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⑥ 聖 視点
テスト期間が始まると部活が休みになるので、僕たちは久々に朝の通学ラッシュの電車に乗った。
最初の頃、こっそりしていたように、満員に乗じて後ろから咲磨に腕を回す。
気づかれないようにこっそりするのがミソだ。
ふと、咲磨に右手を掴まれた。
「あ、ごめ…」
痴漢がばれた時ってこんな感じなのか!?と思うくらい、僕は驚き、動揺した。
「聖の手、真っ白できれいだな。あ…、ペンだこ」
そう言って僕の中指を擦る咲磨に、僕の背中はぞわぞわした。
ただでさえ、満員で密着しているのに…、拷問か?
「ちょっと…、咲ちゃん」
耐えきれずにそう漏らすと、咲磨は慌てた様子で手を放して振り向いた。
「ごめん!男に手を触られるとかキモイよな。
昨日徹夜で勉強してたから寝ぼけてたのかも」
咲磨が困った顔で謝った。
全然、ずっと触ってていいのに。
あんな反応するなんて、僕のバカ。
「そんな!咲ちゃんだったら嫌じゃないよ」
「そういうこと言うと付け入られるから気をつけろよ。
っていうか聖、背伸びた?」
先ほどまでのドキドキは一転して、僕は水を浴びせられたように全身から熱がすっと引いていくのを感じた。
確かに、咲磨との目線にそれほど差がない気がする。
よく考えてみれば、最近、膝なんかの関節が痛い。
僕…、めっちゃ背が伸びてる!?
確かに僕には海外の血が流れているし、背が伸びるのは自然の摂理だ。
だけど…、デカい=可愛くない じゃん!!
どんどん、咲磨の理想から離れていく自分に目の前が暗くなった。
「おい!聖、大丈夫か?」
かろうじて咲磨の声で膝から崩れ落ちずに済んだ。
が、心に負ったダメージはでかい。
「やっぱりさ、僕って大人になって大きくなって、可愛くなくなったら価値がなくなるのかな」
僕は俯いて咲磨の肩に顔を埋めた。
中学の頃よりもずっと筋肉がついたそこはゴツゴツしていて温かかった。
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