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こういうのは?
「…ごめん。間宮が好きになってくれるのは嬉しいけど、そういうの、よく分からない」
「…だよな?何て説明すればいいかな?他の友達も好きだけど、俺は、水無瀬を見ると、ドキドキする」
「ドキドキ…」
「うん。他の人だと、何とも思わない事もドキドキする」
「俺も好きだとドキドキするの?」
ドキドキが…
分からない
「きっとするよ」
「どんな時?」
「えっと…例えば…手、触っていい?」
「うん」
間宮が、俺の左手に右手を重ねてくる
「こういうの…気持ち悪くない?」
「?…気持ち悪くないよ?」
「俺は…これでもドキドキしてる」
ドキドキ…
やっぱり分からない
間宮が、ゆっくりとその手を動かして
俺の指と指の間に、間宮の指を入れてくる
「こういうのは?気持ち悪くない?俺は、凄くドキドキしてる」
「うん...?気持ち悪くない」
何だろう…
多分ドキドキじゃないけど
なんか…
不思議な感じ
「じゃあ…」
組んだままの手を、ゆっくりと持ち上げると
ゆっくりと目を伏せて、俺の手の甲にキスをした
それは…なんか、凄く綺麗な光景だった
「こういうのも、気持ち悪くない?」
「気持ち…悪くないよ…」
何だろう…
なんか…安心に近い感じ
「じゃあ…これは?」
ゆっくりと手を離すと
まるでスローモーションかの様に
ゆっくり…優しく…抱き締めてきた
「これも...気持ち悪くない?」
間宮の…匂いがする
不思議…
悠兄に抱き付いてる時みたいな安心感
間宮を抱き締める
「うん...安心する」
「俺はね…凄くドキドキしてる」
「ドキドキ…」
「うん...凄く…ドキドキする…」
そう言って間宮は、抱き締めてる力を少しだけ強めた
「水無瀬…嫌じゃないの?」
「うん...」
「気持ち悪くないの?」
「うん」
「ははっ…水無瀬に恋を教えるの…難し」
「…ごめん」
「水無瀬は、優しいからな。他の誰かでも、同じ事言いそう…」
優しい?
「俺…優しくないよ?」
「何で…そう思うの?」
「何でって…だって...自分が優しいなんて思った事ない」
「じゃあ、今度からは俺が教えるね」
「え?」
「今も優しい。水無瀬は、俺と同じ意味の好きじゃない。でも、こうやって俺に付き合ってくれてる。勝手に家に上がって、キスまでしたのに、怒らない。水無瀬は、優しいんじゃなくて、優し過ぎる」
なんか…
何だろう…
ただ抱き締められてるだけで...
全然繋がってる部分なんてないのに…
なんか…
何?
間宮の気持ちが
凄い伝わってきて...
「…なんか…間宮…」
「あ…ごめん、気持ち悪くなってきた?」
間宮が離れようとする
「そうじゃなくて…不思議な感覚」
「不思議な感覚?」
「なんか…間宮の気持ちが、凄く伝わってくる…だから…何か…間宮の凄く優しい気持ちが、俺の中でいっぱい広がってくるって言うか…」
何て言ったらいいの?
「何か…嬉しい?とか…そういうのでいっぱいになる…みたいな感じ」
「…………」
「ごめん…上手く説明出来ない」
「~っ!…っそれっ…幸せな気持ちって…言うんだよ?」
「幸せな…気持ち…」
凄く…
不思議な感覚
「水無瀬…水無瀬にいっぱい幸せな気持ちになってもらいたい。俺が…あげていい?」
「間宮、俺にくれたら困らない?」
「っ困らない!嬉しいからっ…」
「うん...じゃあ、欲しい」
「~っ…キス…してもいい?」
「?…うん...?」
キスで、幸せ貰えるの?
不思議…
悠兄からは、とてつもない安心感貰えるけど
家族じゃない人として
意味?…あるのかな?
ゆっくりと間宮が体を離すと
「ほんとに…いい?」
「うん...」
間宮の…顔が……
凄く緊張している
キスするだけなのに
左手は俺の腰の辺りに置いたまま
右手で、俺の耳を挟む様にする
目を閉じると
少しの間の後
ほんの少し唇が触れた
あ...あれ?
目を開けると
間宮が…泣きそうな…辛そうな顔してる
ほんの少し唇が触れただけ
なのに
なんか…
知らない感覚が襲ってきた
「間宮?なんで…泣きそうなの?」
「嬉しくて…」
あ...
嬉し涙だ
「もう1回…していい?」
「うん...」
目が…
「気持ち悪くない?」
「気持ち悪くない」
間宮の目が…
まるで…
物凄く大切なものを
大切に見てる様で…
大切なものに触れる様に
優しいキス
何度か、角度を変えて…
でも、触れるとすぐに離れて
「水無瀬…大丈夫?気持ち悪くない?」
「ふっ…間宮、そればっかり。気持ち悪くないし…幸せな気持ち、どんどん貰ってる」
「…っ!じゃ…もうちょっと…強めに...してもいい?」
「間宮の好きにしていいよ」
「なっ…!ダメ!そんな事言っちゃダメ!」
突然怒られた
「ごめん。えっと…強めにしてもいいよ」
「あ...俺も、ごめん。ダメってのは…その…そんな事言われたら、俺…止まらなくなっちゃうから…水無瀬の嫌な事は…したくないから…」
よく分からないけど
間宮が優しいのは分かる
「…ありがとう」
「だから…嫌だったら、ちゃんと言ってね?」
「うん...」
嫌だなんて…
こんなに幸せな気持ちになれるのに...
気持ちいい…
間宮が優しいから?
腰を支える間宮の左手も...
耳とか、頬とか撫でる間宮の右手も…
優しくて...
?
何度か、舌を入れようとするとやめる
間宮のキスのやり方?
でも…なんか…中途半端にされると…
「…んぅっ…?…ふあっ…はぁっ...」
入れようとした舌に、俺の舌を絡めると
少し驚いた後、キスを続けてくれた
…けど!
何?これ…
「…はぁっ…んっ……ふぁっ…はっ…んっ...」
気持ち…良くて…良くて…
体の力…抜けてく...
「…んっ…はっ...…ぁはっ…んっ…!」
間宮の制服掴んでも...力入らない
体中が…幸せで包まれてるみたい
頭…ぼ~っとして...もう…分かんない…
「…んっ...ん?!水無瀬?水無瀬?!」
間宮がキスを止めて叫んでる
「……間宮」
「水無瀬…大丈夫?息出来なかった?ごめん!俺、夢中になっちゃって...」
「大丈夫…幸せな気持ちと…気持ち良過ぎて……力…抜けちゃった……なんか今...あんまり…考えれない…」
「……え?……えっ?!えっ…あっ...そっ...そうなんだ…」
こんなの初めてで分からない
でも…もしかして……
「間宮…」
「なっ…何?」
「こんなの…初めて。俺も…間宮と同じ好き?」
「うえっ?!…えっ?……ほっ…ほんとに?ほんとに…気持ち良かった?」
「うん...体中に…間宮の気持ち伝わって…幸せで包まれてるみたいだった」
ふわっと、間宮が優しく抱き締める
「~っ…じゃあ…そうかも…奇跡みたいな...夢みたいな話だけど…そうなのかな…だったらっ…すげぇ幸せっ…」
「…良かった。じゃあ、俺も間宮に幸せあげられる」
「…っ!…ありがとう…水無瀬、ありがとう」
「間宮も、ありがとう」
それから間宮と連絡先を交換して
暗いし、どうしてもって、間宮に送ってもらったら
気付くと17:30過ぎてて
よく悠兄から連絡来なかったなと思った
家に帰っても、特に何か言われるでもなく
何となく悠兄も、いつもと違う感じだった
ただ、体調だけは何度も聞かれた
答えても...覚えてないのかな?
でも、俺もそれどころではなくて
何度も何度も
あの不思議な感覚が蘇って
俺達は、早々に自分の部屋へと入った
あ...間宮から
『今日はありがとう』
『でも、やっぱ違うな…とか』
『勘違いだな…とか』
『そういうの気付いたら、なるべく早く言って下さい』
『水無瀬の事は、絶対困らせたくないから』
『でも、俺と付き合ってくれてる間は』
『俺が彼氏の間は』
『水無瀬に、もっと沢山の幸せあげるから』
『好きです。付き合ってくれてありがとう』
どうしてこんなに優しいんだろう
なんで…
これ見ただけで
こんなに幸せな気持ちになるんだろう
俺は…こんなに返せない
こんなに…貰っちゃっていいのかな
返さなきゃ…
この…いっぱいのものに対して
何て返せばいい?
ありがとうじゃ足りない気がするけど
感謝してますじゃ、堅苦しいし
散々 散々 悩んで
結局、どれだけ考えたって、俺の頭な訳で
『ありがとう。俺も沢山幸せあげたい』
『俺も好きです』
全然…伝わらない気が…
あ...既読になった
あ...
あ...
はっ…
ははっ…
間宮から
ありがとうと、感謝してますと、サンキュと、マジ感謝!
の、スタンプが次々送られてきて
大好き
の、スタンプもきて
「ふっ…」
『また、明日な』
の後に
おやすみ
の、スタンプが送られてきた
『うん、また明日』
おやすみ…おやすみ…あった
俺もスタンプを送る
今日のこの画面を見るだけで
一生元気になれる気がする
「おはよう…悠兄」
「おはよう、暁」
悠兄…普通
顔洗って、一緒にご飯食べて
言った方が…いいよな
今言っても...いいのかな
「あの…悠兄」
「何?」
「俺、好きな人できた」
あれ…?
悠兄が固まった
左手にご飯、右手にご飯を掴んだ箸を持ったまま
悠兄が動かなくなった
そして…
悠兄が泣き出した
「悠兄?」
「うっ…うぅっ…っ…良かったね...」
これは…
嬉し…涙?
「うん。悠兄…嬉し涙?」
「そうだよ…今度…どんな人か…っ…教えてね…」
「うん…悠兄は…何が嬉しいの?」
「暁が…家族以外の誰かを...大切に思える事が…嬉しい」
家族以外の人を
大切に思ってるんだ俺…
「ありがとう、悠兄。凄く…不思議な気持ちで、幸せな気持ちなんだよって、教えて貰った。今度ちゃんと話すね」
「……うん…もしかして…その子も、暁の事好き…だったりする?」
「うん。間宮から好きって言われた」
「……まっ…?!」
「え?」
何で…そんなに驚いてるの?
「あの…あの、暁の事心配してくれた、前の席の?」
「うん。皆で仲直りさせてくれて、でも、まだ謝りたい事あるって、公園で話聞いたら…俺の事が好きだから、心配で家まで付いて来て、玄関で倒れた俺を、中まで運んでくれたみたいなんだけど…勝手にした事だからって、キスも勝手にしちゃったからって、謝られ…」
「キス?!」
なんか…今日の悠兄、変
「暁…その子にキスされたの?!」
「ダメだった?」
「いや...暁は倒れちゃったんだから、分かんないだろ?寝てる人に、恋人でもないのに、勝手にキスするのはダメだろ?」
「やっぱりそうなんだ。なんか、間宮そう言って凄く謝ってた」
「え?暁…キスされたから好きになっちゃったの?」
キスされたからと言うか…
「キスしても、気持ち悪くないし、凄く幸せな気持ちになったから」
「えっ?!キス……したら……」
「あっ!悠兄、時間!」
「あっ!急げ急げ!」
結局、慌ただしく家を出て
学校行くまでの間も
俺に何か聞くでもなく
いつも通り帰って行った
何か、言いたそうだったけど…
「おはよう、水無瀬」
「おはよう、長谷。昨日は、ありがとう」
「あれから、間宮と話したのか?」
「うん。間宮にまだ謝りたい事あるって言われて、公園行って話した」
「何?間宮も、あん時言っとけよな?」
「おとつい、俺が具合悪かった帰り、勝手に後付いて、家まで行ってごめんって」
「間宮、水無瀬の家まで行ったのか?危ない奴だな」
危ない?
「俺が倒れちゃったみたいで、中まで運んでくれたのに。勝手に家の中入って、キスして悪かったって謝るんだ」
「ふ~……ん?水無瀬?今、何て言った?」
「?間宮が、勝手にしたからって謝る」
「何を…勝手にしたって?」
「倒れた俺を運んで…」
「それから?」
「キスしたって」
「…………」
長谷?
「……ぅ…ぅうあ~~~っ!!」
何?
「長谷?どうし…」
「水無瀬!ちょっと来い!」
「え?」
長谷が俺の手を引っ張る
「なんだ~?長谷、急に叫んで」
「あ、こら、水無瀬を何処に連れてく気だ!」
「ちょっと!廊下まで!」
廊下行くのか
「告白か~?頑張れよ~」
「今日は、長谷の失恋記念日~♪︎」
「うるせぇ!」
そうして廊下の隅にしゃがみ込むと
「いいか?水無瀬」
「うん?」
「あのな、キスしたとかされたとか、そういう話は、あんまり皆が居る時にするもんじゃないんだ」
「そうなの?2人の時はいいの?」
「俺はもう、聞いちゃったからな。他の奴にはまだ言ってないんだろ?」
「んっと…兄ちゃんには言った」
「ぇえ~~っ?!」
長谷…
声がデカイよ
「に…兄ちゃんなんつってた?!」
「寝てる人に、恋人でもないのに、勝手にキスするのはダメだろ?って」
「そ…そうそう。さすが兄ちゃん」
「あと、キスされたから好きになったのか?って」
「そうそ…え?…す…好き…好き…好き…」
「何やってんの?」
え?
すぐ後ろに間宮が覗き込んでた
「まっ…間宮!」
「長谷…何でそんな焦ってるの?」
「い...いや……えっと……ああ…トイレ…俺、トイレ行こうと思ってたんだわ。じゃ...」
「え?長谷…」
話の途中だったけど…
「水無瀬、おはよ」
「間宮、おはよう」
間宮が長谷の代わりにしゃがみ込む
「長谷と何の話してたの?」
「あれから、間宮とちゃんと話したのか?って聞かれて、公園行って他の事も謝られたよって話してた」
「そっか。なんか、キスとか好きとか言ってなかった?」
「ああ。兄ちゃんにも話したら、キスされたから好きになったのか?って聞かれたって話」
「えっ?」
「え?」
なんか…まずい事言った?
間宮の表情が…
まずいって感じの…
「お…お兄さんに…相手が俺って事…言ったの?」
「…言っちゃった。ダメだった?」
「いや...俺はダメじゃないんだけど……それで…水無瀬は何て答えたの?」
「キスしても、気持ち悪くないし、凄く幸せな気持ちになったからって言った」
「えっ?…あっ…そっ…それはっ…ありがとう」
ありがとうって…言われる事なんだ
「で…それに対してお兄さん、何て言ってた?」
「もう、学校行く時間だったから、話途中になっちゃった」
「今朝の話?!ってか、さっきの話?」
「うん...?」
「ちょっとそれは、お兄さん…朝から重いよね?大丈夫かな…お兄さんの様子、変じゃなかった?」
「凄く変だった」
「うわぁ~…だよね~」
間宮には
何で変なのか分かるんだ
「言っちゃ…ダメな事だった?」
「あ…ダメじゃない!水無瀬が、そんな風に言ってくれるのは、凄く嬉しい。ただ、男が男を好きになるって…あんまりないからね…悪い事じゃないんだけど、良く思わない人とか、馬鹿にする人とか居るかもしれないから...多分お兄さん、びっくりしたのと、心配なのと…頭の中、混乱してるかも」
それで悠兄、変だったんだ
「今度ちゃんと話すとは言ったんだけど、あとで連絡しとく」
「うん。それがいいと思う」
「間宮、ありがとう」
「えっ?…い...いや...全然?」
間宮…顔赤い
「間宮…昨日も、皆顔赤くなってた。なんで?俺は赤くないでしょ?」
「えっ?!…そ…それは…」
キ~ンコ~ン カ~ンコ~ン
「よっ…予鈴だ…また今度教えるね?教室入ろ?」
「うん」
授業が始まる前に悠兄に送っとこ
『間宮から、男が男を好きになるのはあまりないって聞いた』
『悠兄が、びっくりしたのと、心配なのとで、頭混乱してるって言ってた』
『心配かけて、ごめんなさい』
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