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とにかく退散

間宮で、ちょうど1番前の席になって最悪 と思ってたら 後ろの席に、水無瀬 暁という可愛い奴が座った 勿論、男子校なので男だ ちょっと華奢で、大人しい水無瀬 中学で、苛められたりしなかったかな と心配になる位 細くて小さくて 人が苦手そうだった 幸い、うちの高校なのか、クラスなのかは分からないが そういう理由で苛める様な奴は居なくて 変に関わる訳でもなければ、たまに声を掛けたり なんとなく...皆で見守ってる感じがした 昼休みも、何か考え事してそうな時は、そっとしておく そうじゃない時は、誰かが声を掛ける 話し合った訳でもないのに 水無瀬を中心に、何て言うか 団結力みたいのが出来上がっていった その中でも、俺は1番関わっていた だって、席が水無瀬の前だから 俺が後ろ向けば話せるから プリント後ろに回す度声掛けれるから 水無瀬の後ろの奴も居るけど 水無瀬が用事もなく、振り向く事はない 俺は、ちょっと優越感を感じてた ある日の授業中 クイクイっと、後ろから制服を引っ張られた 水無瀬がそんな事する訳ないので どういう事かと振り返ると 水無瀬だった 目を疑ったが 水無瀬は、凄く不安そうな顔をしてて 隣の席の奴を見た 何かと思って見ると そいつは、腹を押さえてて よく見ると汗までかいていた 俺は、すぐに先生に言って保健室に連れてった ま、途中でトイレ行ったら だいぶ回復したみたいだけど もう少しで授業終わると我慢してるうちに 痛みが増してったそうだ 俺が教室に戻って席に着き 心配してるかなと後ろを振り返ると 「ありがとう」 と、とんでもなく可愛い顔で言ってきた 俺は、ハートを撃ち抜かれた そして、凄く優しいんだなって知った 俺の兄ちゃんには、彼女が居る時と、彼氏が居る時があって その影響か あまり、男なのにとか悩まなかった それから、よく目で追う様になる クラスの奴らと一緒に居ても 話をすると言うより 不思議そうな顔で見ているといった感じだ 俺と居る時もそうだが 授業中は普通に答えてるのに 授業以外で話そうとすると 極端に語彙力が低下すると言うか… 友達との会話に慣れてないと言うか… ある日… 次は、移動教室なのに、教材を机に出したまま動かない 皆、気にして見るので、頷いて合図する 何か…考え事? 少し待ってみたが、俺達以外居なくなっても動かないので、声を掛けてみようとすると 「…どうしたらいいんだろう」 え? やっぱり何か考え事… 「とりあえず、移動教室だから行こう?」 俺がそう言うと はっとした様に気付き周りを見回す 「ごめん、間宮。もう皆居なくなってたんだね?」 全然気付いてなかったんだ そこまで深刻な悩み事? 「何か考え事?」 「うん…ちょっとね…」 「俺で相談乗れる事?」 まあ…そんなの喋る訳ないか …と思ってたら、移動教室へ向かう途中話し出した 「…いつもとは別のシャンプーか、ボディソープの匂いがして、それがいつも同じ匂いなら、その人は恋人が居るって事だよね?」 一瞬… 時が止まった シャンプー…ボディソープ…恋人… ちょっと…予想外過ぎるワードの連発で… 「……え?あ...そう…かもね?」 「……やっぱり…そうだよね…?」 あ… …悲しそう?困ってる? え?待って… 彼女が居て落ち込むって… 「え?あ...あれ?水無瀬…その人の事…好き…なの?」 「うん……」 えっ?! 深刻な悩みって…片想いって事? で…その相手は 男って事? ちょっと…頭がついてかない 思わず立ち止まる 「…間宮?」 「あ...ごめん。俺…そうだとは思わなくて、無神経に言った…分かんない。彼女が居なくたって、バイト先がシャワー付いてるとか…お気に入りの銭湯があるとか…時々姉ちゃんの使っちゃったとか…色々他の理由…あるかもしんないからっ…!」 ヤバいヤバい 普通に彼女居るんじゃない? みたいに言っちゃった 「うん…?」 うん... 全然安心してない ってか、ほんとにほんとは彼女居るのかもしんないし 「水無瀬…あのさ、水無瀬の都合のいい時でいいから、今度一緒に遊ばない?」 「……え?」 目を、いつもよりも少し大きくした これは… 「あっ...乗り気じゃなかったら、全然無理しなくて大丈夫なんだけど…」 マズイ 水無瀬が固まってしまった 「……あっ...ごめん。まだそんな仲良くなってないもんな?行こ。チャイム鳴っちゃう」 「……うん」 そう言って、さっさと次の教室に歩いてった なんか…言いたそうだったけど 水無瀬が好きな男は…どんな人? こんなに友達と話すのも慣れてないのに どこで知り合ったの? シャンプーとかボディソープとか… 匂い嗅げる位近くに居るの? 放課後になってしまった 何度か水無瀬に声掛けようとしたけど やっぱり考え事してて 全然声掛けれる感じじゃないし… あんまり深く関わりたくないかな… 「じゃあな、水無瀬。またあし…た……」 え? なんか… 顔…赤くて… 目…潤んでて… 可愛い… じゃなくて!! 「間宮?」 「水無瀬…熱あるんじゃない?」 「熱?…ああ…それで頭痛いのか」 「頭痛いのに、熱あるの気付かなかったのか?」 「頭痛いのに、さっき気付いたから。でも原因が分かって良かった。気付いてくれてありがとう、間宮」 いや… 原因分かったって、具合悪いの良くなんないだろ 何が良かったんだ 「……良かったって…水無瀬…具合悪いんだろ?」 「?…頭痛いだけだよ?」 どう見ても具合悪そうなのに... 熱で頭おかしくなってる? 「……ほ…保健室行こ」 「え?…もう帰るからいいよ」 帰れるのかも危ういよ 「だめだよ!帰る途中で倒れたらどうすんだよ!」 なんで… 他の人の事は、ちゃんと心配できてたのに 「……心配してくれてありがとう間宮。でも、熱くらい平気だよ。帰って解熱剤飲んで寝れば、すぐ良くなるから大丈夫」 「じゃ…じゃあ…俺、水無瀬ん家まで送ってく」 絶対絶対嫌だろうけど… 家まで辿り着けるか、心配過ぎて眠れない 「……え?」 「中に入ったりしないから...ちゃんと水無瀬が家に着いたら帰るから」 それに… そんな、可愛い顔で1人で歩くなんて 危険過ぎる 「あ...ありがとう。でも…ほんと大丈夫。家に帰って寝てれば、兄ちゃん帰って来るから」 「そっか…でも、帰るまでが心配だからさ。結構顔赤いし、熱高そうだよ?」 何気なく額を触ると ビクッ!! 「えっ?」 予想の、はるか上を行く反応 これは…物凄く警戒されてる 「あ...ほんと…大丈夫だから…ありがとう、間宮。また明日」 声も…体も震えてる 「……うん」 どうしよう… 怯えさせた… 近づかない方がいい それは分かってるけど… 心配なものは仕方ない こっそりと後をつける なんか…凄い罪悪感が… でも、思ってたよりしっかりと歩いてて 少し安心 …と、思ってたら 階段を上る足取りが重そう 大丈夫かな… 落ちないでよね 階段を上りきると、壁伝いに掴まりながら歩く 俺が階段上っても…全然気付かない ドアに、もたれかかりながら鍵を取り出し ドアを開けた途端、水無瀬の体が崩れ始めた 急いで駆け寄って体を支える 「…はぁ…はぁっ…」 体…熱い… 苦しそう 「ごめん…中…入るね」 なんとか玄関に引きずりながら入れて座らせる 靴を脱がせて 「うぃっ…しょ!」 水無瀬を担いで中に入る 部屋…分かんないし… リビングに行くとソファーがあったので、そこに下ろす 「はぁっ…はぁっ…」 ……ごくっ この状況で生唾を飲み込む俺… 今すぐ死んでくれ 「水無瀬、とりあえず上着脱がせるからな?」 右の袖を脱がせて…背中を… トサッ え? 背中側の制服を脱がしてると 水無瀬が俺に抱き付いて… きた訳ではなく 倒れてきた そのまま左の袖も脱がせて 脱がせて… 俺…水無瀬の服脱がせてるんだ...… って! 何しに来たんだよ?!俺! 「水無瀬…横にするよ?」 クッションを頭の辺りに置いて、ゆっくりと倒す 「…はぁっ…んっ…?…はっ…はぁっ…」 お願いだ… 可愛い声を出さないでくれ 「ネ…ネクタイ…外しちゃうな」 ネクタイを外して、シャツのボタンを外す 1個…2個…… 首から胸元にかけて… 水無瀬の汗ばんだ肌が見える こんなに肌の白い男居る? って位白い 「あと…ベルト外しとくね」 カチャカチャ 静かな部屋に… 妙に響いて… 堪えろ…俺 下を見るんじゃない 「ふぅ...よし、これで少しは楽かな」 そう言って顔を見ると うっすらと目が開く ヤバっ! 勝手に家に入ったってバレた! どうする?! 「……ごめん…間宮…」 え? 謝られた 「……優しい人は…怖いんだ...」 ……どういう…意味? 寝惚けてんのかな? 「…...ほんとは…嬉しかった…」 !! こ…この顔は… ヤバい ヤバいヤバいヤバい 退散だ 薬…は、分かんないから 何か冷やす物! 冷凍庫を開けるけど…見当たらない 冷蔵庫!おでこに貼るやつ発見! そっとおでこに貼ると 少しは気持ち良さそう ほっ… 「…はるにぃ…お帰り…」 はるにい? 兄ちゃんか? こんな具合悪くても...言ってくれるんだ いいな… あ… 全体像を直視してしまった 頬を赤く染めて... 苦しそうな息… 首筋も胸元も、汗が光ってて… 少し苦しそうな顔が堪らなく… ~~~~~っ!! 「…くっ!」 やめてくれ 好きな人が目の前で苦しんでるのに欲情とか ほんと…マジでないから 「…ふぅ~…すぅ~…ふぅ~…」 落ち着け 水無瀬は熱で苦しんでるんだ 「すぅ~…ふぅ~…」 水無瀬は、おでこ触られるだけで怖いんだ 落ち着け 「…ん…んっ…」 水無瀬が寝返りを打とうとしている 「横…向きたいのか?」 「…んっ…はっ...はぁっ…んんっ…」 その…声… 無理無理無理無理 水無瀬を横向きにしてあげる 「…はぁっ…はっ…はっ…」 「…………」 髪…目にかかってる 髪を避けてあげる 顔…近っ… 「…はっ...はぁ……ふぅ~………」 あ…寝た 寝顔も…可愛い 起きてる時の 見えないバリアがない こんなに近づいても怯えない 可愛いのに... 少しだけ開いた唇が妙に色っぽい そっと触れてみる 柔らかい その唇に…そっと自分の唇を乗せる 「んっ…ん?…んんっ…」 ゾクゾクッ っ!! 「んはっ…はぁっ…はぁっ…」 急いで水無瀬から離れる だ…だめだ ここに居たら… 「…はぁっ…はるにぃ...ありがと」 …え? な…何?夢? たまたま…タイミング合っただけ? とにかく… とにかくとにかく退散だ!

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