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③ 咲磨 視点

「ごめん。でも俺、部活したくてこの学校入ったから」 ぐすぐすと鼻を鳴らしていたが、降りる駅に着くと 「僕も起きれた日は学校で勉強するから、一緒に行ける日は一緒に行きたい」 とお願いされた。 皮膚の薄い、白い肌の聖の目元は、この数分で赤くなってしまっていた。 学校につくと俺は、ハンカチを濡らし、聖の目元に当てた。 「咲ちゃんは本当に優しいね」 と言われたが、それは俺が聖を好きだからであって、誰にでもこんなことをするつもりはない。 「これで腫れがひかなかったら、保健室に行きなよ」 「うん。大丈夫だよ。それに僕、男だし」 「男かどうかは関係ないだろ」 事実、皮膚の強さに男女差はない気がする。 そういうと聖は「えっ、う、うん」と少し慌てて頷いた。 朝の登校時間が共有できなくなったことで、聖は下校を一緒にしようと提案してきた。 正直、俺の部活が終わるのを待つとかなり遅くなる。 が、自習室で勉強できるし、学校の方が集中できるし、早起きより断然楽だと言った。 そこまでして一緒に帰らなくても…、と言ったが「咲ちゃんは僕と一緒嫌なの?」と目を潤ませたので、慌てて「嫌じゃない」と言うしかなかった。 また聖の目が腫れてしまう。 部活のメンバーとの付き合いもあったが、試合前はどうしてもピリピリとしてしまい、部活以外の時は距離を置きたかった。 そんなこんなで、部活終わりに聖の教室に向かう。 と、聖と誰かの話し声がした。 いつもは1人で黙々と勉強しているのに珍しいなと思い、思わず身を隠した。 「聖くん、3年の先輩に告白されてたね」 慣れたはずだったけど、改めて聖がモテることを指摘されると胸がズキリとする。 この気持ちを忘れるためにこの学校に来たのに。 「うん」 「あの先輩、かっこよかった~」 「え?ああいうのが好きなの?」 「う~ん、ちょっと怖そうだけど顔が良かったから。聖くんは嫌い?」 「っていうかさ…、男同士とか気持ち悪い」 「ええ~笑」 その声を聴いた途端、まるで心臓を貫かれたかのような痛みが走った。 俺はとんだ勘違いをしていたようだ。 そもそも、同性が恋愛対象だなんて聖は一言も言っていない。 勝手に勘違いしていたのに、俺のショックは相当デカかったようで、気づけば俺は自宅にいた。 携帯が震えているのに気付き、俺は聖を置き去りにしてきたことを思い出した。 数件の不在着信とラインが来ていた。 とりあえず、謝罪し、部活のメンバーと帰りにスポーツ用品店によることになったから、帰るようにとメッセージを送った。 『もう!早く言ってよ笑 明日は一緒に帰れる?』 文の後ろには目を潤ませた絵文字がついていた。 『本当にごめん。明日は大丈夫』 そう送ってベッドに突っ伏した。 あんなに可愛い子をこんな遅い時間に学校に置いて来てしまったことに後悔する。 明日からは心を切り替えてちゃんと対応しよう。 そして、この気持ちにはしっかりと蓋をするんだ。

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