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第38話 週末はお泊まりデート

 健留と陽彦の一件があったその週末も巽の家で過ごす事になった。  その日は、梅雨間近の曇天の一日だった。 夕方からワインを飲みながら二人は過ごしていた。 「そう言えば昨日、ウチのディレクターが言ってたけど、珍しくハル君が一人で相談に来たらしいよ」 「えっ?そうなんだ。健留君、ちゃんとハル君と向き合ってるんだね。よかった」 「それがさ。そのディレクター、神崎っていうんだけど、神崎曰くハル君は物事を論理的に考える事ができて話しが早いって言うんだよ。健留君は店への熱量は感じられるけど、男子の花園を作りたいって言ってるだけで、ハル君の方はそれを実現するためには何をどうすればいいのか考えるんだって。今はまだオープンしたてで珍しさもあるから経営は順調でも、今のうちにその先を見据えて先手を打つ事を神崎に相談しているらしいんだ」  巽はその話しを神崎から聞いた時は、職種は違えど、血は争えないと思った。 「そういえば、健留君も言ってたけど、ハル君は一見頼りなさげだけど、本当はすごく頼りになるんだって」  有希也も巽からの話しを聞いてホッとしていた。  ワインの後は、宅配で注文したピザを食べながら映画を観た。  ソファーで肩を並べて座っていると、恋人同士はこんな風に穏やかな時間を楽しんでいるんだなと有希也は思った。 「有希也。今日も泊まっていくだろ?」  巽は有希也の髪を指でいじりながら言った。 「えぇ?どうしよっかなぁ…じゃあさ、ジャンケンで勝ったら…好きにして…いいよ」  有希也は上目遣いで巽を見て、目をしばたたかせて言った。  すると巽はその様子を見て、噴き出した。 「なんだよそれ。全然可愛くないよ」 「えぇっ?似てなかった?さっきの映画でこんなシーンあったでしょ」  どうかな、と笑いながら、今度は巽が有希也の耳元で、一緒にお風呂入ろ、わと誘った。 「お風呂?」    有希也は驚いた。 「そう、さっき露天風呂に入ってるシーンあったでしょ」 「あったけど…」 「風呂の電気消すから。それに有希也の部屋着と肌着も買ったから、風呂から上がったらそれ着てよ」  有希也は自分から罠にはまっていった気がした。  しばらくすると、バスタブに湯が溜まった事を知らせる音が鳴った。  巽は先に行くよと言って、リビングを後にした。  バスルームの電気を消して、有希也を呼んだ。  有希也は折りたたみ式のドアを押して明かりのないバスルームに入った。  バスタブに浸かっている巽から、湯が出ているシャワーヘッドを渡された。シャワーを浴びるとバスタブの中へと手を引かれ、巽の胸に、もたれかけさせられた。    巽は有希也の肩口に手を回すとゆっくり話し出した。 「子供の頃さ、よく親に肩まで浸かりなさいとか百まで数えなさいとか、言われなかった?」 「あぁ、あったあった。俺もよく言われた。でさ、俺の弟が数字のロクが上手く言えなくて百どころか十までもいかなかったなぁ」  有希也は思い出してクスクス笑った。  天井の換気扇の音とバスタブの湯が揺らぐ音だけが聞こえていた。  しばらく浸かっていると巽は 「お湯、ぬるくなったね。温めようか」 「大丈夫。巽さんの胸温かいから」  巽は有希也の脇に手を入れて、体を引き上げた。 「有希也、こっちに座って」  壁とバスタブの間のスペースに座らせ、有希也の両脚を開いた。  巽は有希也の、湯で温かくなった柔らかいペニスを口に含んだ。 「あっ…待って…ちょっと巽さん…」  巽は構わず、舌を動かした。  暗いバスルームの中では、巽の舌の動きが如実に有希也に伝わった。  有希也がバスタブにずり落ちそうになると、巽は腸骨を支えて、姿勢を保たせた。  硬くなった有希也の陰茎は限界が近かった。 「巽さん…俺…もう」  巽が口から解放すると、あぁっという声とともに巽の首元に出した。  有希也は二回ほど大きく呼吸をしてから 「ごめんなさい。掛かった?」 「大丈夫だよ。ほら、直ぐに流せる」  巽が掛ける湯の音が聴こえた。  有希也は再び湯の中に入ると、巽に抱きついた。 「巽さんは、いつも突然なんだから」 「ごめん。でも、よかっただろ?」  有希也は抱きついたまま返事をしなかった。  巽が用意した、部屋着は着心地は良かったが、サイズが少し大きめだった。 「有希也って、思ってた以上に細いんだな。まぁ大きい方が脱がせ易いし」 「もう、今日は脱ぎません」  有希也は巽を残して、寝室に入った。  ベッドには大き目の枕が二つ並べられていた。 「これも一緒に買ったんだよ」  寝室に入って来た巽は、少し照れがちな優しい笑顔で言った。  有希也はベッドに寝そべると枕の感触を試した。 「うわっ。気持ちいい。最高の寝心地」  巽も横で寝ると、有希也の首の後ろ側に腕を差し入れて、体を引っ付けた。  有希也の髪は巽のいつものトリートメントの香りがした。 「ねぇ有希也、今度さ…」  巽がそう言いかけると、気持ちよさそうな寝息が聞こえた。 「えっ?…寝たの?」  巽はもう少しピロートークをしたかったが、有希也の顔を見て、まぁいいかと思った。  そして、有希也を起こさないようにそっと前髪をかき分けて、おでこに口づけした。

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