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第19話 会いたいけど、会えない
有希也は15時になると、変わらずに28階のラウンジで休憩をしていた。
ただそこには、巽の姿はなかった。
窓の外の光は、晩春の眩しさに変わりつつあった。それ以外は何も変わらない。
ジュリアンで会って以来、土日を挟んでもう一週間が経つ。ジュリアンで会うことになったのも、たまたま昼間外で出会って、下心の一件があったからだ。もしその事が無ければ、一緒に行った海以降、ここでは会っていない。
有希也は、もうモニターは終わったのだからと何度も心の中で言い聞かせていた。
同じビルの中で働いているのだから、この先も巽と偶然遭うこともあるだろう。だが有希也は、お久し振りと自然に挨拶を交わす自信はなかった。
巽に会いたい、姿を見たいと思う気持ちはあっても、実際、会ったところで、上っ面の挨拶をされて終わる事を考えると、このまま出来るだけ会わないように行動する方が辛くないと思った。
来週から、休憩時間を変えるか、場所を変えるかいずれにしても頭を悩ませる事には違いなかった。
そして、週末の今日も巽は姿を現す事はなく、今週も一度も会えなかった。
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