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第49話 雪
あのコテージで過ごした日から、有希也は週末以外でも巽の家に泊まっていた。
一緒に夕飯を作ったり、ワインの飲み比べをしたり、配信の映画を観たり、お風呂に入ったり、抱き合ってキスをしたり、幸せで満たされた毎日を送っていた。
「そろそろダウンコートとか出した方がいいよね。今週末に強い寒波がくるんだって」
有希也はテレビの天気予報を見ながらキッチンにいる巽に声をかけた。
「そういえば、俺、去年買ったマフラーどうしたかな…」
「俺はいつもネックウォーマーだけど、暖かいよ、あれ」
「いや、スーツには合わないだろ」
巽は洗い物を終えて、有希也の隣に座った。
「今週末さ、お揃いのマフラー買いに行かない?」
巽のくすぐったい提案に有希也は恥ずかしそうに言った。
「お揃い?なんか照れる」
「いいだろ。恋人同士なんだから」
「じゃあさ、お互い選びっこするとか」
「ダメだ。お揃いにするんだよ」
巽は有希也のハイネックのセーターの首元をを指先で押し下げて、細い首にキスをした。
「あぁ、そこはダメ、くすぐったいよ」
「我慢しろ」
二人はしばらくの間、戯れあった。
結局、巽の言う通りお揃いのマフラーを買いに行くことにった。
その日は朝から灰色の厚い雲が垂れ込め、予想よりも早めに本格的な冬がやって来そうだった。
週末は冬のボーナスを見込んで各店舗も商戦が盛んになってきていた。
マフラーは全てが巽の希望通りとはいかず、同じブランドの同じデザインではあるが、顔映りを考慮すると、色白の有希也は淡いライトグレー、精悍な顔立ちの巽はチャコールグレーになった。
有希也は、全くのお揃いにできず残念がる巽に
「今日はフルボディのワインにしてあげるから。ね?…寒くなってきたし早く帰ろ」
巽の家に着くと、有希也は買ったマフラーを早速自分に巻いた。そして巽にもこっち向いてと言って色違いのマフラーを巻いた。
「ほら、ペアだよ。俺達」
巽は少し投げやりに有希也の頬にキスをするとワインの用意をした。
すると、有希也が急にはしゃいだような声を出した。
「見て、巽さん。雪が降ってきたよ。やっぱり今日は寒かったもんな」
有希也は窓辺に行って、風で舞い落ちていく雪を見た。
「まだ、積もるほどじゃないよね」
そう言いながら雪空を見上げた。
巽も有希也の横に来て、窓の外の雪を見た。
「なぁ、有希也…今日いいか?」
有希也は一瞬何の事かわからなくて、巽の横顔を見た。
「…俺を受け入れてくれ…よ」
「いいよ。巽さん」
有希也は巽の手を握った。
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