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87.ソファー席【柊一Side】

「んなことより、忍」 関谷の爆裂トークに固まってる忍を後ろから抱き寄せて、カウンターチェアに座る脚の間に挟み込む。 「気の利かねぇツッキーとよーちゃんが席空けてくんねーから、俺の膝に座るか?」 耳元でささやき掛ければ、その耳たぶまでも赤く染めて、首をぷるぷると横に振った。 「ん?やなの?俺の膝」 「…んん、やじゃない…けど…」 膝の間で半回転。思った通り真っ赤な顔の忍は、潤んだ瞳で俺を見つめながら上腕の袖をくいくいっと引っ張った。 「皐月くんがね、貸してくれるって言ってくれたから…」 「なーにを?」 立つように促されたから、立ち上がったついでに忍を抱き上げる。 「あのね、皐月くんと香島さんの専用席」 俺よりも高くなった目線が、スッと水槽の方へ流れてく。 その先にあるのは、2人掛けのソファーに、小さなテーブル───ここのオーナーが、ここの水槽を大好きなパートナーの為に作った、2人の為だけの特別席だ。 テーブルには常時『予約席』のプレートが出ていて、時々香島さんとツッキーが2人で楽しそうにいちゃついてる姿を見ることが出来る。別に見たいもんでもねーけど。 そこに誰かが座ろうとすればすぐにマスターや常連が注意する。だから、他の奴が座ってるのなんか見たこともねぇ。 マスターですら、一度も座ったことが無いって話だ。 「は…?…ツッキー、マジでいいの?」 まさかつっきーが忍を騙す訳もねーけど、半信半疑で訊ねる。 「うん。復縁祝い…って言うか、悠さんと2人で話して、…やっぱり、忍くんすっごく辛そうだったからさ…。元に戻れて良かったねって、何かしたくて。だから、手軽なお祝いで申し訳ないんだけど、2人の記憶に何か残せたらって思ってさ」 「皐月くん……っ」 小さく声を上げた忍が、俺にきゅっとしがみ付いてくる。 …てかさ、ほんと……、ツッキー、どれだけイイ奴なんだよ。 「物より想い出、な。…ありがと、ツッキー。じゃあ、今日は心置きなくスケベ席使わせてもらうわ」 「なっ…!!?なんだよ、そのヘンな名前はぁっ!!」 「ん?ドエロソファーとかのがいい?どうせ、客が捌けた後そこでエロいことしてんだろー?」 「してないよっ、バカッ!!」 「はいはい。で、俺らはドコまでヤッていいの?」 「ちゅーまでだよっ!綺麗に使えよ!」 「ははっ、キスまでは可なんだ」 サンキューな、と後ろ手を振って、その特別なソファー席へ進む。

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