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78.破裂音

手を放してもらおうと必死に腕を引いていれば、 「忍、いいからここに居て」 柊くんに、懇願するようにそう言われた。 だけど、安易に頷く訳にはいかない。 だって…! 「わっ、別れ話ならっ、2人でしてくださいっ…!」 声はひっくり返っちゃったけど、ちゃんと伝えられた。 「えっ、なんで別れんの!?」 「えっ…!? 別れないの!?」 ど…どういうこと…!? 柊くん、お母さんとも別れないまま、僕と付き合い続けるつもり? でも、浮気はしてないって………あれ?2人とも付き合ってるなら、2人共本命ってことになるから浮気にならない……? じゃあ、明理ともこのまま…… 「………はっ!でもお母さんはお父さんと結婚してるから、不倫になっちゃうよ?!」 「は!?…………っ!! 忍~~~っ!!」 突然肩をガッチリ掴まれて、思わずビクッと震えてしまう。 「なんでそう言う話になってんの!?」 「えっ……、なんでって、……だって、柊くんお母さんとも付き合って…」 「ないから!俺には忍だけだってちゃんと言っただろーが!!」 力いっぱい否定された。 「…でも、柊くん、お母さんに大切な話があるみたいだし、…だから、僕の為に別れてくれるのかなって…」 「別れるも何も、俺忍としか付き合ってねーしっ!!」 「えっ、明理は!?」 「あれは向こうの嘘だってば!!」 両肩を掴んで必死に訴えてくる柊くんの顔を見上げる。 じーっと目を見つめるけど、逸らさずに見つめ返してくる。 「うー…」 こういう時目を逸らさないのって、ほんとのことを言ってるから?嘘を見破られないようにするため? 僕は誰かと付き合うのも柊くんが初めてだし、そもそも人付き合いを避けて生きてきたし、……その仕草を見ただけでどっちか判断するのは難しい。 どうやって見分けたらいいのか……。 更にじーーっと柊くんを見つめていると、 「……ぷっ」 唐突に破裂音が聞こえた。 見ると、お母さんが口に手を添え堪え切れないように笑っている。 「お母さん……?」 「忍、あんた、お母さんと柊一君が付き合ってるって思ってるの?…ぷくくっ、ないわ~」 「え…お母さん…?」 「もうっ、柊一君ってば、なにしてるの~っ、ふふっ」 「り…つ子さん??」 「おばかさんねぇ、あんた達」 僕はどうして笑われてるのか分からずに、柊くんを見上げていたのと同じ目でお母さんを見つめた。

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