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第11話 香水より制汗剤

 大学の連れとの飲み会は、久しぶりという事もあり大いに盛り上がった。  当初3人での飲み会が、蓋を開けると倍以上の7人になった。  メンバーは9人であるが、その2人は妻帯者で2人とも幼い子供がいる。  結局、独身男達が予定をなんとかやり繰りして集まることになり、有希也はこの日を楽しみにしていた。  が、逆にどの辺りで『香水』の話しを切り出すか、少し難しくなってきた。  有希也は香水の感想を聞きたいからと言って集まってくれる訳はないと思い、なにも触れずに皆んなを誘っていた。  まずはビールで乾杯し、それぞれの近況報告の後、有希也の隣に座った久瀬元が言った。 「橋本から連絡があった時、結婚の報告かと思って、一瞬焦ったわ」 「なんで、焦るんだよ」  有希也は笑った。 「久しぶりに会わないかって、おまえ、なんかあったんじゃないの? なんかいい匂いもするし。おまえ香水とか付けるタイプじゃなかっただろ?」 「俺も思った。どうした橋本」  有希也は話すタイミングを考えていた時にいきなり香水の話しになり、慌てて答えた。 「いや、まぁこれは…貰い物で」  久瀬元の言葉を皮切りにそれぞれが、おそらく同じ様な想像の元、有希也に質問してきた。 「で、その贈り主といい関係なわけなんだろ」 「どんな子なんだよ」 「写真見せろよ」 「社内の子?」  この場をどうコントロールして、香りの評価に繋げるか、有希也の頭の中はフル回転していた。 「まだ、そこまでじゃ、ないんだ」 (間違ってないよな…) 「はいはい。で、その香水つけてアプローチ中 ってことなのかよ」 (ナイスパス、久瀬元) 「香水つけるのって、慣れないんだけどさ」 「いや。いいんじゃない。おまえに合ってるよ」 「ありがとう。久瀬元は香水とかは?」 「体臭とかは気になるけどさ、おまえがつけてるような、甘めのヤツはないかな」  その後もしばらく、有希也の想像上の彼女と香水の話しが続いたが、皆んなはそもそも香水には興味もなく、無臭の制汗剤の話しに落ち着いた。  巽には、同年代の男は制汗剤の方に興味があると伝えるしかないと思った。

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