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77.別れ話

もうお母さんは起きてるだろうけど、自分のカギを使って玄関を開けた。 ノブを捻った途端、だ。 ダダダダ…と駆け足の音がして、扉を押し開いた瞬間、 「忍っ!!」 怒鳴られた。 「あんたはもうっ、無断外泊なんかして!心配するでしょうが!泊まりに行くなって言ってるんじゃないのよ。遅くなる前にちゃんと連絡しなさいって言ってるの!」 腰に手を当てて、すごく分かり易い「怒ってます」のポーズを決めて、お母さんが立っていた。 「あ…の、…ごめんなさい。昨日は柊くんのうちに泊まらせてもらって…」 「知ってます!柊一君が連絡くれたもの。でもね、あんたは男にも女にもかんったんに攫われそうな顔してるんだから。ちゃんと自覚して、お母さんに心配かけないようにしなさい!」 「………はい」 簡単に攫われそうなひ弱さは否定できないけど、こんな顔のやつを態々攫う人なんていないのに……。お母さんは少し心配性過ぎるな、と思いながらも、ここで否定すればお説教がもっと増えることになるだけだから、納得いってないままに一応頷く。 「ご飯は?」 「食べてきた」 「じゃあ、学校に行く用意しちゃいなさい」 「はい」 お母さんの腰から漸く手が離れて、その顔に優しい笑みが浮かんだ。 「お帰り、忍」 頭を撫でられる。 もう成人した息子に……、ちょっとこそばゆい。 「…うん、ただいま」 「柊一君も、お帰りなさい」 「ただいま。…それで、律子さん、…その……」 靴を脱いで玄関を上がった柊くんは、その場で立ち止まり、お母さんの顔を見つめた。 お母さんも柊くんと向かい合い、2人は真剣な顔で見つめあう。 ………ん? んんっ!? ま…まさか、柊くん、明理だけじゃなくて、お母さんとも二股掛けてた…とか!? 二股じゃなくて、三股!? もしかして、僕と正式に付き合うことに決めたから、お母さんと別れ話を!? え、…えっ、僕、ここにいたら邪魔になる?! 余りのことにビックリして、ギクシャクとしながらも何とかその場から去ろうとした僕の手を、何を思ったか柊くんが掴んで引っ張った。 「ひっ…!」 やっ…やだやだやだっ!自分の恋人と自分の母親の別れ話に付き合わされるなんて!!

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