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第50話 その時

 巽は有希也を寝室に連れて行った。    有希也は自らセーターとジーンズを脱いでベッドに腰かけ、裸になると横になった。  巽もその横で上半身裸になると、有希也の視線に気付いた。 「どうした?寒い?」 「ううん。巽さん、やっぱりカッコいいなと思って」 「何言ってんだよ。見慣れてるだろ」  巽も全てを脱ぐと、有希也に覆い被さり、キスから始めた。  首筋、肩、腋窩、乳首と、いつもより時間をかけて、丁寧に愛撫し舐めた。  いつもなら有希也の股間のモノはいきり勃っているが、今はまだしなだれていた。    巽は有希也の陽根を手のひらにのせると、舌先で優しく刺激した。  有希也の口からあっと小さい声が漏れる。 次第に熱く硬くなると、巽は口に含み、あの時の様に泣きそうになるくらい有希也を感じさせた。  巽は有希也が射った後、ベッドのヘッドボードの棚の黒いアクリル扉を開けてローションを出した。  有希也の頭から枕を外し、それを有希也の腰の下に充てがった。 「少し、冷たいよ」  巽は指先にローションを出すと、有希也の固く閉じている蕾に塗り込んだ。  指を挿し入れようとしたが、緊張しているのか、一本の指ですら挿入を拒んでいるようだった。 「有希也。少し力抜いて」  巽は有希也の腰の下の枕の位置を変えて、もう少し楽に挿入できるようにした。  少しずつ解きほぐしていくと、一本の指は容易に出し入れができるようになった。  ローションを更に足して、指を二本にした途端、また固く閉じかけたが、無理に押し込んだ。 「あっ…痛っ」  有希也が初めて声を出した。  巽は締め付けられた二本の指を動かした。  有希也からはそれ以上の声はなかった。  静かな寝室には、有希也の荒めの息遣いと肉と粘液の擦り合った音だけが聴こえていた。  巽は腰の下の枕を外して、有希也を腹這いの体勢にして腰を持ち上げた。    有希也の広背筋がピクリとした。  巽は持ち上げた腰が逃げないように手に力をいれ、ヌルついた中心部にゆっくりと自分の硬くなった陰茎を挿し入れた。  少しずつ広がっていく有希也のそこへ、前後に突くように動かした。  巽の動きに合わせるかのように、有希也の明らかに辛そうな息が漏れる。  それでも巽は突き進んだ。  有希也の体の中に巽の先端部がようやく埋まり込んでいった。  ヘッドボードの棚のアクリル扉に、目を固く閉じて食い縛っている有希也の顔が映っていた。 「有希也、口を大きく開けて」  巽は有希也に言った。  有希也は顎を上げて、口を開けた。  それと同じタイミングで、巽は勢いよく陰茎の根本まで一気に挿し入れた。  悶える有希也の姿の上には、かつての自分はもういなかった。  有希也はメリメリと体が半分に裂けてしまいそうな熱い痛みに耐えていた。  自分の腰を持ち続けている巽の腕は、一切力を緩めるつもりはないとわかった。  今まで経験したことのない強い痛みの遥か遠くに、熱くて硬いものがあった。  永遠のように思えたその激痛はしだいに頭の芯が痺れるような感覚に変わっていった。  ウオォッ、と動物の咆吼のような声が聞こえた後、動きが止まり、しばらくの静寂。  激痛がゆっくりと引いていった。  肛門から何かが出ていく本来の感覚があった。

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