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80.ごめんなさい
「っ…柊くん、僕……そんな風に言われたら、離れられなくなっちゃう…。柊くんがもう要らないって言っても、消えてあげられないよ?」
「なんでそんな考えになんの!忍を要らなくなるワケないだろ」
グインと振り向くと、柊くんはまた僕の両肩を掴んだ。
そして、腰を落として目線を合わせると、じっと瞳を覗き込んでくる。
「忍…、ずっと俺と一緒にいてください。今すぐは無理だろうけど、いつか忍の全部を俺に預けていいって思えた時、俺のお嫁さんになってください」
柊くんは肩から手を下ろすと、今度は僕に向かって頭を下げた。
こんな……こんな、突然…お母さんの前で、プロポーズされるなんて………
僕でいいの?本当に、ずっと一緒にいてくれるの?
女の子じゃなくて、男のお嫁さんでいいの?
僕が、全部、柊くんに預けていいって思ったら……?
「っ…そんなの!今だって思ってる!僕のぜんぶっ、柊くんのものだもんっ!」
ぶわっと溢れた涙を袖で押さえて、柊くんの後ろに回り込む。
そして僕は、お母さんに正面から対峙した。
「お母さん、ごめんなさい。僕、ずっと、…女の人じゃなくて、男の人が好きで、ずっと……言えなくてごめんなさいっ!ぼくっ、柊くんが好きです!」
頭を下げて、今まで決して伝えられなかった僕の隠し事を告げた。
僕は長男だから、きっとお母さんのこと、がっかりさせちゃう。
もう息子じゃないって、勘当されるかもしれない。
だけどそれでも、僕は柊くんと一緒にいたいんです。
ごめんなさい、お母さん。ごめんなさい。
ここまで来たら、僕はこうして頭を下げて、お母さんの言葉を待つことしか出来ない。
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