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第44話 嬉しい旅行の提案
ジュリアンで4人と会ったその日のうちに、巽は有希也との旅行先を検索していた。
季節はいつの間にか、秋深くなっていた。
この時期なら、静かな海で二人でゆっくりと過ごせると思い、海沿いで一棟貸しができる所を選んだ。
翌日。
いつもの15時の休憩時間。
巽は昨日検索して候補に上げたいくつかのコテージを有希也に見せた。
「うわぁ! 巽さんありがとう。すっごい素敵なとこばっかり。やっぱり巽さんってセンスいいわ」
有希也は巽のスマホをスワイプさせながら言った。
「そんなに喜んでくれて、俺も探した甲斐があったよ。太平洋側にしたんだけど、よかったかな」
「うん。もちろん。巽さんと一緒にこんな所に行けるなんて、すっごい嬉しい。今日の残りの仕事も頑張れそう」
巽は抱きしめたい気持ちを理性で押さえ込んで有希也の手を握った。
「あっそう言えば、昨日健留君が真剣に話してんのに、巽さん笑ってたでしょう」
「わかった?」
「わかるよ。不自然に横向いて咳なんかするから」
「いや、プランクトンの死骸のあの話しは罪だね」
「そう?俺は何ともないよ。巽さんが笑ってるのバレないように、焼きそばの話しをしたんだからね」
巽は、ありがとうの代わりに握っていた手を恋人繋ぎに変えてぎゅっと力を入れた。
「じゃあ、早めに日程を決めて、申し込みをしよう。近いうちに、うち来る?」
「…今日は?」
「いいよ。18時に一階ね」
有希也は頷き、悪戯っぽく巽に口をすぼめてみせた。
巽は笑いながら有希也の髪をクシャッとして喫煙室に向かった。
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