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46.存在する意味
大袈裟に反応してしまった僕を、田沼くんはスゴイ顔~、とからかって遊ぶ。
なんで…僕たちが恋人同士だったこと、知ってるの?
「え~?それ、なんで知ってんの?って顔?」
ほっぺをツンと突付かれて、それが嫌で避けた拍子にソファーから転がり落ちた。
「ぃたっ」
「あー、大丈夫?ほら、逃げない。手ぇ貸すだけだから」
滲んでく世界の中、手を掴んでソファーに引き上げられた。
「…やだ、…かえりたい…っ」
嫌だ、もう。やっぱり、リア充になんて碌な人がいないんだ。
抱え込んだ膝に、顔を押し当てる。
どうしてついて来ちゃったんだろう。
どうして……柊くんのことなんて、もう……
「……ごめんね、忍ちゃん。泣かすつもりじゃなかったんだけど」
頭を撫でてくるから、触られたくなくて頭を滅茶苦茶に振り回す。
反動で眼鏡が外れて飛んでいったけれど、気にする余裕は無かった。
「ああっ、ほら、また落ちちゃうから。もう触んないから」
はぁ、と小さく息を吐かれた。
何がしたいのか分からないこの人にまで、僕は呆れられてしまった。
柊くんに忘れられた僕にはもう、存在する意味すら無いのかもしれない。
なのに、僕はどうして……生き続けているんだろう───?
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