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53.ヤキモチ
「あのなぁ、チナツ、俺たちはお前に付き合ってられるほど暇じゃねぇの。今から2人で、……って、忍!?」
足元にしゃがみ込むと、ビックリしたみたいで慌てたように名前を呼ばれた。
「んっ」
ちょっと首を伸ばして、柊くんのソコに、細身のパンツの生地の上からキスをした。
「えっ、ちょっ…忍っ!? 勃つ…っ」
「いいよ。もっとおっきくして、僕の中にいっぱいちょーだい」
唇を移動させて、その度にちゅってリップ音を鳴らす。
どんなに可愛い女の子でも、胸が大きくても、柊くんのことは譲らないもん。
もう、柊くんと離れたくない。
他の人になんて触らせてあげない。
柊くんが男が好きって噂が流れれば、もう女の子からモテなくなるだろうし、誰からも構われなくなればずっと僕とだけ一緒にいてくれる。
お腹の中に、そんな黒い気持ちが沸き上がってきて………。
「柊くん…、きもちい?」
『7階です』
柊くんが答えてくれる前に、エレベーターが7階で停まった。
「えっ……と、じゃあ、私ここだからぁっ」
チナツさんがひっくり返った声で断って、箱から走り出て暫く、
『扉が閉まります』
エレベーターの扉が自動で閉まる。
その電子的な声に、一気に頭が冷えた。
「っ───ごめんなさいっ」
すっかり勃ち上がったソコから唇を離した。
柊くんはカミングアウトする気なんて無いかもしれないのに、勝手なことをしちゃった……。
「ごめんなさい…」
折角柊くんが僕のことを思い出してくれたのに、こんなこと………
もう、嫌われちゃうかもしれない。
「僕っ…」
『8階です』
エレベーターのドアが開く。
「忍、降りよう」
柊くんが手を引いて立たせてくれた。
僕は柊くんの顔が見られなくて、自分のつま先を見つめながら彼に続く。
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