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第4話 続く、よくある偶然

 いつもの週明け。  有希也は午前のルーティン業務を淡々とこなして、あっという間に昼休憩の時間になった。  昼食を食べに、エレベーターに乗った。  あの男の事が頭をかすめた。  二日続けて見かけたのは、たまたまだったんだと自分に言い聞かせても、ひょっとして昨日居なかった事が、たまたまだったんじゃないかと甘い考えが頭をよぎる。  ビルの外は春先でも陽差しが強かった。  日傘で歩く人も多くなってきた。  有希也は、いつもは食事の後コンビニでコーヒーを買って外のベンチでスマホを触っているが、今日は食事は軽めに済まして早めにオフィスに戻ろうかと考えていた。  有希也のオフィスは17階にあった。  いつも昼食後の13時前には混み合うエレベーターホールは、そこまでの混み様ではなかったが、数人のいかにもビジネススーツ人がエレベーターの到着を待っていた。有希也もその人達の中にいた。  しばらくするとポーンという到着音がしてエレベーターの扉が開いた。足下に注意しながら乗り込んだ。  エレベーター内の正面壁の鏡に目をやると、有希也の真後ろにその男がいた。  鏡越しにその男と一瞬目があった。  心臓が止まりそうな感覚に襲われた。  有希也は降りる階のボタンも押せずにエレベーターの奥に追いやられてしまった。  一様に乗降人はエレベーターの扉方向に向いた。有希也はその男が扉側に向いた事を鏡で確認した後、自分も体の向きを変えた。  目の前に男の背中がある。  仕立ての良いスーツからは、ほのかにタバコ以外の香りがした。  その男は有希也が思っていたよりもう少し背が高かった。

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