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効能は「運命」 11
「僕今日抑制剤飲み忘れてました。あと、持ってくるのも」
毎日朝食後に飲む薬。今日はバタバタしていてすっかり忘れていた。そしてそんなことだから肝心の薬も持って来ていない。完全に頭の中になかった。
「……どんな煽り方なのそれ」
「だから、えっと、恥ずかしいこと言っても、フェロモンのせいにしてください」
すでにもう頭がふわふわして、細かいことはどうでもいい気がしてきた。アズサさんのキスが欲しい。
なにを言ってもなにも思っても、もうすべてフェロモンのせいにしちゃえとずるいことを考える僕に、アズサさんは一つ大きな息を吐いた。
「忘れてるといえば、巴首輪するの忘れてるよ」
「え、あ……」
「アルファの男を前に、無防備すぎ」
「ひゃっ」
そこになにもないと示すように首筋を舐められる。今までなにもしていなかったのに首輪をするようになって、そこが守られる場所だと認識するようになった。だからこそ、意識させるように舌で辿られてぞくぞくした痺れが体を駆け巡った。
「んっ、なんでそこ……っ」
そのまま下がっていった舌が胸の突起に辿りつくと、口に含まれ柔らかく食まれた。最初はただくすぐったいだけだったのに、段々とむず痒いようななんとも言えない気持ちになってきた。それと同時にお腹の奥にぐるぐると重い熱が溜まっていく。
こんな小さな突起舐められたってなんでもないはずなのに、どうしてこんなに切ない気持ちになるんだ。
「舐めて」
妙な疼きに戸惑っていると、体を起こしたアズサさんが僕の前に指を差し出してきた。
意図がわからなかったけれど考えることもできず、言われたままに咥えてしゃぶる。僕を見下ろすアズサさんの顔はわかりやすい表情が浮かんでいるわけじゃない。それなのに、瞳の揺らめきで興奮しているのがわかって、たまらない気持ちになった。
たっぷりと舐めて濡れた指を、今度は僕の太ももに這わせ、そこから根元へと辿るように滑らせて。
「あっ」
少しの間解すように周りを触れた後、押し込むようにして中に入れられた。思ったよりもすんなり指が入り込み、すぐに探るように動き出す。
「んっ、ん、なんか、変な、あ、あっ」
少しの違和感はあっという間に去って、抜き差しされるアズサさんの指にもどかしい気持ち良さを覚えるようになった。ぐちゅぐちゅと掻き回されている音が体に響いて、呼吸が荒くなる。熱が、溜まっていく。
「あ、アズサさん」
「ん」
自分でも求める声だと思った。
そんな声を聞いて短く答えたアズサさんは、僕の足を抱えるように持ち上げて、そのまま硬く反り立ったアズサさん自身をゆっくりと挿入してきた。引き締まった腹筋が薄暗い明かりに照らされて、どこもかしこもかっこいい人だなと場違いに思う。
「ん、あ、ああっ」
圧迫感と違和感。空気が押し出されるように声が洩れて、アズサさんの腰が肌に当たるまでの深さに深いため息が漏れた。
おなかがいっぱい、なんてバカみたいに思う。それくらいの質量を中に感じた。
「ゃ、あっ」
大きく息をしてなんとも言えない違和感を逃そうとしていると、アズサさんが軽く腰を引いて、引きずられるように声が出る。
「あっ、ちょ、っと待って」
「痛い?」
「ちが、待って、動かないで、んっ、あ……んんっ」
中をみっちりと埋める存在は、僕を傷つけるものじゃないと知っている。だからこそ、少しの動きがびりびりした甘い痺れとなって全身を駆け巡るのは速かった。
そして止めたのが痛みのせいじゃないとわかれば、アズサさんはもう待ってくれなかった。
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