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凌久

キュッ シャー―― 「…はあっ~。どんだけ溜め込んでんだか」 ヤった後、悠悕は、死んだ様に寝るので 俺はその間にシャワーを浴びる 高3の時一緒になった悠悕は、クラスの人気者だった どっから見ても爽やかイケメン その優しさから、男女問わず好かれていた そして…俺のドストライクでもあった 中学に入る前に、自分の恋愛対象が男だと知った俺は 恋愛を諦めた 女とだって付き合えるか分かんないのに 男となんて無理だろ だってまず、男を好きな男を見付けらんないんだから そう思ってたら、中学の先輩に告白された すげぇカッコいい先輩で好きになった そして、めちゃくちゃ優しかった あの先輩とが初体験なんて かなり恵まれてる まあ… 付き合えないなら、遊ぶ人生にしようとか思ってたから 人生の運を全て 使い果たしたんじゃないだろうかと思った でも、先輩が卒業してしばらくすると、それっきりで 最初で最後の彼氏だったのかなぁ なんて思ってた 高校に入ると、ドラマとかアニメとかの影響で、普通にそういう話を聞く様になった じゃあ、俺もなんです~!と言えるかと言えば、そんな訳もなく 適当に彼女が欲しいとか言って、話を合わせてた 高2の時、仲良くなった友達が居た 2人で遊んだ時、彼女は居るのとか、ヤった事あるのかという話になった なんとなく、そういう雰囲気になって 一緒にオナった 何度かそんな事があって もしかしたら、こいつも男好きなのかなとか思った ある日、キスしようかと言ったら そんなんしたら気持ち悪いだろと言われ ほんとに遊んでるだけなんだと分かった 紛らわしい事しないで欲しい 高3になり悠悕と同じクラスになる ビジュアルが好き過ぎて 恋愛なんて求めないから1回位 どうにかしてヤらせてくんないかな そう思ってた バスケ部の水無瀬(みなせ)君 バスケ部の水無瀬先輩 しょっちゅう女に群がられてるのに 女の気配が全然なくて それがまた更に人気を上昇させてた それは、たまたまだった 休日、街中で悠悕を見かける カフェのテラス席で、俺達より年下の男と楽しそうに話していた 弟? いや… 楽しそうに話してるのは悠悕だけだった もう1人の男は、さほど笑うでもなく、よく頷いていたが、あまり話してはいなかった まるで、しょうがなく付き合ってるかの様だ 弟だとしたら、一方的に溺愛する兄の図だが… 違うとしたら…… いや、まさかな バスケ部の水無瀬君が、ただの水無瀬君になった頃 放課後、先生に呼ばれた 大学の資料 水無瀬にも持ってってくれなんていう、素敵過ぎる用事を頼んでくれた 教室から出てきたところを捕まえると、教室に戻って、資料を受け取ってくれた 「ありがと、(くすのき)。俺、さっき職員室行ったんだけどな」 今日しか、まともに話せるチャンスないかも 資料を丁寧に重ねている 「同じ志望校なんだよな。凌久でいいよ。俺、この前、水無瀬のデート現場目撃しちゃった」 重ねた資料を、驚く様子もなく鞄に入れる 「え~?それは、人違いじゃないかな」 これは、ほんとに居ない…か 居るけど、そいつじゃなかったか 「駅前近くの、カフェのテラス席で、楽しそうに話してたよ?」 一方的にだけど ん? 手止まった 「…楽しそうに…見えた?」 うわ~っ… なにその、きらっきらした笑顔 はい、彼氏~ 男だから隠してただけか 「うん。羨ましいなって思って見てた」 「…あれね、あの時一緒に居たの、俺の弟なんだ」 …は? まだ言うか もう教室誰も居ないのに 「いや…俺、男同士とか、全然大丈夫だから。ってか、俺も男好きだし。彼氏なんだろ?」 「……男…同士…彼氏…か…彼氏?!」 みるみる顔が赤くなっていく 「違うのか?」 「ちっ…違う!弟!」 弟でその反応ヤバくね? 「いや…弟ではないだろ。まだ、付き合ってないの?水無瀬の片想い?」 羨ましい奴め 「ほんとに…弟。でも…弟に見えないかもしれない。2年前に…弟になったばかりなんだ」 あ… これは、なんか 聞いちゃダメなやつだった 「ごめん…俺がしつこくしたせいで、余計な事話させた。悪い」 「…ううん。当たり前だけど、なかなか慣れなくて…ようやく最近、一緒に外食行けるようになったんだ。嫌じゃないって言ってくれたけど、ほんとは無理してるんじゃないかなって、思ってたから。楽しそうに見えてたなら…凄く嬉しい!ありがとう、凌久!」 え――――― 何この子? 可愛い過ぎじゃない? 全然弟君楽しそうに見えなかったけど もう楽しそうって事でいいよ こんな喜んじゃってるもん 「水無瀬、いい兄ちゃんなんだな?」 「っ…!」 え? 喜ぶと思って言った言葉に 物凄く、辛そうな顔を見せた 「俺は…全然してあげれる事も少ないし...それに…全然いい兄ちゃんじゃないんだ」 何か… あるんだろうけど 初めてまともに話したのに これ以上、突っ込むのもな… 「なあ、水無瀬。俺も下の名前で呼んでいい?」 「あ…うん。悠悕:(はるき)」 「悠悕、一緒の大学受験、頑張ろうな」 「お邪魔します。わぁ…結構いいとこ住んでるね」 「俺ん家、結構金持ちなのよ」 「1人暮らしなのに、綺麗にしてる」 「俺、こう見えて、結構しっかりしてんのよ」 「ふっ…そう見えてるよ」 うっ… 不意に笑うと、心の準備が… 「そっかあ?久しぶりの弟君不在の生活はどうよ?」 「……寂しい」 「長年ずっと弟居なかったのに?」 「…そうだよね…でも…ご飯食べる時も、テレビ見る時も、1日何回も暁の顔見るのが習慣化されちゃったから…」 「弟君、あきって名前なの?」 「うん…あかつきって漢字であき。あんまり…いい親じゃなかったんだろうけど…綺麗な名前だよね」 聞いても… いいのかな 「親戚の子とかなのか?」 「ううん…施設に…入ってたんだって。施設に居た時期は短かったみたいだけど…うちの親、世話好きだから、噂を聞きつけて、すぐ見に行ったみたい。母さんが…昔そういう仕事してたとか…なんか、そういうのもあるみたい」 「…へぇ。なんか、そういうとこから引き取られるのって、ちっさい子ってイメージ。中学生だったんだよな?」 「……中学生なのに、何にも喋んない子が居るって聞いたみたい」 喋んない… あっ! あれは、喋りたくないんじゃなくて… 喋れなかったのか? 「今も?まだ喋んないの?」 「ううん。だいぶ喋ってくれるようになったし、少しなら、笑ってくれるようになった」 「…なるほどね」 つまり、光源氏と紫の上状態 「でも凄いよな。俺だったら、突然3つ下の、何も喋んない弟ができるってなったら、絶対反対したな」 「ああ…俺、凌久みたいにちゃんと考えてなかったからさ。でも…確かに暁じゃなかったら、どうだったか分かんないかも…」 いや、話聞いてる限り 暁で無理ですけど 「じゃ、お互いに、いい兄と弟に巡り合えた訳だ。良かったじゃん?暁だって、悠悕が兄ちゃんで良かったって思ってるだろ」 「……それは…どうかな」 「何言ってんの。ほんとの兄弟だって、こんなに思ってくれる兄ちゃんなんて、どんだけ居るか」 「……それは…そうかもしれないけど」 「何でそんな自信ないの?暁、懐いてくれないの?」 ここまでして貰って懐かないなら、もう我が儘だろ 「…いや...そうじゃないんだけど…」 「懐いてくれてんの?良かったね」 「……~っ…凌久っ…」 「……え?…えっ?泣い…えっ?何…」 綺麗な顔からポロポロ涙が落ちる 「…っ…どうしよう…俺…っ!…取り返しのつかない事…っ…しちゃった」 「と…取り返しの…つかない事?」 「暁…安心させたくて…っ!…どう言ったら…伝わるのか…分かんなくて…キス…しちゃったんだ」 キス… ああ…ファーストキス奪っちゃった的な… 「まあ…そりゃショックかもしんないけど、家族はノーカウントだって言っとけよ。泣く程の事じゃないだろ?」 俺は泣きたいけど もっと、すげぇ事起きてんのかと思ったわ 「暁…キスすると、安心するって思っちゃって…」 「ああ…何回もしてんのか。まあ、悠悕が嫌じゃないなら、落ち着くまで付き合ってやれば?」 俺は嫌だけどね! 「…っ…どんどん…激しくっ…しないと…安心出来なくなっちゃって...」 「え…?激しくって…」 待て待て  これ、俺が聞いていいのか? 「暁…ふっ…うっ…そのうちっ…父さんと母さん…出掛けてる時だけじゃなく…お風呂…入ると…っ!…辛かった事…思い出すみたいで…」 「ちょっ…悠悕…大丈夫か?」 「…っ…なのにっ!辛くて嫌だった事が…~っ!1番…喜んでもらえる…からっ…傍に居てもらえる…安心するって…思ってて…」 それって… つまり… そっちの虐待されてたって事… 「悠悕…」 悠悕の体を寄せる 「それ…悠悕の両親も知ってるんだろ?ちゃんと相談した?」 ふるふると首を振る 「…っ…俺がっ…あんな事してるなんて…知ったら…」 「安心させる為にって言ったら、キスくらい許してくれるだろ。海外の挨拶だぞ」 「…~~~っ…凌久」 「え?」 悠悕が、俺に縋り付いてきた 「俺…暁の事…抱いてるんだ」 「…は」 は? 抱いてるんだ  抱いている 今の悠悕みたいに な、訳あるか! 「抱いてるって…暁とヤっちゃってんの?!」 「う~~っ…ごめんなさい」 いや、許さねぇよ! 男とできんなら、先に俺とシろよ! くそっ! 「なっ…何で…キスからの流れで?」 「家に来て…3ヶ月位の時、両親2人して出掛けた時があって…っ暁…一言も喋らなかった暁が…ソファーでテレビ見てた俺に…話し掛けてきた」 「ヤろうって?」 「…俺が初めて聞いたっ…暁の声っ……自分でっ…脱げばいいですか?」 「……え?」 そ…れは… ちょっと…重過ぎないか 「全然っ…意味分かんなくて…どっちでもいいとか、暖房下げるかとか…言ってたら…すいませんっ…どうしたらいいのか、教えてもらえますか?って…」 「…うん」 「俺っ…ほんとに全然気付いてやれなくて...っ!暁の…っ好きにしていいよって…言った」 「うん…そりゃ…分かんねぇわ」 「そしたら…一瞬凄く怯えた表情になって…」 「うん…?」 好きにしていいよ…からの怯える? 意味が分からん 「…っソファーから…下りた暁が…俺の足の間に入ってきて…」 「…え?」 「しっ…失礼します…触っても…いいですか?って聞いてきた」 「……え」 足の間…触る… アレを? 失礼しますって? 今初めて話し始めた子が? キャパオーバー 「俺…頭、混乱して…」 でしょうね 聞いてるだけで混乱だわ 「暁…じっと待ってるし…触るって?って聞いたら…また、怯えた顔して…焦った様に…っく…咥えていいですか?って聞いてきた」 は…? 「俺…もう頭パニックで…何言ってんの?!って怒鳴っちゃったんだ」 「正解だろ」 「でも…暁…物凄く驚いて…すいません、すいませんでしたって謝って...」 「ようやく目を覚ましたか?」 「あんまり怯えるから、怒った訳じゃないって言おうとしたら…暁…自分のパジャマの下と下着…脱ぎだして...」 「はあ?」 すいませんは、何処行った? 「もう、ほんとに俺…頭真っ白みたいになって…何にも理解出来なくて、何したらいいのかも、分かんなくなっちゃって」 「それで、襲ってしまったと。まあ、そこまでされたらな。ムラムラしても、おかしくないんじゃない?」 全然許せないけどな! ってか、よく男とできたな あ…暁が知ってんのか ん? 悠悕が、俺の服をぎゅっと掴んできた ムラムラしちゃうよ? 「暁…っ!」 「悠悕?」 俺にしがみ付くと 「暁…俺の目の前で…っ…自分の後ろに指入れて…」 「はっ?」 「その時俺…男同士のとか全然知らなかったから、ただただ暁が…俺の分からない事をして...苦しんでる様にしか見えなくて…」 いや…いやいや 男同士のを知らない悠悕が見たら フリーズ通り越して吐くか、気絶だろ 「何かもう…分かんないし…怖いし…暁に…何してんの?って聞いたら、すいません。もうすぐ大丈夫ですって言われて…何が大丈夫なのかも…何も…分かんなくて…」 「うん…そうだよな?」 悠悕の背中を擦る そりゃ…怖いわ 「暁っ…ソファー上がって…四つん這いで…後ろ向きになって…っ…」 「うん...」 「もう俺…限界過ぎて…何してんの!って、怒鳴っちゃったんだ」 「うん…」 「そしたら…暁っ…驚いて振り返って…何度も謝って…お願いします…っ…どうすればいいのかっ…教えて下さいって…」 「うん…」 「~~っ…何でもします…何でもしますって…うっ…顔の前っ…ふっ…うっ…両腕でっ…ガードしてっ…震えてた…」 「悠悕…分かった。もういい。分かった」 頭を撫で、背中を擦る 3つ下 13歳で、自分で準備して… 恥ずかしいとかも…分からないんだ それより...相手を喜ばせないと… 自分が生きていけないと思ってたんだ 生きてく為に…必死だったんだ 気に入られる様にしないと… 何をされたのかは知らないけど… だから悠悕の言動1つ1つにびくついてたんだ こんなに、そういう事に対して可哀想に思って泣いてんのに どういう経緯かは知らないけど 自分が理由は違っても いくら優しくしても 暁とそういう事してんなら そりゃ…… こいつ…大丈夫か? 暁を救ってるうちに、自分が死ぬんじゃないか? 「悠悕…辛かったら逃げてもいいんだぞ?暁が可哀想なのも、お前が大切に思ってるのも分かったけど…お前も大事。お前だけ、どうでもいい訳じゃない」 「…うっ…ん...ありがとっ…けどっ…やっぱり…暁の事っ…好きだからっ…どうにかしたいっ…何かっ…いい方法ないっ…かなっ…」 好き、ねぇ どういう意味で好きなんだか 悠悕は、優しさだけでも、なんかいけそうな気はするが 暁は、そんな過去があって… また家族とシたいとか 思うもんなのかね… 「ま、どっちにしても、来年は離れるだろうし、そん時また考えれば?」 「…っく…離れないっ…一緒にっ…住む」 は? 「いや…だって、俺達大学…」 「暁っ…頑張って…俺の大学っ…結構近いっ…高校…受験するっ…から」 ………はい、アウト~ 暁は、絶対そういう意味で悠悕の事好きだろ! いや… どういう経緯で、そうなったのか そんなの知らんけど そこまでして離れる気ないって… まあ…そういう奴の事…よく知らないけど… 結局、その後も ちょいちょい、そういう話を聞く様になり 俺はもう、完全に暁はクロだと思っている が、未だに目の前で寝ているこいつは 気付いていない 自分の気持ちにも そして俺は…それを利用している

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