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変化する日常 7
「一応ノックしたんだけど」
だけど飛び跳ねるように顔を上げた僕の目に映ったのは、アズサさん本人。
ベッドの傍に本物のアズサさんがいる。
「ごめんね、邪魔して。でも、俺の名前呼んでたってそういうこと?」
「あ、あの、これは、ちがくて」
膝をついて目線を合わせるアズサさんが近すぎて、思考が上手く働かない。
どうしよう。どうしてアズサさんが。まさか、こんなところを見られるなんて。
「いいよ、続けて」
「やっ、ちが、これは」
「大丈夫、手伝ってあげる」
言い訳がなにも思いつかず固まる僕に、アズサさんはあろうことか出て行かず、それどころか真正面にやってきた。
そして抱きしめるように距離を詰めたアズサさんの手が、僕自身に触れる。
「あっ……!」
「気持ち良くなることだけ考えてて」
足の間にアズサさんがいるせいで閉じることもできず、逃げることもできず、その手が緩やかに動き出すのを受け入れることしかできない。
密着しているアズサさんだけじゃなく挟まれた後ろのベッドからもアズサさんの匂いがして、それを意識したら体温が上がった気がした。
僕とアズサさんの間で指が動き、そのたびくちゅくちゅと猥雑な音がする。温度の低い指が触れるたびどこをなぞっているかわかって、恥ずかしくて、それなのに気持ち良くて。
「んっ、や、だめ……っ」
「ダメじゃないよ。ほら、いっぱい濡れてる」
先端を指先でくすぐりその手が濡れていることを示して、アズサさんは低い囁きを耳に吹き込んできた。
「や、あっ」
そのままちゅ、ちゅ、と耳裏、首筋とアズサさんの唇が音を立てて張りつく。アズサさんが触れているところがどこもかしこも気持ち良くて、頭が爆発しそう。
「やっぱ巴の匂いたまんない」
「はっ、あ……あっ」
肩口に優しく歯を立てられ、舌でなぞられて、そのたび小刻みに体が震える。なんでこんなに気持ちいいんだ。おかしい。おかしいけど、もうなにも考えられない。
「アズサさん、キス、キスしたい……んっ」
自分でもなにを言っているのかわからないくらい混乱して、気づけば正直に気持ち良いものをねだっていた。アズサさんの体にすがってねだって、すぐに気持ちいいキスをもらって頭の中はもう真っ白。
「好きだよ、巴。だから俺の手でイって」
「……ッッ」
そんなタイミングで優しく熱っぽい囁きを耳元に吹き込んで、アズサさんが強く擦り上げてきた。
……こんな時にそんなことを言うのずるい。
正気だったらそうやって言い返せたかもしれないけど、あいにく今の僕はまともじゃなくて。声も上げられずに果てて、幾度も痙攣するように欲を吐き出した。アズサさんにしがみついたまま、その手の中に。
その上、本当はもっとこのことや今の言葉について話したかったのに、やっと解放された脱力感で一気に眠気が来てそのまま眠りに落ちてしまった。
アズサさんの声がなにか聞こえた気がしたけれど、残念ながら意識は残ってはくれなかった。
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