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④ 聖 視点
突然だけど、俺…、間違えた。
僕は幼馴染の咲磨の事が大好きだ。
それは出会った時から芽生えていた感情だった。
それが恋慕だと気づいたのは、中3の受験期だった。
僕に内緒で、僕が全然知らない高校を受験すると知った時は、おいていくなんて許せないと腹が立った。
だから、僕もこっそりその高校を受験した。
一番優先すべき友達は咲磨だったけど、全部を咲磨と一緒に過ごすことはできないから(体育の選択授業とか、運動会の練習とか、文化祭の出し物とか)、ほかにも数人の友人はいた。
けど、咲磨以外の友人が僕に隠し事をしようと、進学先が違えど、何の感情も沸かなかった。
むしろ、僕が咲磨といるときは邪魔をするなとまで思った。
小学生のころ、咲磨に「どんな子が好き?」と聞いたら、
少し考えた後に「かわいい子」と言ったから
自分の中の一人称はとっくに「俺」で
咲磨のことも心の中では呼び捨てだけど
可愛い子ぶるために「僕」と言い「咲ちゃん」と呼んでいる。
僕はこの見た目を武器だと思っているが、言い寄ってくる人が多いことにうんざりもしている。
思った通りにバッサリ振れば、きっと咲磨の耳にも入り、僕は可愛い子から転落してしまう。
しかし、ちゃんと断らないと諦めてくれず、咲磨のことだからそれを知れば平気で応援してくるだろう。
僕の気も知らないで。
とにかく僕は、気持ちを知られずに(知られたら振られるか距離を置かれるだろうし)、咲磨の1番の席をキープしなくてはいけない。
だって、ほとんどの人間が僕を好きになるか、ひがんで嫌がらせをしてくるかの2択なのに、咲磨だけはずっとフラットに接してくれるんだ。
そんなところが好きなんだけど、もう少し僕を好いてくれてもいいのに。
高校に入ってから、咲磨は忙しくなって会う時間がとても減った。
そもそも、ずっと同じクラスだったから、クラスや学科が違うとこんなにも会うことが難しいのだと気づかされた。
ここは男子校だ。
きっと咲磨は女の子が好きなんだろうけど、スポーツをしているからか体つきが良いし、僕みたいなタイプの男に言い寄られてしまいそうだ。
しかも、咲磨は優しいから、そういう馬の骨をちゃんと断れないだろう。
ずっと見ていないとちょっと不安になる。
ある日の放課後、咲磨の部活が終わるのを待っていると、同じクラスの男子に「告白されてたね」と話しかけられた。
この子がうまいこと言いふらして、言い寄ってくる奴を減らせないかと考えた僕は「男同士なんて気持ち悪い」と言ってみた。
「ええ~!?」とクスクス笑った後、「わざわざここの特進科にくる子でそっちじゃない人っているんだ」と驚かれた。
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