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74.けじめと誠意【柊一Side】
グッタリしてる忍を風呂に連れてって、一方的に取り付けた約束通りナカを綺麗にした。
力が入らないのを良いことに、正面から抱き抱えるように押さえつけて。
「んゃっ、しゅーくぅっ…ぁっ、じ、ぶんでっ、するってばぁ…っ、あ、やっ、やぁっん」
文句言ってっけど、無視無視。
だってこれってさ、俺だけの特権だろ。
忍の中に俺が吐き出したモノを俺が掻きだす。
うん。権利であり、義務だな。
俺のが指長ぇし、忍がやって取り残しが出ちったら問題だし。
つーことを言葉に出して伝えてないと、俺の理性もヤバかった。
力入んねぇくせに、まだイキ足んねーのか、中で感じまくって縋り付いてくるし、熱い息が生肌に直に掛かってくんだぞ…。
勃ってんの誤魔化すの、必死だったっつーの。
俺、絶倫か!
なんとか2人で風呂を済まして、今はベッドの中。
抱き着いて眠る姿はめちゃくちゃ可愛くて、俺もこのまま忍と共に眠りに落ちてしまいそうになるけど……
抱き締める手を片手だけ離して、サイドボードに置いたスマホを取った。
点滅を続けるスマホの新着メール表示は2通。
Limeも何通か届いてるけど、そっちは急ぎでも無いだろうし明日でいい。
新着メールの一方は父親、もう一方は………
俺は迷うことなく、そっちのメールを開いた。
平井律子さん、忍の母親だ。
案の定、俺の体調を気に掛ける言葉と、忍が帰らないのだが知らないかと言う心配の内容だった。
電話ですぐにでも忍の無事を伝えたいが、声を出せば起こしてしまうかもしれない。
忍が一緒にいることと、居場所、すぐに連絡できずにいたことへの謝罪を打ち込み、それから………
『記憶が戻りました。
色々とお世話になりました。
明日朝一で忍を送っていきます。
律子さんに、お話したいことがあります。』
俺のけじめであり、誠意の見せ所だ。
忍に心から信頼してもらえるよう、自ら決戦の場を用意する。
メールを送信して、早めの時間にアラームをセットする。
それから開いた父親からのメールには、母親の俺に対する態度への謝罪と、兄貴たちの無事が記してあった。
兄貴とその嫁さんは、母親の目の届かないところへ親父が逃がしたらしい。
俺のお見合いの件も白紙に戻った、と。
『ありがとう』
それだけ打って、返信した。
スマホをサイドボードに戻して、忍に向き直る。
静かな寝息を立てる穏やかな顔。
安心したように眠る、愛しい存在。
……今度行ったら、ツッキーかマスターに、ゲイ婚ってやつについて詳しく聞くか。
首の下に腕を通し直して、俺より15cmも小さな体を抱き寄せた。
眠ってるからか、温かくて柔らかい。摺り寄せた頬はふわふわしてる。
もう、泣かせたくねぇな…。
エッチん時は別にして。
あんま触ってるとまたシたくなるから、唇の端に一回だけキスを落として、目を閉じた。
布団を綺麗に掛け直して抱き締めたら、眠ってるくせして無意識下で抱き返してくる。
愛しいぬくもりを感じながら、俺は久々に幸せな眠りについたのだった。
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