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心得
悠稀と付き合うにあたり
俺は、自分の中で、幾つかの心得を作った
心得その一 期待すんな
これは1番大事
だって…そもそも、なんかちょっと勘違いして、付き合ってる様なもんだから
俺みたいに、本当に本当に悠稀の事が好きなのとは違うから
もしも、俺がして欲しい事しなかったり
して欲しくない事したり
その他諸々あったって当たり前だ
心得その二 悠稀の嫌がる事はするな(エッチの時は、時と場合による 見極めよ)
だって、あの水無瀬君だぞ?
俺が、勘違いだよ~~!!
って教えて別れた途端、選びたい放題ですわ
いっつも合コン断わるから、俺にまで、悠稀連れて来いとか言ってくる奴居るし
つまり、誰もが羨む可愛い子とか、綺麗な人とか、格好いい…いや、悠稀の好みなんて知らんけど
そういう子達と、本来過ごしてるかもしんない時間を
この、おっぱいもなければ、余計な物が付いてて、あり得ない場所に悠稀のものを挿れるなんて、とんでもない生き物と過ごさせてしまってる訳で…
それはもう…
どんなにシたくたって、嫌そうならシませんし
どんなに離したくなくたって、困る事はしませんよ
心得その三 怒んな許せ
だってあいつ
とんでもなく重い物背負っちゃてるからさ
それなのに、付き合ってる相手が男の俺
不憫過ぎるだろ
そりゃ、ストレス溜まるわ、イライラするわ、八つ当たりだってするわ
って、なったって不思議じゃない
それで?
もしも、そうなったとして
何すんだよ?!って怒って喧嘩する?
明日終わるかもしんない奇跡みたいな時間を自分から?
ないないない
どんなに叩かれたって、暴言吐かれたって…
俺の罪に比べたら、無罪放免でしょ
だってさ、見てよ
俺に全部見せて
俺に跨がれてんだよ?
あり得ないとこに、アレを挿れさせられて
なのに、気持ち良さそうにしてくれるとか
もう…毎回こんなご褒美貰ったら
何だって許すよ
今はこれ全部俺のもの
暁…は……
もう初めから諦めてるから
だって、それ知ってて付き合ったんだもん
文句なんて言わない
俺とシてる時は
どんなに気持ち良くなっても
ちゃんと俺の名前呼んでくれる
それで充分
皆に言いたい
この格好いい男、俺の彼氏なんです~
すっごく優しくて優しくて優しいんです
どんなに、どんな女の子来たって
この子、俺の彼氏ですから~~!!
って叫びたい
「…んっ…ふふっ…はっ…」
「凌久?…笑ってるの?」
自分の馬鹿げた妄想に、思わず笑いが込み上げてしまった
1度腰を下ろして、繋がったまま、悠稀にキスをする
「んんっ…んっ…はぁっ…」
「キス…好きだね?」
「うっ……うん…」
顔、真っ赤…
可愛い
チュッ
そのまま悠稀に抱き付くと、悠稀も俺を抱き締めてきた
「ねぇ…何で…笑ってたの?」
「…内緒」
言えるか
「……誰かの事…考えてたの?」
え?
少し体を起こすと、不安そうな顔...!
「ち…違う!ごめん。悠稀の事…考えて……たけど……」
「…けど?」
「かなり、馬鹿げた妄想しちゃって、自分で馬鹿だなって思って笑ったんだ。悠稀の事以外考えてない。ずっと悠稀の事だけ。ごめん。不安にさせる様な事言った」
「…ふっ...凌久…必死過ぎ。そんな…俺怒ってた?」
「怒ってない。不安そうだった。ごめん」
そう言ってもう1度体をくっ付けて抱き締める
「凌久は…俺を甘やかし過ぎだよ」
そう言って、俺の背中をよしよしとでもするように触る
「そんな事ないよ。俺は悠稀限定だけど、悠稀なんか、男女問わず、人類皆に優しいじゃん」
「え~?何その壮大な話。でもまあ…俺の両親がそんな感じの人達だからな」
「ああ…そっか」
何も喋んない中1男子を、噂を聞いて引き取りに行ったんだった
その血か…納得
あ...でも
「悠稀さ…高校から思ってたんだけど、何となく女子から距離置いてる?」
「……え?なんか…そんな風に見える事…俺してた?」
「いや?皆優しくしてもらって嬉しそうだよ?けど、なんか…ここから先は…みたいのがあるのかなぁって…男子には普通だけどね?」
「……やっぱ、分かるもんなんだなぁ」
「いや、分かんねぇよ。俺は、お前の事好きで、ずっと見てたから気付いたけど…一緒に居る時間も長かったし。けど、他の人は気付かねぇよ」
男が恋愛対象だった訳ないし
あ...逆か
モテ過ぎて、これ以上告白されたくない的な?
「女の子と…付き合うの怖くなっちゃって...」
「え?」
「あんまり…距離近付き過ぎないようにしてた」
「怖いって…なんか怖い事されたの?!」
女なのに?
どんな女だよ?
「違う違う。俺…中学卒業間近に告白された子と、高校入ってからも付き合ってた」
「え?何?この状況でモテ自慢とか?」
凌久君泣いちゃうよ?
「違う。別の高校だったし、あんまり会えないけど、連絡取り合って、少しの時間でも会って...」
「違わなくない?俺、この体勢で、それ聞かなきゃなんないんすか?」
ほんとに泣くぞ!
「でも俺…暁が来て、あの衝撃的な事があってから…頭の中、暁の事でいっぱいになっちゃって...あんまり会わなくなって…徐々に連絡も……」
「ま、遠距離なんて、そんなもんっしょ」
「…でもね、その子。クラスの中でも、大人しいグループに居た子で、全然…そんな告白とか想像出来ないって言うか…」
「ああ…ね…」
分かるけど…
この話、いつまで続くの?
「たまたま放課後、俺が1人で歩いてる時、声掛けてきて…卒業式はきっと自分は声掛けれないと思うからって…」
「うん…」
ねぇ…
元カノが、どんだけ悠稀の事好きだったかって話だよね?
「話した記憶もないくらいだったんだけど、足も手も震えてて…声も震えてて…言ってる事も…上手くまとまってなくて...声…掠れてて…」
「うん…」
そんで、どんだけ悠稀が
今でもその子との思い出大切にしてるかって話
…だよね?
ヤバっ…
「そんだけ思ってくれてるんだから、付き合ってみようと思って付き合ったんだ。なのに…結局俺の都合で、酷い結果になった。あんなに震えながら伝えてくれた気持ち…大切に出来なかった。だから…暁の事、頭から離れない間は、誰とも付き合わないって決めたんだ」
「ああ…そういう事」
声…震えてない?
大丈夫…大丈夫…
期待すんな
怒んな
許せ
「だから、ほんとは凌久が、どれだけ我慢してくれてるかって思うと…凌久?」
ヤバっ
悠稀がこっち向く
ヤバいヤバい
顔ブンブンさせて、両腕使って、高速で涙拭いてると
ゴロンと
横向きにされた
から…両腕で顔隠したけど
「り…凌久!!何…なんで…何…え?なんで?!」
間に合ってませんね
悠稀の語彙力低下
でも…ちょっと
ごめん
今、なんか言葉出したら
号泣しそうなんで...
「ってか…ちょっと1回抜くね?」
「んあっ...はぁっ…くっ…あっ!」
ちょっと…それ…抜いていいヤツじゃなくね?
腕の隙間から見える、悠稀のソレは、全然萎えてなくて...
よく、抜くって言えたな?
俺が…泣いちゃったからか
「…ごめっ…」
「え?何?なんで凌久が謝るの?」
なんか…色々です
自分で話聞いといて
思わぬ話に撃沈してるとか
めんどくさいし
そんなんで、せっかく気持ち良くしてたのに
途中で止めさせるとか
これ…心得その二
守れてない
「…ははっ…ごめん。なんか…女子避けてんのに、俺と付き合ってくれてるとか、すげぇ幸せだなぁ…とか…」
頑張れ…俺…
「思ってたら…つい涙が……ははっ...続きしよ?」
偉いぞ…俺…
「だめです」
そう言って、ぎゅ~っと抱き締めてきた
今…そういうのヤメテ
ほんとにギリギリで頑張ってんだわ俺…
「ダメってなんだよ?そんなになってて、どうすんの?」
「どんなになってても、凌久がそんな顔で泣いてたらだめ」
何それ…
そんなにして貰える人間じゃないんだわ俺
「だから、幸せ過ぎて泣いてんの!続き!」
「だめ…なんか…俺のせいだよね?ごめん。ごめんね?凌久…」
ほらな、最悪
悠稀に謝らせてどうすんの
悠稀に我慢させて…
嫌な事しかさせてない
「…っ…ごめっ…悠稀っ...ごめんっ…」
「凌久…ごめん。ごめんね?」
俺は、なかなか泣き止めなくて
そのくせ、理由も言わないもんだから
悠稀は困った様に、謝りながら
頭や背中撫でて
髪、目、鼻、頬、口、色んなとこにキスしてくれた
あんなんなってて、辛いはずなのに
俺を優先してくれんのかと思うと
益々涙が出てきて
ほんと…最悪なんだけど…嬉しくて…
馬鹿みたいに泣いた俺は
そのまま寝てしまったらしい
起きると、悠稀は居なくて...
なんとなく…終わりが見えた気がした
自分の体を見る
俺が泣き疲れて眠るまで傍に居て
俺の体…拭いて…
シャワー浴びて
自分で出したんだろな
「どんだけ優しいんだよ…」
ベッドから起きると
テーブルの上にメモ用紙
暗くて見えない
スマホ…スマホ…
暁が帰って来る前に家に帰るね
こんな時すら一緒に居れなくてごめんね
シャワー浴びさせてもらいました
目…腫れると思うから冷やしてね
後で連絡します
.-・ 悠稀
何だろう?
最後の行…何かまだ書こうとしたのか?
っつ~か、今何時?
暗いけど、俺、どんだけ寝たの?
げっ!
18:03て…夜やん
どんだけ爆睡かましてんの?俺…
あ...
悠稀から
16:30
『凌久、起きれた?』
『沢山泣かせてごめんね?』
『ちゃんと目、冷やしてね?』
17:02
『凌久、怒ってる?』
『明日、学校で会えるよね?』
17:11
『凌久』
『俺の事、嫌いになった?』
17:34
『俺は、凌久の事好き』
『ほんとはメモに書きたかった』
『愛してる』
「…っ...っく…ひっく…くそっ!…何なの?こいつ…っく…」
テーブルに向かって、ペンをクルクル回しながら片肘テーブルに付いて顎乗せて
時々ため息とか吐きながら
書こうと紙にペン先を置いてはやめて...
また、ため息吐いて
困った顔の…
可愛い悠稀が容易に想像出来る
「うっ…どんだけだよっ…!俺の心得っ...いっぱいあんだぞ?…っく…守れなくなるだろが!」
目冷やせって
また泣いちゃうだろが!
どうすりゃいいの?
愛してるなんて普通使わないよ?
こんなの特別だよ?
俺…その特別なの
返していいの?
いや、ちょっと待て
1回冷静になろう
まず俺、真っ裸
カーテン
電気
シャワー
シャワー浴びたら
なんかスッキリしたせいで、答えが決まった
なんて訳あるか!
だったら何回だってシャワー浴びるわ!
全然頭回らない
どうしたらいい?
既読ついたの
見てるかもしれない
じゃあ、何も返答しないの
失礼だろ
何時?
19:20
いやいや
そもそも、俺の事ずっと心配してる訳だから
とりあえず、その答えだけでも返さないと
えっと…
『爆睡して、さっき起きた!』
『シャワー浴びたから、目冷やす!』
ふぅ...
とりあえず、これで
え?
既読早っ!
ずっと…待ってた?
えっと…
『怒ってない!』
『明日、ちゃんと学校行く』
『目、腫れてっかもしんないけど』
そうだよな
あんなの送ったら
そりゃ
どんな返信来るか
不安だよな
既読にはなるけど
全然悠稀から返信来ないな
で?
えっと…
『嫌いになってない!』
で、次が?
あ...
どうしよう
どうしよう!
まだ考えてる途中だったのに
ここだけ送んなかったら、おかしいだろ
あからさま過ぎるだろ
それを…
多分1番待ってるんだろうから
『俺も好きだよ』
どうする?
送るのか?
送っていいのか?
だって…
悠稀の泣き顔…
想像出来るもん
送るしかねぇだろ
いいのか?
俺がこれ伝えちゃって
いいのか?
送ったら…
勘違いだって気付いた時の傷
エグい事になるぞ?
いいのか?
でも…
『俺も愛してる』
悠稀が泣くくらいなら
その時俺が泣く方がいいや
その後も悠稀からの返信はなくて
でも、とりあえず既読になったし
悠稀が泣いてなきゃいいや
ってか
なんか返信されても恥ずいわ
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