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第18話 必要のないモニター

 有希也は家に帰ると巽が言っていた下心の意味を考えた。    何か、しっくりこないような、モヤモヤした気持ちが、有希也の心に広がっている。  有希也に似合ってる香水が、街に広がってほしくないと。要するに、あの香水は有希也だけのものにしたい、有希也の香水として記憶に残したい、それが『下心』という意味だったのか。  そしてあの香水はもう作らない。  巽は生産販売を中止すると言った。  つまり、モニターはもう必要ないという事だ。  モヤモヤとしていた原因がこれだったんだと気付いた。  巽との関係は、香水のモニターの依頼主とそれを受けた者。  モニターの回答と称して会っていただけで、それ以上の関係ではない。現に海に行った後は明らかに、28階のラウンジで会うことが少なくなっている。  勇気を出して食事に誘って一緒に行けたのはまだあの時は中止が決定していなかったのかもしれない。  下心発言は全くのハプニングで、後腐れがない様に丁寧な対応をしたまで。    全て宮さんが作ったあの香水に惑わされただけの話し。  モニターで受け取った香水も、そろそろ底をつきそうだった。  タバコを吸う所作やくつろげたネクタイ姿に魅入ってしまったあの時の感情は、今はただ切なくて苦しいものになってしまった。  有希也は巽と会って楽しくて嬉しい気持ちがまだ続くものと勝手に思っていた。  せめて明日だけは15時の休憩で会えるように願った。  今日のジュリアンの礼を言いたかった。

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