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第25話 日焼け止め

 健留の店に行った後、有希也は前から気になっていたリネンシャツも買う事ができた。  そして、深夜の電話で、帰宅途中に健留に声をかけられ店に行き、日焼け止めを友達価格で買った事やシャツを買った事などを巽に話した。 「健留君てさ、あの時はやな奴と思ったけど、話してみると面白いし割といい奴だったよ」 (そっか。今日のあの健留君の態度はちょっとなと思ってて、有希也の事が心配だったんだけど安心したよ)  巽は健留が自分の恋人であったなどと言っていた時の有希也の不安そうな顔を気にしていた。  有希也は健留にいつから付き合っていると聞かれた事は、まだ恥ずかしくて話せなかった。  翌朝。  洗顔後の化粧水を付けて、日焼け止めを塗って、香水を付けて。有希也は自分に関わってくれる人が増えると、する事も増えるもんだと、しみじみと思った。  健留から、日焼け止めはこまめに塗る様にと言われたのを思い出し、日焼け止めのチューブをカバンに放り込んだ。  昨日買った新しいシャツに袖を通しながら、今日も巽と会えたらいいのにと思った。  早速、目ざとい田口は、有希也のデスクの日焼け止めのチューブを見つけた。   「橋本君って、乾燥肌?」 「これは、日焼け止め」 「橋本君、最近女子力高いわ」 「女子力高めの友達がうるさくてね。日焼け止めはこまめに付けないと効果が無いらしいよ」 「うわっ。耳が痛い」  田口とは香水の一件から、些細なことでもよく話すようになった。  有希也はリコメンドを思い出し、田口に塗ってみる?とチューブを渡した。 「あぁ。塗った後もサラッとしてるし、これいいわ。どこで買ったの?」  と言って、記されている日焼け止め数値を確認した。 「この近くの友達の店」 「そろそろ日焼け止め買わないとなぁって思ってたんだけど、友達の店だったらまたすぐ行くでしょう?お願い買っといてよ」 「わかったよ」  財布から代金を出そうとした田口に、友達価格で買った手前、後でいいと伝えた。  田口の美容に関する社内のネットワークは広く、昼食後には日焼け止めの購入数が3本増えていた。 「ごめん。なんか話してると皆んな欲しがって。数が増えたしお金先に払うわ」 「いいって、それくらい大丈夫だよ。それより広めてくれてありがとう。友達も喜ぶよ」  有希也は、今日また行くしかないなと考えた。  15時の休憩デートで、有希也は日焼け止めのセールスマンになった事を巽に話すと、大笑いされた。 「有希也に、うちにも来てもらって営業してもらおうかな」 「宮さんと会うからやだよ」  と有希也も笑った。  別れ際に、シャツ似合ってると巽に言われ、赤くならないように頬を両手で挟んだ。  一時間の残業後、健留の店に行った。  今日もそこそこの客が入っていた。 「あれぇ。有希也君早速来てくれたんだ」  ストレートに喜ぶ健留を見て、有希也もニッコリした。 「日焼け止め好評でね。買いに来たよ」 「うわぁ。マジ嬉しい。ちょっと待ってて」  健留は日焼け止めを取りに行った。 「健留君、4本ね」  健留は4本と言われて振り向き 「マジ?ウソだろ?有希也君ってナニモン?」 「会社の同期の女子がなんか広めたみたいでね」 「そっか。女子は美容意識高いし、これを選んでくれてお目も高い」  今のうちに追加注文しとくかと言いながら陽彦に伝えた。 「有希也君の仕事って、いつも何時頃に終わるの?」 「日によって残業する時もあるけど、定時は5時半」 「サラリーマンだもんな。9時5時勤務か」 「昭和の言い方だな」  有希也は苦笑した。  この店が忙しくなる時間帯に自分が終業する事を羨ましく思っているのだろうかと。  健留は日焼け止めを袋に入れて、会計をした。 「ハルと交替で、平日に早上がりする日があるんだけど、今度飯行かない?このビルの地下にめちゃくちゃうまい焼きそばの店があるんだ」 「うん。わかった」  連絡先を交換して、おおよその日程を決めた。  そして、レジ奥から出てこなかった陽彦にも軽く挨拶をして店を出た。  巽と一緒に食べるのも麺料理が多いなと、ふと気がついた。

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