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第22話

「兄さんは貴方を番にできなくて、でも中々手放さなくて。奪いたかったけど、貴方はいつでも健気に兄さんに恋してた。透さんのそういう情に厚くて一途な、そんなところも好きだったんだ」 「あ……、フリージアが……」 「この香り、分かるんだね? 貴方からも同じ香りがするよ」 「僕が? 香る?」  それはいつも心の奥底では夢見ていたこと。オメガになってこの世でたった一人、自分だけを溺れるぐらいに愛し、どこにもやらないようにと見つめ続けてくれる相手と結ばれる。  おとぎ話を夢見る子どものようだと笑われたとしても、胸に芽生えたその気持ちはずっと大切に守ってきた。 「僕のことだけ、ずっと、愛してくれる?」  頷いた顔の中に幼い彼の面影を辿ろうとすれば、黒目がちな瞳がただひたすらに透を捉えて離さない。 「俺にだけ愛されて、花開いて。ずっと好きだよ。僕の番」 「君の、番?」  身体をじんっと熱くさせる香り。今までにない重苦しくも切なげな疼きが臍の奥に生まれて、あろうことか後孔がじんわりと濡れてくるのを感じた。目くるめくほどに彼に抱かれて首を噛みつかれた自分は、最早別の人間に生まれ変わったような感覚だ。 「抱き締めて、離さないで。ずっと一生、傍にいて」   再び傍らに滑り込んできた恋人は甘えたな目線で透に笑いかける。 「俺は絶対に、手放さないよ。俺の初恋は貴方で、最後の恋の相手も貴方だから」  どちらともなく重なる唇の感触に溺れながら、朝食の代わりに二人はまたお互いを貪り続けた。                                                       終  

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