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第16話❀
『柔らかな寝台で麗しい双子に挟まれ、見悶える。白い肢体を汗と熱で火照らせて、過ぎたる快楽にいやらしく腰を振った。』
#視えた__・__#映像に、俺は溜め息を飲み込んで、正面を陣取るアデルを見上げた。
――俺の異能は『先見』だ。#本当のノエル__・__#の異能はわからないが、俺の異能は確かに『先見』である。『予言』だとか『未来視』だとか言われている、デズモンド内で秘匿された異能だ。
てっきり、異能ではなく俺の原作知識だと思っていたそれが、まさかの異能だったなんて初めは信じられなかった。
俺が視た未来は決して覆ることはない。何度か視えた未来を変えてみようと行動したこともあったが、ことごとく失敗に終わった。
閣下やマリアには突然視えると伝えているが、本当は俺の意志で未来を見ることができた。これが知られたら飼い殺しにされると思い、とっさに嘘を吐いたのだ。
「できる限り、優しくします」
「貴方は僕たちに身を委ねているだけで大丈夫ですからね」
前にはアデル。後ろにはカイン。カインの胸に体を預けている俺はもう逃げられない。調理されるのを待つ魚のようだ。
肌に触れながら、中途半端に乱された服をふたりに脱がされていく。触れられるたび、手のひらから熱が移って身体が熱くなった。
「緊張していますか? 強張っていますね」
「できるだけじゃなくて、ちゃんと優しくしてくれなきゃ、イヤだ」
痛いのは嫌いだ。家庭教師 の折檻を思い出す。
不安に声が震えた。ぴたりと揃って動きを止めたふたりを見る。ゆるりと浮かんでいたはずの笑みが削ぎ落ちて、無表情に蒼い瞳を爛々と輝かせて俺を映し出していた。
獲物を狙う肉食獣のようで、ベッドサイドの小さな燭台にだけ照らされた寝室ではまるでホラーだ。もしかして、俺、命を仕留められる?
『先見』で視ているからそんなことはないとわかっているはずなのに、恐怖で体が震えてしまった。
ふたりは年下だけど、俺よりも体格がよくて武芸も嗜んでいる。貧弱で軟弱な俺は一撃で仕留められるだろう。逃げ回る鹿よりも仕留めるのは簡単に違いない。
「嗚呼、怖がらせてしまいましたね。大丈夫ですよ、私たちは貴方に危害を加えません」
「あまりにも、貴方が可愛らしいことを仰るから、理性を保つのに必死だっただんです」
大きなブルーグレーの猫が、耳としっぽを下げてすり寄ってくる。顔の良さを前面に押し出してくるのが小賢しいし、それを拒否できない俺も大概だろう。
「……そんなに、俺のことが好きなんだ」
「何度でも言います。ずっと恋焦がれていたんです」
「愛戀に身を焦がして、貴方と言葉を交わして、側に侍ることができる男たちに嫉妬していました」
嫉妬。清廉潔白で清いミラー家には似合わない言葉だった。
「今、こうして言葉を交わし、触れ合っているだろ。……俺に触れることが許されているのは、ノアと母、そして閣下だけだ。十分、お前たちは特別の枠組みに入っていると思うが」
「人は、欲深いんですよ」
「ひとつ手に入れたら、もうひとつも欲しくなるものです」
「貴方に触れたことがある人間は、どこまで触れましたか? 手? 頬? ――それとも、ここ?」
口から飛び出そうになった音を飲み込んで、目を白黒させてカインを仰ぐ。
白い肌を辿った手のひらが、平らな胸元の小さな芽を軽く押しつぶした。男でも胸で感じ入られるらしいが、生憎と俺はくすぐったさと違和感しかなかった。
「気持ちいいですか?」
「……よくわからない。少しくすぐったいのと、触られる違和感しかない」
「そうですか。それじゃあ、これから覚えていきましょう」
口元に緩やかな笑みを湛えたまま、カインは指先で芽に触れ続けた。小さくて色の薄い柔らかな芽は、押しつぶされたり、摘まれたりを繰り返しているうちにピンと起ち上がって固さを持っていた。
覚えるって、何を? と首を傾げた俺の意識を引き戻したのは、いつの間にか下穿きを脱がし、直接中心に触れたアデルだった。
いつの間にと驚く間もなく、シャツを肩に引っ掛けただけのあられもない姿になっていた俺だが、とっさに隠そうとした手はカインに絡めとられた。膝を割って、足の間に陣取ったアデルの頭を太ももで挟んでしまう。
「わぁ、いいなぁ、アデル」
「すべすべ、やわらかい」
「う、うるさっ、ぁ、ぁ、あ、」
今まで自分の手で慰めるだけだった俺には、それは強すぎる快楽だった。
まだ柔らかいそれを手で扱きながら、先っぽを口内に含まれる。熱くて、溶けてしまいそうなほど熱くて、柔らかい口の中であっと言う間に固さを持ってしまう。
裏筋を舌全体を使って舐め上げられて、手のひらで双玉を柔く揉まれる。舌先で鈴口を刺激されたらもうダメだった。
「あ、あっ、待って、待って、ダメだ! いっ、いく、イくからッ」
「いいですよ、イッても。たくさん気持ちよくなりましょうね。ほら、アデルの口の中に出しちゃいましょう」
「う、ぁ、み、耳も、やめ、うァ……!」
ふたりから同時に与えられる快楽に、頭が馬鹿になりそうだ。耳の中を舌が這って、音で犯される。
先走りがあふれて、ぐちゅぐちゅとアデルの口の端からこぼれているのが見えて――高貴で清純な彼を汚しているのだと思うと、心も身体も昂って仕方なかった。
息が上がり、胸が大きく上下する。弄られすぎた芽は真っ赤に色ついて、抓られるとピリピリ痺れた。
「ほら、イッて」
ぐちゅ、と喉奥にまで飲み込まれた瞬間、堪えられない精が沸き上がっていき、快感が弾けた。
「んン、けほっ……たくさん、出せましたね」
口内で弾けた白濁を、手のひらにどろりと垂らすアデルから目が離せない。真っ赤な舌に粘着質な白濁が絡みつき、淫靡な光景だった。
手のひらに吐き出したそれをまじまじと見つめるのをやめてほしい。一度イッて、心地よさから戻りつつあった俺の腹に、あろうことかそれをべっとりとつけてきた。
「アデル? 何をして?」
「……なんとなく? カインもきっとこうしていたよ」
「……ふぅん、そうか」
双子特有の世界で会話をするふたりに置いてけぼりだ。
「気持ち良かったですか?」
「へ、ぁ……ウン、」
「――それじゃあ、続き、しますか? どうしますか?」
ぽかんとした。
え、最後までやると俺は思っていたんだけど、違うのか。
「もちろん、最後までしたいんですが……」
「多分、途中で理性をなくしそうなんで、さすがにエインズワース家のゲストハウスでするわけにはいかないでしょう?」
「それに、ノア君もそろそろ帰ってくるんじゃないんですかね」
あ、とノアを思い出す。壁掛け時計を見れば、確かにそろそろディナーを終えて戻ってきているかもしれない。急に、ノアのことが心配になった。
でも、とふたりも見る。俺だけ乱されて、彼らが息ひとつも乱していないのは不公平じゃないか? 俺だけ痴態を晒して、恥ずかしいだろ。
「………………す、る?」
「え? すみません、小声で聞き取れなかったです」
「だ、から! ……口で、しようか?」
顔を見て言えなかった。苦渋の決断だ。だって、まさか、咥えられるなんて思っていなかったから、それに、俺だけ気持ち良くなるのも、なんだか決まりが悪い。
羞恥心で顔が熱い。返ってこない反応に、引かれただろうかとこっそり伺いみれば額に手を当てて天を仰いでいた。
「え、なにして……?」
「それ、私たち以外にしないでください」
「男は皆狼なんですからね」
血涙を飲んだ声音で諭されてしまった。
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