78 / 93
78.破裂音
手を放してもらおうと必死に腕を引いていれば、
「忍、いいからここに居て」
柊くんに、懇願するようにそう言われた。
だけど、安易に頷く訳にはいかない。
だって…!
「わっ、別れ話ならっ、2人でしてくださいっ…!」
声はひっくり返っちゃったけど、ちゃんと伝えられた。
「えっ、なんで別れんの!?」
「えっ…!? 別れないの!?」
ど…どういうこと…!?
柊くん、お母さんとも別れないまま、僕と付き合い続けるつもり?
でも、浮気はしてないって………あれ?2人とも付き合ってるなら、2人共本命ってことになるから浮気にならない……?
じゃあ、明理ともこのまま……
「………はっ!でもお母さんはお父さんと結婚してるから、不倫になっちゃうよ?!」
「は!?…………っ!! 忍~~~っ!!」
突然肩をガッチリ掴まれて、思わずビクッと震えてしまう。
「なんでそう言う話になってんの!?」
「えっ……、なんでって、……だって、柊くんお母さんとも付き合って…」
「ないから!俺には忍だけだってちゃんと言っただろーが!!」
力いっぱい否定された。
「…でも、柊くん、お母さんに大切な話があるみたいだし、…だから、僕の為に別れてくれるのかなって…」
「別れるも何も、俺忍としか付き合ってねーしっ!!」
「えっ、明理は!?」
「あれは向こうの嘘だってば!!」
両肩を掴んで必死に訴えてくる柊くんの顔を見上げる。
じーっと目を見つめるけど、逸らさずに見つめ返してくる。
「うー…」
こういう時目を逸らさないのって、ほんとのことを言ってるから?嘘を見破られないようにするため?
僕は誰かと付き合うのも柊くんが初めてだし、そもそも人付き合いを避けて生きてきたし、……その仕草を見ただけでどっちか判断するのは難しい。
どうやって見分けたらいいのか……。
更にじーーっと柊くんを見つめていると、
「……ぷっ」
唐突に破裂音が聞こえた。
見ると、お母さんが口に手を添え堪え切れないように笑っている。
「お母さん……?」
「忍、あんた、お母さんと柊一君が付き合ってるって思ってるの?…ぷくくっ、ないわ~」
「え…お母さん…?」
「もうっ、柊一君ってば、なにしてるの~っ、ふふっ」
「り…つ子さん??」
「おばかさんねぇ、あんた達」
僕はどうして笑われてるのか分からずに、柊くんを見上げていたのと同じ目でお母さんを見つめた。
ともだちにシェアしよう!