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待ち合わせ?

幸せな気持ちでバイトに行って 着替えをしてホールに出て 少しすると、窓際のお客さんが帰ってった テーブルを片付けに行き ふと、窓の外を見た 凌久によく似た後ろ姿だなぁ ……って…あの服…凌久だ え? なんで…もしかして、しばらくこの辺に居た? いや、でも…誰かと話してる 楽しそう… 知り合いだ 待ち合わせ…してた? あ… もしかして、こっちに用事があったから 俺を送って来てくれた? 待ち合わせ場所の…近くだったから そんな訳ない 凌久…凄く心配してくれてた もし、そうだとしたら 絶対俺に言ってくれる たまたま…知り合いに会ったんだ チラッとしか見えなかったけど 格好良さそうな人だったな 「お先に失礼します」 「お疲れ様~」 更衣室で着替え始めて あ、携帯、携帯 暁からの連絡は…なし で…ちゃんと家に居るな ガチャ 「おお、水無瀬上がり?」 「八神さん。お疲れ様です。上がりです」 八神さんは、俺の1個上のバイトの先輩だ 俺が入った時から、色々教えてくれて 歳が近いのもあって、よく話す 「なんだ~?着替えも途中になる程、いい女と付き合ってんのか?」 「ははっ…。弟から、連絡入ってないか見てました」 「仲良し兄弟だなぁ。でも、いい女も居るんだろ?」 そう言って、八神さんが俺の背中を指差した 背中? えっ… 凌久の…引っ掻き傷? いつの…残ってた? 「ふっ…純情だなぁ。男に見られて、そんな赤くなるなって。勲章だよ、勲章」 「勲章…ですか?」 「そっ。そうなるだけ気持ち良くしてやったって勲章」 「きっ…気持ち…」 気持ち良さそうな凌久の顔が… 「かっわい~なぁ…ほんとに水無瀬、俺の1個下の男なの?」 「そっ…そうです!」 1個しか違わないのに 可愛いとか言わないで欲しい 「弟君に、そんなに一生懸命になってて、彼女に文句言われない?」 「…り…っと…言われないです。それ知ってて付き合ってるからって…俺、甘やかされてんです」 名前言うとこだった 「何~?惚気(のろけ)~?りっちゃんって言うんだ~?」 「ちっ…違います!」 さっさと着替えなきゃ これ以上話したら 凌久の事色々言っちゃいそう 「なぁ、もっと教えろよ。聞いてやるからさ。俺、早く来過ぎたの。甘やかされてって事は歳上?可愛がられてんだぁ。いいなぁ~…イケメンは。幸せ真っ只中かよ」 「……別に…そうでもないです」 はっ…! 何言ってんの俺… 「おっと…喧嘩?何?別れる?」 「なんで嬉しそうなんですか?」 「イケメンが別れるから」 「意味が分かんないです。ってか、八神さんにイケメンとか言われたくないです」 「そ。俺もイケメンだから、相談乗ったげる~♪︎」 にこにこしながら見てくる 凌久の事知らないし…いいかな 「今日…初めて俺をバイトまで送って来てくれて…俺が…ぼ~っとしてたからなんですけど…」 「へ~?彼女ここまで来たんだ。何?ヤり過ぎ?幸せ過ぎ?」 「やっ…?!違います!」 「ふ~ん?いいけど~?で?」 キスの…し過ぎ… 幸せ過ぎ…だけど… 「ホールに出て…少しして…窓際の席の片付けしに行ったら…よく似てる後ろ姿で…本人で……」 「ああ…水無瀬の働いてるとこ見てたんじゃない?」 「そう…かもしれないけど…知らない人と、楽しそうに歩いてて……」 「男?」 「格好いい感じの…男の人でした」 「なかなかアウトだな。ま、偶然知り合いに会ったって可能性に懸けたいとこだけど…」 「その人と…待ち合わせしてたから…俺の事送ってくれたのかな…」 「まあ…その可能性も捨てきれないなぁ。どういう関係かは知らんけど。聞くしかないな」 聞く… 聞いて…もしも… 少しでも凌久が困ってる感じとか… 見ちゃったら… 「何?そんな浮気しそうな女なの?」 「全然……でも…俺の事ばかり優先してくれるから…いつ愛想を尽かされても…不思議じゃないんで…むしろ…納得出来るくらいで…」 「…そんだけ思ってくれてんのに、水無瀬がそれじゃ、ダメだろ」 「え?」 「そんだけ水無瀬の事大切に思ってくれてんだろ?なのに、水無瀬はいつ別れても仕方ないみたいに思ってたら、相手に失礼じゃないか?」 「あ…」 「ちゃんと話してみろ。玉砕したら慰めてやる」 「…はい。八神さん、ありがとうございました。お先に失礼します」 「頑張れよ~」 ちゃんと…聞いてみよう 凌久が…浮気なんてする訳がない 「ただいま~」 「お帰り悠兄」 「暁、変わりなかった?」 「うん。先にご飯食べた」 「うん。お風呂は?」 「これから入る」 「そっか。入っといで」 「うん」 自分でも お風呂を警戒してるのか 1人の時に…あまり入りたがらない ご飯をあっためて食べる 多分…間宮君とそういう関係になれば落ち着いてくんじゃないかとは思う 間宮君に…言うべき? 流れの中で…2人で話し合うのが1番だけど 暁は…間宮君の気持ち分からないから 「ズバッと言っちゃいそうだよなぁ」 でもなぁ そろそろかな?とか、タイミング読んで 兄ですって挨拶して 実は…って説明する? どう考えてもおかしいよな だいたい… どこまで説明するんだ? 俺との事まで? それとも…暁に… こんな事考えさせる原因になった奴の事まで? 間宮君…受け止めきれる? でも… 暁に…上手く隠したり、騙したりなんて そんな技術はないから 多分…どこかでバレる どうしてあげるのがいいんだろう? せめて… 間宮君とそうなるまで 俺との関係がなくなればいいけど… 「悠兄、お風呂いいよ」 「ん。髪もちゃんと乾かしといで」 「ぅ~…うん」 「ふっ…」 暁は、ドライヤーが苦手だ お風呂の後、何事もないとほっとする 「終わったよ」 「どれどれ?えらい!」 「ふふっ…」 暁の頭を撫でると、嬉しそうに笑う これから先まだまだ楽しい事あるし そっちのが、ずっと長いけど 「じゃ、お風呂入ってくるね?暁、寝ててもいいよ」 「うん」 どんなに楽しくて、嬉しくて、幸せでも きっと、暁の中から あいつの存在が消える事はない された事全て忘れる日は来ない だから… せめて、そんな事あったな位に思える様に そんな奴居たな位、頭の隅に追いやれる様に でも…そこまでの道のりは… 結構苦しいから… 多分、間宮君の事好きになればなる程 辛くて、苦しくなってく 今までは分からなかった事に気付く度 罪悪感と…色んなものが混ざって… でも、それを乗り越えてかないと変われないから… きっと…沢山沢山泣く事になる そして… その涙の中には 暁の罪悪感を…後悔する事を… 知ってて抱いてきた俺の分も入ってる 「全然いいお兄ちゃんじゃなくて…ごめん…」 「暁、寝てなかったの?もう23:00だよ?」 「うん。悠兄、少しだけお話していい?」 「うん。聞きたい」 暁から話したいなんて… 嬉し過ぎる 全然喋らなかった暁が… 暁の隣に座ると 「あのね、悠兄。今度、宿泊研修あるでしょ?」 「うん。来週だね?」 「うん。あのね、出席番号順だからね、バスも隣で、班も一緒で、ホテルの部屋も間宮と一緒になれた」 「そっか。良かったね」 「うん!」 嬉しそう これ、言いたくて起きて待ってたんだ 可愛いなぁ……… あれ? ホテルの部屋? 「じゃ、俺寝るね」 「え?あ…ちょっと待って暁」 「何?」 「えっと…ホテルって何人部屋?」 「3人部屋だって」 「そっか。もう1人居るんだね?」 「うん…?」 いや…いくらなんでも早過ぎでしょ でもね 一応念の為ね 「もう1人はなんて人なの?」 「俺の後ろの席の武藤だよ?」 「武藤君とも、ちゃんと仲良くするんだよ?」 「あ…そっか。うん、分かった」 「おやすみ、暁」 「おやすみ、悠兄」 自分の部屋へ行き、携帯を見る 凌久は…必要最低限しか連絡してくる事はない 多分、暁に気を遣って… だから、何時までなら起きてるのか… 分からない 明日…起きたら連絡しよ 凌久より背が高くて 格好良くて 優しそうに笑ってた きっと…あんな人の方が 凌久は幸せで居れる 凌久が…幸せなのが1番なんだから それだけは…ちゃんと考えよう こんなに我が儘放題の俺を ここまでずっと大切にしてきてくれた 凌久には感謝しかない もしも…万が一…… あの人が凌久の事好きで 凌久も…凌久も…… 凌久と別れるのは嫌だけど… 嫌だけど… 「…っ…うっ…」 凌久がちゃんと好きな人と居て欲しい 幸せに…笑ってて欲しい 「…っ…凌久っ…凌久っ…」 どうか… なんだ、勘違いかって… 笑えますように……

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