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84.聞きたいこと【柊一Side】
「そー言やツッキー、俺訊きたいことあんだった」
くだらないやり取りの中ふと思い出して、ジョッキをガッと煽ってから真剣な目を向けた。
ジョッキっつっても、中身はウーロン茶。忍が来るまで酒はお預けだ。
どうせなら、忍と乾杯してから旨い酒を飲みたいしな。
「うん、何?俺で分かることなら」
フザケてた空気を一蹴、ツッキーも真面目な顔を作って俺と向き合ってくれる。
ツッキーのこう言うトコ、嫌いじゃねぇんだよな。
つか、そもそも嫌いじゃねーか。
時々ウゼェなとは思うけど。兄貴ぶって来るトコとか、説教クセェとことか。
「ツッキー、さ…、香島さんとゲイ婚ってのしてっだろ?それ、どんなん?俺にも出来んの?」
「え……、っ…俺とお前が!?」
「はぁっ?! なワケあっか!この天然!!」
「はっ、ウケる、秦野いきなり二股宣言!?つか、社長と張り合おうとか!」
本気で目ェ見開いてるツッキーと、勘違いに気付きつつからかってくるよーちゃん。
社長ってのは、よーちゃんの勤めてる会社の社長でツッキーのパートナーの香島さんのことだ。
てーか、どいつもこいつもめんどくせぇ!
「あ、なら忍ちゃんは俺が…」
「だあーっ!なんでそーなる!?お前ら馬鹿だろ!特に長原のおっさん!テメェはすっこんでろッ!!」
「……秦野くん」
ゼエゼエと肩を揺らしていると、カウンターの向こう側から声を掛けられた。
顔を向けると、笑顔のマスターが唇の前に人差し指を立てて、シー。
「………すみません…」
そのキラキラの笑顔が…怖いっす……
「いいえ。それより、皐月くんをからかおうとしてるんじゃなかったら、それは平井くんと?」
「当然です。忍以外はどうでもいいんで、ツッキーとかマジ有り得ねぇっす」
「ん?今、皐月くんを馬鹿にしたの?」
「ヒッ!?…い、いえっ!してないです!ツッキー バンザイ!」
「あー!なんだよそれ!それこそ俺のこと馬鹿にしてるだろー」
あっ、クソッ馬鹿!ヨケーなこと言ってんじゃねぇ!マジこの人怖ぇんだからな!!
100%可愛がられてんのはテメェだけだっつーの!
「ふふっ、冗談ですよ。これからも皐月くんと仲良くして下さいね」
オレンジ色の優しい照明の中、キラキラッとやたら眩しい光を纏う、幻だかなんなのか……女神の笑顔を放つ美形マスター。
その『マスター』の呼び名は、俺からしてみりゃ『バーの主人 』と言うより『師匠クラス』の『マスター・リュート』……なんつったらその視線で射殺 されっか。
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