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ラブ・ファイア 6
「さて、と。それじゃあ俺ら帰るから」
「え?」
アイスを食べ終え、一通りの片付けも終えて、夜も更けてきた頃柾さんはそう言って立ち上がった。
声を上げたのは僕だけど、アズサさんも驚いたようにその様子を見ている。お酒も飲んでいたし、てっきりみんなで泊まっていくものかと思っていたのに。いや、そういえば柾さんは飲んでいなかったか。
「こいつらと違って明日も朝から仕事だし、空木も外出て疲れたろ」
「えー柾さん優しいー」
「はっ、どうせ俺は昼起きですよ。それに酒飲んじゃったからもう運転しないもんね。寝て帰ろーっと」
「わーさいてー」
滅多に外に出ない空木さんが、アズサさんの家とはいえ外で長時間過ごしたんだ。疲れもするだろう。そこに気づかなかったのは僕もまだまだ配慮が足りない。
それに気づく柾さんはかっこいい大人で、拗ねて張り合う紫苑さんはカッコ悪い大人だ。
「そういうことだから、俺たち帰るな」
荷物を持ち、あっという間に帰る用意を整えたみんなは出遅れた僕に手を振って。
「じゃ、種田くんをよろしく」
アズサさんにはそう告げて、4人はあっさりと帰っていった。ゴミを持っていくのは偉いけど、朝出せるだろうか。
いや、違う。今気にするのはそこじゃない。
「あの、アズサさん」
追いかけようとした中途半端な姿勢で僕だけ取り残された。
とても久しぶりに2人きりになり、やにわに緊張してくる。
どうしましょうと振り返ったアズサさんは、すぐ傍に立ってまっすぐと僕を見ていた。
「ちょっと我慢の限界」
「んっ」
その場で唇を奪われて、幾度も食いつくようにキスをされる。
激しいキスに腰が砕けても抱きしめられて支えられ、あっという間にくたくたになってアズサさんに体を預けた。
「う、わあっ」
するとそのまま抱えられて、問答無用でベッドに運ばれた。
まるであの写真の再現のようなお姫様抱っこに、高鳴る鼓動がうるさい。細いのにちゃんと鍛えているから意外と逞しいんだよな、アズサさん。
そのままベッドに放り込まれ、覆いかぶさるようにしてアズサさんもベッドに乗ってきた。その性急さに温泉でのことまで思い出されて頬が火照ってくる。
ちゅ、ちゅ、と可愛らしい音を立ててキスの雨が降ってきて、くすぐったさと恥ずかしさに笑った。ああ良かった、唇に潤いが戻ってる。
「みんなの前で抑えるのすごく大変だった」
「すごい伝わってます」
「思ったよりも、巴不足」
「……僕もずっとアズサさん不足です」
顔はいつも通り飄々としていたくせに、本当に我慢してたんだろうなというのが瞳のゆらめきからわかる。
ためらう間もなく服を脱がされ、アズサさんの気持ちが行動でも伝わってくる。でも寂しい思いをしていたのは僕だって同じ。
「優しくしたいけど無理かも」
「全部フェロモンのせいってことで……ダメですか?」
こんな時ばかりは厄介なフェロモンを免罪符にしてしまおう。
なにもかもフェロモンにやられたせい。しばしの逢瀬の言い訳はそれだけでいい。
「運命のせいにしよ」
「それで」
甘い言葉とえっちな瞳と深いキスと体をなぞる手にめまいがするほどの恍惚を覚えて、僕はアズサさんへと求める手を伸ばした。
運命のせいならしょうがない。
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