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50.懐かしいキス【柊一Side】
「だいたいっ、ぼく…っ、ゲイだもっ……そんな、結婚…なんてっ」
「忍は生粋のネコちゃんだもんなぁ」
「っっ……ばかぁっ!」
抱きしめようとしたら、胸をポカポカと殴られた。
…マッッジでこいつ、可愛いなぁ。
ムリヤリ腕の中に抱き込んで、怒りで真っ赤になってる耳朶にキスを落とす。
「忍、ちゅーしよっか」
「っ!…………」
たっぷりの沈黙の後、忍は小さくコクンと頷いた。
顎に手を添えて、顔を上げさせる。
喉を擽ると、小さく震えた唇から甘い吐息が零れた。
濡れたまつ毛が伏せられていく。
黒目がちな瞳が瞼に全て覆われたのを見届けてから、俺も目を閉じた。
「んん……」
ふにっと柔らかい唇から、甘えたな声が漏れる。
随分と久しぶりに感じる感触。
無理矢理こじ開けるじゃない、受け入れられるキスは、確か先週の水曜ぶりか。
なのに、…なんでだろうな。
スゲー懐かしい気がする。
ヤベ…、涙出そう。
角度を変えて唇を味わう。感触を確かめるように、何度も、何度も。
ゾクゾクと質量を増してく下半身には気付かないフリして、唇と唇だけを触れ合わせ続けた。
「ん……、やぁ」
首に手を回した忍が、膝の上に乗り上げてくる。
先に音を上げたのか、差し出された舌に唇をチロチロと舐められた。
───たっまんねぇな、まったく、この子は。
「忍、ヤラシイコトしたいの?」
唇同士が触れ合うか合わない程度の位置で、瞳を覗き込みながらそう訊けば、真っ赤な顔して俺のことを見つめ返して。
「……うん」
聞こえないくらいの声で頷いて、ぎゅとしがみついてくるんだから、コレ反則だろ。
「じゃあ、俺の部屋行こうか」
立ち上がって、抱き上げた身体を下に下ろせば、縋るように抱き着かれた。
「やっ…やだっ!もう離さないでっ……忘れないでぇ…うぅ…っ」
一度は止まった涙が、またハラハラと零れ落ちていく。
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