターが柔らかな笑みを浮かべていた。 「もう飲んでも平気でしょう?」 この人も……いつの間に作ってくれてたんだか。 ほんと、気が回るってーか……丁度のタイミングで。流石マスターってか、夏木さんもいい嫁もらったよな。 ───よし!俺も、誠心誠意想いを伝えて許してもらって、最高の嫁……忍の心をもう一度取り戻してやる! 決意も新たに、ジンライムをカッと飲み干す。 「ふぃーっ」 口元を拭って、財布を取り出す。 「マスター、ごちそうさまです」 「…もう間違えるなよ」 横から足を軽く蹴られた。 「っせーな。もう心配させねぇから安心してろ」 戯れる程度の強さで蹴り返す。 「次は無いからな」 トスッ 「だからこっちも次はねぇよ」 トスッ 「忍くん、泣くの凄い我慢してた。だから、思い切り泣かせてやれっ!」 ドスッ! 「いっ…てッ!テメ…脛マジ蹴りとか…!」 脚を押さえて苦しんでると、上からクスクスと笑う声が聞こえた。 きっとマスターが悪意なんか全く感じさせない顔して、痛がる俺の姿を笑ってるんだろう。 何気に根性悪ぃ……。

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