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八神の訪問

朝、柿内先生と泣いて帰ってった悠兄 今日はバイトのはずなのに、帰ったら家に居た けど…様子がおかしい 目…腫れてる あれからも泣いてた? それとも、別の事? ご飯… 明らかに悠兄が作った物じゃないと思う でも、特に何も言わない… と言うか… ずっとボーッとしてる 「悠兄…」 聞こえてないのかな? 時々、悠兄からは声を掛けてくる 体調大丈夫だった? 学校で、困った事なかった? そんなにボーッとしてても聞く程 悠兄の中では当たり前の事になってて どれだけ心配させてきたのかが分かる 「悠兄…大丈夫?」 「……えっ?何?」 「ううん。これ、美味しいね」 「あ…うん…」 食器を下げる時、近くに来た悠兄から いつもの、あの匂いがしてきた 彼女と…何かあったのかな? でも、聞いても俺… 何もしてあげれないし 料理作ってくれたのも彼女? じゃあ、喧嘩じゃないのかな 嬉し涙? 少しは…役に立てればいいのに… 「はぁ~っ…」 「どうした?水無瀬。朝からそんなため息吐いて」 「長谷…おはよ」 「おはよ。また、間宮と喧嘩か?」 「あのね、悠兄が…変なんだ」 「変…とは?」 長谷が椅子を持って近付いてきた 「目が腫れてて、ご飯も、誰かが作った物で、バイトだったはずなのに、家に居て……でも、ずっとボーッとしてて、何があったのか分かんないんだ」 「昨日の朝は元気だったのにな?」 「うん…いつもの…俺の家じゃないシャンプーかなんかの匂いしてたから、彼女と何かあったのかな?」 「えっ?!水無瀬…そういうの分かるの?!」 なんか…凄いびっくりしてる 「だって、シャンプーとか使うって、いつも同じ匂いって…彼女と以外で、いつも同じシャンプー使う事ある?」 「いや...まあ…それは、そうだとは思うが…」 「でも、料理も作ってくれたんだとしたら、喧嘩じゃなくて、嬉し泣き?」 「まあ…そうかもしんないけど……こればっかりは、聞いてみないとな~」 「そうだよね…」 嬉し涙ならいいけど… そうじゃないなら、何か出来る事ないかな? 「長谷…」 「何?」 「嬉し涙じゃなくて、もしも悲しい涙だった時、俺にでも出来る事ってある?」 「水無瀬……そうだなぁ…人それぞれ違うからなぁ…けど、きっと水無瀬の兄ちゃん、水無瀬に弱いとことか見せたくないだろうから、少し位変でも、ちょっと部屋に閉じこもってる時間とか、友達と居る時間とか長くなっても、許してあげるとかかなぁ…」 「…分かった。ありがとう」 そうだ 俺には相談に乗れないけど 友達とかなら 悠兄の事、どうにかしてくれるかも そして、その日の夜 悠兄が作ってってくれたご飯をたべて 食器を洗って 宿題をしてると ヴヴヴ~ ヴヴヴ~ 悠兄だ 「もしもし?悠兄、どうかした?」 もうそろそろ帰って来る時間 バイト遅くなる? いつも通り、ご飯とか学校の事聞いてくる ? 何で今、電話で? 「そっか。あのね…ちょっと、友達と話があってね…でも、暁の事が心配でね…俺が帰るまでの間、バイトの先輩が暁の傍に居てくれるって言うんだけど……どうかな?知らない人は、やっぱり怖いかな?」 これは… 友達に…相談なんじゃ…! 良かった 大丈夫 大丈夫だよ悠兄 知らない人は…少し怖いけど 知らない人と2人は少し怖いけど でも、柿内先生も、間宮も、長谷も、皆知らない人だったけど、怖くなかった 優しい悠兄が優しいって言う人なら… 大丈夫 そんな事を話してると、悠兄が泣き始めた これは…嬉し涙? なんで… あ、そっか 家族以外の人を大丈夫って思える様になったから 悠兄に…喜んで貰える事…なんだ 「……うん。じゃ、ちょっと待ってね?」 悠兄が、これから来るっていう先輩の声を聞かせるって言った ちょっと…緊張する… 「えっと…こんばんは。水無瀬のバイトの先輩の八神です。ちょっと兄ちゃん、急に用事が出来ちゃって…帰って来るまで、俺が家に行ってもいいかな?」 急に…決まったんだ 悠兄…八神さんに話すんじゃなくていいのかな? 分かんないけど わざわざ俺の為に来てくれるんだ 「はい…よろしくお願いします」 「じゃ、も少ししたら、家向かいま~す。はい、水無瀬」 なんか…悠兄よりお兄さんだけど 話し方が…間宮達みたいで ちょっと安心した え~っと、ここか なんか問題ありの水無瀬の弟 なかなかのコミュニケーション能力を自負している俺でも、ちょっと緊張 ピンポーン 「はい」 「八神で~す」 ガチャ 「こんばんは~」 「あ…こんばんは」 あらら… 明らかに緊張してる 「あの…どうぞ」 「お邪魔します」 後を付いて行く 2人暮らしだから、まあまあ広いな リビングに入ると… なんか、困ってる? 「……あの、すいません」 「ん?」 「こういう時、どうしたらいいのか…分かんなくて…」 あ…なるほど ソファーに2人か ダイニングテーブル挟んで2人か 「ここ、座ってもいい?」 ダイニングテーブルの方を選んで座る 「はい」 「ありがとう」 あ… 自分もどうしたらいいのか分かんないのか 「えっと…あき君?」 「はい」 「もし、少し話するなら、こっち座る?」 「あっ…はい」 話したいんだ 「俺は、水無瀬のバイトの1個上の先輩。八神。八に神で八神。あき君は?水無瀬の何個下で、どんな字?」 「悠兄の3個下です。あかつきって字で、あきです」 はるにい そう呼ばれてんだ 「綺麗な名前だね」 あっ… 「ありがとうございます」 すっごく嬉しそう で、 すっげぇ可愛い 何?この兄弟 「あの…八神さん。悠兄、誰かに相談に行ったんですか?」 「なんか聞いてたの?」 「いえ…でも…昨日から悠兄…凄く変で……目も腫れてるし…きっと彼女と何かあったんだなって、思ったんですけど…」 彼女が居るって言ってるのか? まあ…そうだよな 「俺が…話聞いたとしても、出来る事なんて何もないから…誰かに相談出来るなら、良かったです」 「水無瀬、彼女が居るって言ってたんだ」 「……いえ…たまに、家じゃないシャンプーか何かの匂い…いつも同じなんで…」 あら~… 恋人が居る事すら言ってなかったの? 俺…どこまで言うべき? 「彼女でも…何でもいいんですけど…ずっと悠兄に…心配と迷惑ばっかりかけて……俺が来なかったら、今頃悠兄…もっと色んな楽しい事出来てたかもしれないのに…だから、少しでも出来る事とか…しない方がいい事とかあったら…と思って」 来なかったら? ああ…親元離れて2人暮らししなかったらって事か 「兄ちゃんなんて、そんなもんだろ?俺だって妹に、いっつも文句言われて、我が儘言われても、やっぱ可愛いし、心配するよ?」 「そう…なんですか」 「うん…?」 ん? あんまり仲良くない兄弟しか知らない? 「でもきっと…普通のお兄ちゃんの何倍も何倍も心配も迷惑もかけてます。俺は、おかしいので…それに…悠兄を巻き込んでしまったので…」 「どんな弟だって可愛いし、巻き込まれたなんて思わないよ。水無瀬見てれば分かるよ。嫌々面倒見てる様には見えないよ?」 「…っ悠兄は…優しいから……もしも…彼女との喧嘩で……っ…原因が…俺……だったら……どうしたら…いいんだろう」 なんだ? なんか… 思い当たる事…あるのか? 「そんな風に…思う様な事あるの?」 「…あります」 即答… 「確かに…水無瀬は大切に思ってる人と…まあ…色々あったみたいで…その人との話し合いに行ったんだけど…それは…その2人の間の話であって、暁君は関係ないと思うよ?」 「……関係…あるんです」 「え?そうなの?」 あ、早く帰んなきゃなんないとか? 休みの日、あまりデート行けないとか? あ...そう言えば、最初から我慢させてって… 普通はあり得ない事許してもらってって… そういう意味か 「…~っ…ほんとにっ…やめなきゃって…ダメだって……分かってるんですけど……その時は…どうしようもなくなって…どうしたらいいのか…他の方法が分かんなくて……っ…っ…」 泣き出しちゃったぞ? いいのか? 俺の前で泣いて大丈夫か?ってか さっきまで、兄ちゃんに泣かれてたんだけど 「…~っ!…悠兄っ…初めからっ…嫌がってたのにっ…」 ん? 嫌がってた? 「俺がっ…無理矢理っ!……っ…」 え? なんか… フレーズが…… あっち方面にしか聞こえないんですけど… 「どうしてもっ…大切に思ってくれる人じゃなきゃ…だめでっ……父さんと母さん居なくなるとっ……一気に不安になっちゃってっ…」 「…うん」 それは、分かるぞ で? 「悠兄しか居なくなるからっ……うっ…いつもっ…悠兄に頼むしかっ…なくてっ……うっうっ…」 いつも? 何…を? 「どうしよっ……はるにっ…俺のせいでっ…嫌われたりっ…怒られたりしてたらっ……俺がっ…あんな事頼むからっ……うっ…」 あんな事… それは… つまり… 「えっと~…暁君は…水無瀬を抱いちゃったのかな?」 「うっ…うぅ~っ!ごめんなさいっ…ごめんなさいっ……ほんとはっ…好きな人とってっ……はるにっ…言ってたっ…」 …………ぇえええええーー!!! マジか 大抵の事は受け入れられる、この俺が ちょっとキャパオーバー気味だよ? 「えっと…暁と水無瀬は兄弟だよね?なんで、そんな事になっちゃったのかな?」 落ち着け~、俺 大きな声は、怖いって言ってた 優しく~ 優しく~ 「うっ…俺っ……中1の時っ……悠兄の家っ…来てっ…」 「え?それまでは?」 「うっぅっ…施設っで…その前っ…ほんとのっ…家っ…」 ヤバっ 「ごめんっ…無神経に聞いちゃった」 「だいじょぶっ…ですっ……」 ヤバいヤバいヤバい 完全にキャパオーバーだよ 俺に受け止めきれるか? 「ほんとの母さんっ……あんまりっ…居なくてっ……母さんっ…最後に連れて来た男の人っ…俺の事っ…見てくれてっ…」 「……うん」 これ…聞いちゃって良かった? 後で…水無瀬に怒られない? 「母さんっ…じゃなくてっ……俺の事っ…見てくれてっ…褒めてっ……笑って…いっぱいいっぱい…一緒にっ…居てくれてっ…」 「うん…」 母親が帰って来なくて つまり、母親の彼氏が可愛いがってくれたのか 複雑 「でもっ…だんだんっ……変な事っ…したりっ…怒ったりっ……」 「え?」 「その人っ…喜んでくれたらっ……今までと同じっ…笑って…一緒に居てくれたっ……い…嫌だって…言ったり…うっ…っ…喜んでっ…もらえないとっ…~~っ!…うぅ~っ…怒って…怒鳴って…叩いたりっ…」 「暁、分かった。全部言わなくていい」 キャパオーバーどころじゃねぇよ 水無瀬… お前も、とっくにキャパオーバーだろ 「でもっ…1番っ…怖かったのっ……1人ぼっちにされる事っ…~っ…何日もっ…1人にっ…されるのっ……1番っ…怖くてっ……あの人とっ…繋がってる時がっ…1番安心出来たっ…からっ…」 「……暁、そっち行って…抱き締めたら怖い?」 「うぅ~っ…怖くっ…ないっ……八神さんっ…怖くない人っ……大丈夫っ…」 怖くない人、そうじゃない人も… これ… 今日俺に会うのも 相当怖かったろ それよりも、水無瀬の心配が勝ったんだ 立ち上がって、暁の元へ行くと 暁も立ち上がったので、抱き締める 優しく 怖くない様に 「よしよし。よく頑張って生きてきたな」 「うっ…っ…八神さんっ…」 「うん」 「悠兄っ…嫌がってたっ……でもっ…俺がどうしようもなくなってるの見てっ…俺の事っ…抱いてくれてっ…」 「…そっか」 水無瀬が抱く側か いや、んな事どうでもいいわ 「ほんとはっ…キスもっ…セックスもっ……好きな人となんだよって……~っ…ほんとはっ…そうじゃない俺とっ…したくなかったのにっ…ずっと…」 「うん。そっか…そっか…暁も…水無瀬も……2人共すげぇ頑張ってきた。よしよし」 「でもっ…だめな事だからっ……そのせいでっ…はるにっ……あんなにっ…泣いてたかもしれないっ……うぅ~っ…どうしよ~…」 そう…かもしんないけど… もしも… 暁に実際会ってなかったら 何て事してんだ?! って言ってたかもしれない けど… これは…… そんなに水無瀬の事思ってるのに、どうしようもないなら…どうしようもなかったんだろ そんな風になってる暁見たら… 俺でも、そうするしかなかったんじゃないかって… 「暁。過ぎてしまったものは、変えられないんだ。水無瀬も、抱くと決めた時、多分それなりの覚悟決めてるはずだ。だから、暁も水無瀬も、それを乗り越えてかないと。水無瀬だけじゃない。暁だってこれから先、そういう事で泣くかもしれない。けど…それでも乗り越えてかないと」 「その為にっ…俺にっ……出来る事はっ…?」 こんなに小さな体で… 中1の時には、既に施設に入ってて? 気分悪くて吐きそうになる 「こうやって、傍に居てくれる人を作ってく。恋人と上手くいかなくて、泣きたい時、胸を貸してくれる友達作ってく。不安な時、水無瀬とそういう事しなくてもいいように…友達沢山作って、沢山楽しい事して…お互いに辛い時泣ける友達作って…いっぱい遊びに行って…そんな辛い事、考える時間ない位に…いっぱいいっぱい楽しい事する!」 「友達…沢山作って……っ…いっぱい…楽しい事したらっ……悠兄、少しはっ…困らなくなる?」 「なる!!」 お前達… いくつから、そんな重いもん引きずって来たんだよ… なかなか…言える事でもないもんな…… 「…~っ…分かった。友達っ…いっぱい作るっ…いっぱいいっぱい…楽しくなるっ…」 しばらくして、暁が泣き止んだ頃 「暁、喉乾いた。なんか飲みたい」 「うん…お茶ある」 「ちょうだい」 暁と、元通りテーブルを挟んで座りお茶を飲む 「暁は…彼女居ないの?好きな人とか」 「居る。彼女じゃないけど…間宮、男だから」 「ぶーーっ!…ゲホッ…ゲホッゲホッ…」 「八神さん…大丈夫ですか?」 「ゲホゲホッ…ゲホッ…大丈夫…ゲホッ…大丈夫」 大丈夫な訳あるか! まさかの弟も彼氏かよ! 妹よ! 世の中結構BL溢れてんぞ 「悠兄に言ったら…なんか様子が変で…間宮に聞かれて、悠兄に話したって言ったら、物凄くびっくりして、男が男を好きなのは、あまりないんだって言ってた。びっくりさせて、ごめんなさい」 「え…いや。別に悪い事ではないからな?ちょっと、びっくりしただけ」 彼氏に聞いて… そういうの…分かんないのかな こんなに素直に謝れるのに でも、そんな風に言ってくれる彼氏とも… これから先…苦労するんだろなぁ あ…もう苦労の最中? 「間宮君とは、どの位付き合ってるの?」 「5日目です」 「いっ…5日目?!付き合い出したばっかり?!」 「はい。月曜日からです」 何て言うか… 男だからとか… 照れるとか… そういうの全然ないんだな… 間宮君、色々大変そう 「間宮君の、どんなとこが好き?」 「優しいところと、キスが凄く気持ち良くて…」 「ぶっ…!ゲホッ…悪い…ゲホゲホッ…ちょっと…油断したっ…」 「あ…長谷って友達に、そういうのは、皆が居るとこで話さない方がいいって言われました。皆の前じゃなくても、話さない方がいいんですか?」 こりゃ~…大変だ 通常の学生生活…送ってきてないのか? 友達は普通に居るみたいだけど… 「ん~…それも、悪い訳じゃないんだけどね?多分暁は、誰かのそういう話を聞いても、嫌な気持ちにはならないと思う」 「…はい」 「でもね、恋人と別れたばかりの人が、そういう話聞いたら、思い出して辛い気持ちになるかもしれないし、人のそういう話を聞くのが苦手な人も居る」 「そうなんですか…」 不思議そうな顔 突然高校から、学生やりだした訳でもないだろうに 「それから、これが1番大事」 「はい」 「恋人によるけど、そういう…自分達にとっての大切な思い出とかを、あまり他の人に話して欲しくない人が多い」 「間宮が…話して欲しくない…」 理解… 出来ないかな 「間宮君が、どう思う人かは知らないけど、仮に話してもいいよって言って、暁君が誰かに話したとして、全然悪気はなくても、その時の事を、ふざけ半分で色々言う人が居て、それで盛り上がったりしたら…やっぱり、あまりいい気分ではないと思う」 「……そっか…分かりました。間宮との事は、間宮と大切にします」 「そっ…そうだね」 照れるとか 恥ずかしいとか…分からないのかな? こっちが照れる 「でも、困った事や、相談したい事は、ちゃんと誰かに相談しなきゃダメだよ?」 「誰かに…」 「そう。水無瀬でもいいし、俺でもいいし、長谷君?が、間宮君との事知ってるなら、その子でもいいし…」 「八神さんにも…相談してもいいんですか?」 うわ… かわ… 「いいよ。俺で役に立つか分かんないけどね」 「ありがとうございます」 可愛い~~~っ いつでも相談乗るよ こんな可愛い子が困ってんだもん ほっとける訳ないだろ そうして、暁と連絡先を交換したら もう23:00近くで 「暁、眠くない?暁がいいなら、寝てもいいよ」 「悠兄気になるし、まだ大丈夫です…」 「そっか…そうだよな?もう少し話してっか。じゃあ、バイト先の水無瀬の様子でも話してやろう」 「わぁっ…聞きたいです!」 可愛い~! まさか、その頃 俺達の計画とは、まるで違うシナリオが進んでたなんて 全く思ってなかった

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