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(はる)兄との関係、ちゃんと考えなきゃ 今は、悠兄しか頼れないから、どうしようもないけど いつまでも、俺だけの為に 悠兄の時間奪って あんな事に付き合わせていられない 時々…物凄く不安になる 恐怖と不安と 嬉しさと喜びと 全部ごちゃ混ぜになって 一気に押し寄せてくる そうすると… あの人にしてもらった事をしないと 不安で不安で どうしたらいいか分からなくなる やっぱり俺は あの人に愛情なのか…安心なのか… 約3年 いつも傍に居てくれた人は 凄く嬉しそうに笑って、褒めてくれた だんだん…そうじゃなくなってったけど コンコン 「暁、ロイヤルミルクティーとおやつ」 「…ありがとう。悠兄、家事も全部してくれるんだから、休んでて」 「…暁」 「何?」 「少し…ここに居ていい?勉強の邪魔しないから」 すぐ…気付かれる 「…いいけど、じゃあ横になってて」 「うん。そうする。分かんないとこは、お兄ちゃんに聞きたまえ」 「うん。ありがとう」 俺が… 少しでも 不安な事考えると 何故だか悠兄は、すぐに気付いて こうして傍に居てくれる 何で…何も言わないのに分かるのかな? 普通に考えたら 迷惑でしかない 何も喋らない無愛想な子 金と手間がかかるだけ 普通を知らない俺は 悠兄も、父さんも母さんも あまりにも優しくて怖かった 他より優しい人は 優しい意味があると思ってたから だから ずっと何もされないまま優しくされて あの日… 父さんと母さんが居なくなった日 ああ…準備しなきゃって思った 母さんが居る時は あの人何もしなかったから 母さんが出て行くとしてたから 多分、誰かが居る時じゃダメなんだって思ってたから 「暁」 はっ… 「何?」 「ふっ…何でもない」 悠兄が淹れてくれたミルクティーを飲む 「美味しい」 「好きだね、ロイヤルミルクティー」 「…うん」 初めて飲んだ時、この世にこんな美味しい物があった事に衝撃を覚えた 他にも沢山… 今の家に来てからは、衝撃の連続だった 「宿題けっこう進んだ?」 「うん。あと数学だけ」 「暁って、頭いいよね」 「ふっ…あんな大学行ってる悠兄に言われても…」 「…だってさ、俺の家来た時のテストの点数覚えてる?1桁の点数なんて、初めて見たからさ。かなりびっくりした」 小学校も中学1年の時も… 学校は、行ったり行かなかったりで 勉強なんかついていける訳なくて でも、学校行かなくても テストが何点だろうと 何か言ってくるのは先生くらいだった 「そっか。普通1桁って見る事ないんだね」 「なかなかないよ。それが、こんな立派な高校受かるくらいまで、成長するんだから。勉強してなかっただけで、頭は良かったって事だよね」 「…ちょっと違う。勉強に興味がなかったけど、悠兄に教えて貰うのが楽しくて。テストでいい点数取ると、父さんと母さんと悠兄で褒めてくれるのが嬉しくて、勉強するのが好きになったんだ」 「だとしても、あそこまでの成長は凄いよ。学校の先生も、びっくりしてたからね」 悠兄が、楽しそうに話す 「あ、ごめん。邪魔しないからって言って、邪魔してた」 「ふふっ…大丈夫。あとちょっと頑張っちゃうね」 「うん」 悠兄…寝ちゃった 綺麗な顔 悠兄は、考えてる事も、体も、全部綺麗 いつまでも、俺のものになんてしておけない 初めは… ただの優しいおじさんだった もう、何回変わったか分からない 母さんが連れて来る男の人 記憶の中で、1番優しかった 10歳の時、家に来て 半年位すると、母さんとの喧嘩が増えて そのうち、母さんは毎日帰って来なくなって こうなったら、もうすぐ、この人は居なくなるんだ ところが、その人は居なくならなかった 母さんが、3日に1回しか帰って来なくなっても、出て行かなかった 嬉しかった 今思えば、日中居たり居なかったりだったから まともな仕事してなかったんだろうけど とにかく、毎日じゃなくても 家に帰って、お帰りを言ってくれる人が居る 一緒にご飯食べて 一緒に寝て 嬉しかった 母さんも、不思議そうにしてたけど 面倒な俺の傍に居てくれるからか 出てけとも言わなかった 「そう言えば、ほんの何回かだけ、あの人、勉強教えてくれた事あったっけ」 どう思ってたんだろう 少しは可愛いと思ってくれてたのか 最後の方は最悪でしかなかったけど もしかしたら 母さんに浮気されて でも、可哀想な俺を置いてけなくて 俺の傍に居る為の捌け口が 俺しかなかったのかもしれない 多分… 世間では凄く悪い人間という事になるのだろう けど… 俺は、そんな風に言えないだけの事をしてもらった どんな理由で、何が間違ってようと あの時、誰より俺の傍に居てくれたのは あの人なんだ 母さんにも、俺にも置いてかれたあの人は 今何処で何をしてるんだろう 「暁、ちゃんと洗濯出来るのか?偉いな」 母さんじゃなくて...俺を褒めてくれた 「俺もあんまり料理出来ないからな。またカレーでいいか?…お?手伝ってくれるのか?偉いな、暁」 おっきな手で撫でられるのが嬉しかった 「偉いな…暁。上手だぞ?じゃあ、今度は咥えてみようか」 「暁、ちょっとずつ、自分で出来るようになろうな。ここだよ。ここに指を入れるんだ」 バシッ 「嫌だと?!俺の言う事が聞けないのか?!」 「暁、今日は命令しないから、お前の好きな様にやってみてごらん?」 ガッ! 「暁…そんなんで満足出来ると思ってんのか?さっさともう1回広げろ!」 「暁…暁…」 あ… 俺、悠兄の寝顔見てるうちに寝てたんだ 「俺も寝てたんだ」 悠兄が、俺の顔に手を伸ばす 「また…怖い夢見た?」 あ… 泣いてたのか 「ん…でも、今は怖くないから大丈夫」 「ん…いつだって、俺が居るから。大丈夫」 そう言って、俺の隣で抱き締めてくれる 「悠兄…誰にも言えないけど、言いたい事があるんだ。怒んないで…聞いてくれる?」 「……うん」 「俺…母さんが連れて来た男の人に、凄く嫌な事いっぱいされたんだ」 「…っ!……うん」 「最初は…よく分かんなかったけど…痛い事とか、気持ち悪い事とか…暴力も振るわれたし」 「……うん」 ぎゅ~っと悠兄が、抱き締めてくる 「だからね。その人が、悪い人間なんだって事は、ちゃんと分かってるんだ。だけどね…俺、その人から、色んなもの貰ったんだ」 「…暁」 こんなの 誰も理解出来ない 「母さんもくれなかったもの、くれたんだ。こんなの間違ってるって、ちゃんと分かってる。俺を救ってくれた人達には感謝してる。でもね、誰にも言えないけど…俺…あの人の事、憎めないんだ。だって…だってさ。優しくしてくれたり…褒めてくれたり…頭撫でてくれたり...嬉しかった思い出…あるんだ…」 「暁……分かった。俺は、絶対その男許せないけど。暁にしかない記憶も、思いもあるから。暁の気持ちを否定する気はないよ…でもね、こんな風に思わなきゃダメっては思わないで欲しい。どんなに、いい思い出があっても、優しかった時があったとしても、許されない事をしてしまったら、憎まれて当然なんだから」 分かってる 悠兄は、優しくて、頭いいから 怒らないで聞いてくれる 「うん…ありがとう悠兄」

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