28 / 120

デート

「…ん...何時…」 そろそろ起きなきゃ 「凌久…シャワー浴びさせてもらうね?」 ピクリともしない 体中ベタベタなまま 2人して、死んだ様にそのまま寝た シャワーを浴びて、スッキリして タオルを借りて、凌久の体を拭く 拭いても全然動かない 大丈夫かな… 「凌久…」 ちゅっ 頬にキスしても反応なし 全部綺麗にして、耳元で呼び掛ける 「凌久…大丈夫?」 「……ん」 「ごめん。体辛いよね?」 「……悠稀」 「ん。何?」 「……もう…行く?」 「そろそろ…バイトあるから」 「…八神…さん……お礼…言って…」 「うん。分かってる。ゆっくり休んで?」 そう言って、唇に軽くキスをして 凌久の家を出る 凌久…動けるかな… 合意の上とは言え… やり過ぎた感が…半端じゃなくある 凌久もして欲しいって言ってたけど… 絶対後で大変だって分かってて、止められなかった 「…はぁ~っ」 どうしよう… 今後どんどん凌久を苦しめたり 体辛くさせたり そういうの、分かってて止められなかったら 自分で自分が嫌いになりそう 学校も…休んじゃった ちゃんとしてなきゃって、ずっと思ってた けど… 俺とは別のとこで、暁の世界ができてきて… 俺に影響されないとこで、暁が生きてて… なんか、少し気が楽になった もしも暁が、間宮君との話し合いで、学校休んじゃったって言っても そっか…って 言ってあげられる 俺の世界も…少し広がった バイト先に行き、更衣室のドアを開ける ガチャ 「あ...八神さん!」 「お、来たな?酔っ払いめ」 「八神さん!ほんとに、すいませんでした!俺は、よく覚えてないんですけど、凌久が、絶対凄く驚いたからって、よくお礼言っといてって…すいませんでした!ありがとうございました!」 「その感じだと、酔いが醒めても、仲直り出来てるみたいだな?」 「はい!本当に、八神さんのお陰です!」 「まず、いいから着替えろ」 「はい」 ロッカーを開けて着替える 店長にも、ちゃんとお礼言わなきゃ この前は、散々だった 給料減らされても、しょうがないくらいなのに、優しく声掛けてくれて… シャツを脱いで、制服を手に取ると 「そう言えば、暁………」 え? 「暁…ですか?暁の面倒も見てくれて、ありがとうございます!あの家に…家族以外が来たの初めてなんです…なのに…八神さんが居るのに寝たって聞いて…ほんとに…」 「分かった!分かったから、制服さっさと着ろ!」 「はい…すいません」 制服を着終えると、 「また、随分激しく愛されたもんだな…」 「……あ…俺が…そんな風にしちゃっから…もっと別の方法あったかもしれないのに……」 「は?…ああ…暁の事じゃねぇよ。凌久と、ヤってきたんだろ?」 「え?凌久と…やってきた?…やって……?!」 「そんだけの傷と印付けといて、今更赤くなるな」 あ… 背中…見てたんだ 恥ずかしいよ! だって…凌久も見られてるみたいだし… 恥ずかしい! 「あ~…悪い。俺が余計な事言った。その顔どうにかしないと、また店長から、バイト禁止令が出る」 「は…はい…」 「え~っと?暁の話をしよう。別に、全部話せと言った訳ではないが、なんか結構重要な事を話してくれた。まあ…暁も、良くない事だと分かってはいたから、誰かに話したかったのかもしれないな」 「あ…そう…ですよね」 俺は…凌久に話したけど… 暁はずっと誰にも話せないでいたから… 「けど、暁の話を聞いて、もしも俺がお前でも、同じ事したかもしれないとも思った」 「…え?」 「絶対間違ってるし、おかしな事だ。お互いにとって、良くない事だと分かってても、それがその時最良なら…と、思う気持ち、分からなくはない」 「…八神さん」 「あんなに泣いて後悔してるのに、どうする事も出来ないんだって言ってた…じゃあ…他に方法なかったんだろ…」 暁…八神さんの前で… 泣いたんだ 泣けたんだ 「けど!お前達はこれから先、自分達のした事とずっと付き合ってかなきゃならない」 「はい」 「そんなの、2人だけが抱えていけるもんじゃない。いつでも相談しろ」 「……え?」 「お前達が、恋人に文句言われても、フラれても、いつでも愚痴聞いてやる」 なんで… 軽蔑されて当然なのに… なんで… 「八神さん…」 「何だ?」 「泣きそうです」 「なっ?!ダメだ!我慢しろ!」 「じゃっ…なんか…面白い事言って下さい」 「はあ~?ったく、手のかかる後輩だな」 「すいません」 皆が優しい 俺の周り皆が 優しさで包んでくれる それに甘えてしまわない様に 少しでも返せる様に… 結局凌久は、次の日学校を休むと言い 家に行ったけど、ずっと居れる訳でもなく 夜には、マシになったと連絡がきて 次の日は学校に来てくれた そして、数日経ち、いよいよ暁の宿泊研修 「暁、ほんとに、何か怖い事とかあったら、すぐ言うんだよ?」 「分かってる」 「寂しくなったら、迎えに行くから、柿内先生に言って?」 「大袈裟だよ、悠兄」 「だって…」 「あっ!間宮だ!」 「えっ?!」 突然?! ちょっとまだ…心の準備が… 「間宮、おはよ」 「水無瀬…おはよ…もしかして…そちらが…」 「暁の兄です。間宮君、暁と仲良くしてくれて、ありがとう」 「はっ!…はじ…初めましてっ!間宮です!水無瀬君と…仲良く…させてもらってます!それで…あの…」 「うん。暁から聞いてる。びっくりしたけど…暁が幸せそうだから…暁をよろしくお願いします」 頭を下げると 「はいっ!よろしくお願いされました!しっかりお守りさせていただいて……あのっ…水無瀬が嫌がる様な事は勿論いたしませんし!…」 間宮君が、ピシッと背筋を伸ばして話してると 「はよ~…あ、水無瀬の兄ちゃん、おはようございます」 「長谷君。おはよう」 「間宮、何やってんの?皆が、白い目で見てんぞ?」 「うっ…うるさい!今っ…大事なとこなんだっ!」 間宮君が可愛い… 可愛いから…申し訳ない 「おら、さっさと行くぞ?水無瀬も」 「うん」 「あっ…離せ!俺はまだ挨拶の途中…」 「ははっ…またね。行ってらっしゃい。暁、楽しんで」 「うん。悠兄、行って来ます!」 まるで、普通の男子高校生みたいに 楽しそうに、暁は友達と、彼氏と、宿泊研修へと行った 家に帰り、母さんに電話して、掃除、洗濯1通りを済ませて、荷物を詰める 今日から1泊2日 凌久の家にお泊まりだ 前から決めてたから、お互い、何の予定も入れてない ピンポ~ン 「ほ~い」 「凌久っ…来たよ」 「ふっ…そんな嬉しそうな顔されたら…何処にも行きたくなくなる」 「え?」 「冗談。入って?」 「うん。お邪魔します」 「荷物、どこでも適当に置いて?」 「うん」 なんか… 泊まるの初めてじゃないし 凌久の家なんか何度も来てるのに 改めて、ちゃんと泊まりに来るの初めてだから ちょっと緊張する 凌久は…いつも通り… 「ちょっとコーヒーでも飲んでから、出掛けるか」 「うん」 荷物から、充電器くらい出しておこう そしたら…あと… その辺に座ってればいい? あれ? いつもベッドに座ってるけど… だってコーヒー飲むし… テーブルの前のがいいよね? 「ぶっ!悠稀何ウロウロしてんの?」 「えっ?…なっ…なんか…分かんなくなった…」 「分かんなくなった?何が?」 「どうすればいいんだっけ?」 「……は?」 1人で座ってるのも落ち着かなくて 凌久の隣に行く 「どうした?」 「俺も…手伝う」 「いいよ。あっち行って座ってな?」 「…なんか…1人で居ると…落ち着かなくて…」 「……悠稀君、凌久君の家、初めてですか~?」 「違う…けど……恋人になってから…ちゃんと泊まりに来るの…初めてだから…なんか…緊張してきた」 「緊張って…これから初めてヤル訳でもあるまいし」 「でも…凌久とずっと長い時間居れるのは…初めてだから……嫌われないか…不安…」 いつもは数時間だから でも、ずっと一緒に居たら 今まで気付かなかったとことか…気付いて… 幻滅されるとか…… 「馬鹿だな…」 そう言って凌久が抱き寄せた 「そんなの、お互い様だろ?俺だって、色んな嫌な部分とか、見られるかもしんない」 「凌久は…大丈夫だよ。例え嫌なとこあったとしても、俺と比べたら、全然気にならない様な事だよ」 「何でそんな事分かるのさ?」 「凌久は…優しさで出来てるもん…凌久が気になる事なんて…些細な事だよ」 「そのままそっくり悠稀に返してやる」 凌久の背中に手を回す 凌久は…自分がどれだけ優しいか気付かないから 「悠稀…あっち行って、コーヒー…飲もう?」 「うん」 テーブルの前に座ってコーヒーを飲む 「悠稀さ、お互い不安はあるけど、それよりせっかくの貴重な時間、悩んでるより楽しも?」 「あ...うん。そうだね?この性格ダメだね?」 「ダメじゃないよ。そうやって…自分も大変なのに、暁の事も俺の事も、いっぱい考えてくれたんだろ?でも、そういうの、今は1回忘れよ?」 「……うん!」 「シュラスコの店、12:00予約だからさ。それまで、適当にブラブラしよ?」 「うん!」 適当にブラブラ ずっと憧れてたやつ それに、凌久が行きたがってたお店も やっと行ける! 「ふっ…悠稀…嬉しそ」 「凄く…嬉しい」 「俺も…ずっと悠稀とこういうの、したかった」 「…うん」 一緒に電車乗って、何でもない事話しながら 適当にお店覗いたり、中に入ってみたり 凌久が時々行くお店の話 たまに通る変わった人の話 毎日の様に会ってたのに 今までしなかった話 何でもない道が 凄く楽しい場所になる 「そろそろ、向かうとするか」 「うん!」 「ここ?」 「そうだよ」 「なんか、立派そう…こんな格好で大丈夫?」 「別にドレスコードとか書いてなかったし、ランチなんだし大丈夫だろ」 なんで凌久、そんな堂々としてるの? 中に入ると、立派だけど 意外と普通の格好の人が多くて、ほっとした シュラスコ… 写真では見たけど、凄い 「うんまっ!これ、すげぇ旨い!」 「ははっ…凌久、さっきから、そればっかり」 「絶対ワインとか合うよなぁ…早く飲める様になりたい」 「俺は…あんまり強くなさそうだから、いい」 「あっ…そうだな。悠稀は、酒禁だ」 「全然美味しいとも思わなかった」 あんなのの何が美味しいんだろう… 「そりゃお前、何にも割らないで飲んだら、味相当濃いだろうし…そりゃ、ペッペッてなるわ」 「ペッペッ?」 「八神さんに教えてたぞ?変な味して、ペッペッてしたって」 「なっ?!」 何その話し方?! あっ…酔っ払ってたからか! 「もしかして、俺、ずっとそんな話し方してたの?」 「そうだな」 うわぁ~… 「気持ち悪かった?」 「は?可愛いかったけど?」 「うっ…嘘だ。いい歳した男が、そんな話し方…う~…凌久の記憶から消したい」 「ほんとに可愛いかったよ?八神さんだから許すけど、他の奴には絶対見せたくない」 「……凌久は…俺が酔っ払って怒っても叩いても許しそう…」 絶対酒飲まない 記憶残ってるなら、まだいいけど 全然全く覚えてない 「可愛いらしく怒ってたな」 「えっ?!俺…酔っ払って怒ってたの?!ちゃんと、俺の事怒った?」 「怒れないよ」 「何で?怒ってよ」 「しょんなの…しやないよ!」 「え?」 「暗いかや…危ないれしょ!」 これは… 信じたくないけど… 「それ…俺が言ったの?」 「そ。こんな可愛いの、怒れる訳ないだろ?」 「怒れる!…酔っ払って、凌久に迷惑かけといて、何言ってんの?俺…しっかり怒ってよ」 「悠稀が、ああやって怒るなんて激レアだからな。俺だけの特権」 「もっと違う特権がいいよ」 「ん。もっと違う特権も、いっぱい貰う予定」 「…うん…でも、ごめん。酔っ払いの俺、嫌い」 「俺は、結構好きだよ?俺だけの前でなら、許可する」 「やだよ…俺何も覚えてないし…」 「俺が全部覚えてる」 酔っ払いの、ふざけた言葉まで… 全部… 「凌久が…酔っ払って欲しい時だけ…飲むならいいよ」 「ん、ありがと」 「はぁ~っ…旨かった!」 「美味しかったね。予約してないと、入れなかったね」 「なかなかの人気店だな」 「凌久、この後は?何処か決まってる?」 「家で悠稀とくっ付きたくなったら困るから、特に決めてない」 「俺…行きたいとこある」 「え?何処?」 「水族館」 「凌久、ほんとは家帰りたかった?」 「いや?全然?悠稀…水族館好きなの?」 「うん…魚とか見るのも楽しいけど……なんかね、この雰囲気が、日常と違っててね…凌久と一緒に来たいなって思ってた」 「…そっか。じゃあ、もっと立派な水族館行けば良かったな」 「水族館は、どこも同じ雰囲気だよ。別にショーが見たいとかじゃないから。それに、ここも立派だよ?」 「うん…そうだな」 静かで... ゆったりしてて… ここに居る間は、何も考えなくていいよって 言ってくれてるみたいな 凌久みたいに優しい空間 「凌久みたい…」 「えっ?!これ?!俺、ハリセンボンっぽい?」 目の前の水槽にはハリセンボンが居て… 「可愛い」 「えっ…俺、悠稀に、こう見られてるの?!」 「ふっ…違うよ。水族館の雰囲気がね、凌久っぽいなって…」 「ああ…ってならねぇよ。益々分かんないわ」 大きな水槽が見える場所に 沢山椅子が並んでいる 「凌久、座りたい」 「おお。疲れたか?」 「ううん」 1番上の端に座ると 沢山の人達が、水槽の前に何分か居て 写真撮ったり、水槽見たりしては去って行く 「悠稀…具合悪かったりしない?」 「うん、大丈夫。ちょっとボーッとしてるだけ」 「え?酔った?人にも酔うの?」 「人には酔いやすい。でも…この雰囲気に酔ったのかも」 「ああ…暗いからな。大丈夫か?横になる?」 「大丈夫。凌久…手…繋いでいい?」 「え?…まあ、誰も気にしないから、いいか」 凌久が、指を絡ませて、手を握ってくれる 凌久と手を繋いで 凌久と水族館に来て こんな綺麗な空間に居て 夢みたい 「凌久…俺、酔ってるから…また忘れちゃうかも」 「酒じゃないんだから、忘れないだろ」 「じゃあ…今日の事…全部忘れたくない」 「俺もだよ」 しばらく、そのままボーッと見てると 人通りが途切れた 「ありがと。そろそろ大丈夫」 「うん。行こうか」 「うん……え?んっ…」 ちゅっ え? キス… 「行こ」 「~っうん…」 水族館で… 凌久とキスしちゃった… これは… 絶対忘れられない 「悠稀、晩ごはん何か食べたい物とか、行ってみたい場所とかある?」 「特に…ない…」 「そっか。あと、どっか行く?」 「ううん……凌久の…家…帰りたい」 「なっ?!…お前っ…なんちゅう顔してんだ!」 「だって…凌久が………ス…するから…」 「うっ…ごめん……でも…俺も家で悠稀と居たいかも」 「うん!」 「ご飯は、なんかデリバリーでもいいしな?」 「うん!」 「ははっ…喜び過ぎ」 だって… だって… スローモーションみたいだった 綺麗な水族館の 綺麗な水槽をバックに 綺麗な凌久が目を閉じる仕草が… 信じられない位綺麗で… そんなキス貰ったら… もっと欲しくなる 「悠稀、先にシャワー浴びてて?」 「うん…」 「?……何?」 「ううん…シャワー…借ります」 「ぷっ…はい、どうぞ」 なんか… 別にこんなの、いつもの事なのに 改めて考えたら これから抱き合う為の準備とか思うと… 凄く恥ずかしくなってくる 「凌久、ありがと」 「おお。俺も浴びてくる。冷蔵庫の物、勝手に食べたり飲んだりしてていいぞ」 「うん。ありがと」 そう言って凌久がシャワーに行き 着々と準備してるのが、気まずい 冷蔵庫から、ミネラルウォーターを出して、コップに移して飲む 凌久は…挿れてみたいとか思わないのかな 男なら…思うよね? でも、暁からも言われた事ない 暁は…まあ…そういうんじゃないからか 恋人として付き合ってたら… え? もしかして、普通は、逆になったりするものなのかな… 凌久…俺に気を遣って…言い出せないとか? どうしよう… 俺に…出来るのかな… 暁も…凌久も…凄く苦しそうで… 正直…全然自信ないけど それをいつも、頑張ってくれてる訳だから いつまでも凌久に甘えてちゃダメだよね 緊張と、頭使ったせいか なんか…あんなに食べたのに お腹空いてきた 何かないかな… 冷蔵庫… 作らなくても食べれる物… チョコでいっか んっ… なんか、中からトロ~っと… さくらんぼ? 美味しい~ 凌久がシャワーから上がったら言ってみよ 今日じゃなくても ちゃんと凌久に教えてもらって 今度、逆にしよう?って…

ともだちにシェアしよう!