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第40話 巽の思い
夜中、巽は有希也の寝返りで目が覚めた。
有希也を起こさないようにそっとベッドから抜け出た。
冷やし損ねたワインがキッチンに置きっぱなしになっていた。
冷蔵庫にワインを入れて、ペットボトルのミネラルウォーターを出した。
有希也が何か言いかけようとしたのを、キスで邪魔をしたあの後、巽は嬉しさから、いつもより強く激しく迫った。
まさか、有希也からあんなサプライズがあると思わなかった。
図らずも口の中に出してしまったが、有希也のくしゃっとした笑顔がたまらなく可愛すぎて、有希也に今まで感じた事がないくらいの性の喜びをこの手で与えたかった。
巽はキスで舌を絡ませながら、手は股間を弄り握る摩るを繰り返した。
有希也はいつも以上の巽の愛し方に堪えきれず声を出したが、その喘ぎ声はまだ巽を満足させるものではなかった。
更に乳首を甘噛みし、陰茎を口に含むと、舌先で尿道口を掘るように摩った。
巽の舌攻めに有希也は半泣き状態だった。
最後は巽の手の中で射くと、口は半開きで果てていた。
その様子があまりに愛おしく、巽は半開きの口に舌を入れ込んだ。
巽の舌の動きに呼応するように有希也も絡ませようとしていたが、途中で止まった。
有希也は寝落ちした。
巽はペットボトル持って、またベッドに入った。
有希也のあどけない寝顔を見て、今のままでいいと強く思った。
男同士の付き合いをした事がない有希也は、この先何を思って、巽に何を求めるかはまだ不確かだ。
反面今のままでいいと思っているのに、泣き出しそうなくらいの攻めをして、満足している自分がいる。
いずれは有希也にもっと求めるようになるのか。
だが、己れの快楽のためだけに有希也を傷つけたくはなかった。
その時は愛という言葉がもたらす錯覚でしか無い。
醒めてしまうと体にも心にも傷を残すだけ。
それならば、今のままで充分だ。
唇や肌を重ねることでも十分に二人の愛は深めることはできるのだから。
ジュリアンのママが言った
『洵ちゃん、幸せそう』
巽は今のままで十分幸せなんだと思った。
朝が来るにはまだ数時間ある。
巽は有希也を起こさないよう唇で頬に触れた。
肌掛けを肩まで引き上げると、そっと抱きしめ、眠りについた。
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