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暁って…

チャポン せっかくなので、普段出来ない事をしようと、風呂に入ってみた 「凌久の家のお風呂入るの初めてだね?」 「いつも、さっさとシャワーだけ浴びてるからな」 「でも、1人暮らしにしては、大きなお風呂だね?」 「まあな、それもここに決めたポイントだ」 「そうなんだ」 悠稀の背中や肩にお湯をかける 時々振り返る悠稀の横顔が わざわざ、そうセットしたかの様に いい感じに髪も顔も濡れている 「……ほんと、水に濡れてもいい男だな。なんか、すげぇカッコ悪いとことか、見てみたい」 「何言ってるの?凌久になんか、カッコ悪いとこの方が多く見られてるよ」 「え?まだ見てないけど?」 「うっ…嘘だ!泣いたり…酔っ払ったり…その…色々…」 「どれも可愛いでしかないけど?」 何言ってんだろ? 「可愛いくない!恥ずかしぃ…八神さん家で俺…どんなだったんだろ…」 「ずっと可愛いかったよ?」 「うっ…嘘だ…ってか…早く忘れて…」 悠稀が、両手で顔を隠す 「忘れないよ。あの日がなかったら、今こうして一緒に居られなかった」 悠稀を後ろから抱き締める 「俺は…ほとんど覚えてない…」 「……悠稀の家戻って来てから」 「え?」 「悠稀が、キスしたいって俺に迫って来て…」 「えっ?」 「俺が逃げたら、俺ソファーから落っこちて…」 「えっ?!」 「キスしてくんないって、泣いてるとこ、八神さんに見られた」 「え~~っ!」 八神さん… 気を利かせてさっさと退散してくれたんだろな いや… バイトの後輩のあんな姿見たくなかったのか… 「や…八神さんに……見られ……俺、そんな事したの……って…凌久!」 チャポンッ 悠稀が勢い良くこっちに向き直す 「何…」 「ソファーから落ちたって…大丈夫?どっかぶつけた?」 「ああ…全然。頭タンコブできたくらい」 「…~っごめん」 「全然。その後、すっげぇご褒美貰ったし」 「ご褒美?」 覚えてないんだろなぁ… 「そ。悠稀から、嬉しいご褒美貰った」 「俺、何かあげたの?」 「いっぱい気持ち良くしてもらった」 「え?……えっ?暁…居るのに?!」 「一応何度もそう言ったんだよ?俺は。けど…部屋の鍵かけれるよ?っていう…可愛い天使の…悪魔の囁きに、耳を傾けてしまった…」 「………~~っ!」 少しの間、真っ青な顔になってたかと思うと 徐々に真っ赤になってきた 忙しいな 「俺っ…何て事っ…!」 「うん…俺が止めなきゃなんないのに、ごめん」 「凌久、何度も止めてくれたんでしょ?……って…あっ!」 「ん?」 「だっ…だから凌久…俺が目覚めた時、ベッドの下に座ってたの?!」 「まあ…さすがに、あんな事されて一緒に寝たら、寝込み襲いそうだったからな」 「~~~っごめん…散々だ…俺、ほんと絶対お酒飲まない!」 「ふっ…でも、ほんと可愛いかったんだよ」 悠稀の後頭部を支えて、瞼にキスをする 「話聞いてる限り、とても可愛いなんて思えない数々の所業…」 頰にキスをする 「よく凌久…今まで黙ってたね?今からでも、俺の事怒っていいよ?他は?俺、吐いたりしなかった?」 「吐いてないよ。俺のせいで、全然離してくんなかった。俺が、悠稀の事1人で置いてったせいで…悠稀…ちょっとの間でも、離してくんなかった……ごめん」 「凌久…」 悠稀が、俺の手を取る 「凌久…また、一緒に居られる」 俺の手に指を、絡めて… そのまま口元に持っていき ちゅっ 手の甲にキスをした 何? 今、ドラマの撮影中? どの表情も… どの仕草も… 視線すら… 完璧過ぎんですけど?! 一気に顔が熱くなる 顔…見られたくなくて もう片方の手で顔を隠して、顔を背けると ちゅっ ちゅっ 顔を隠してる… 悠稀に向けられた掌にキスしてきた 「あ…近…近い…」 お前の顔… ヤバいんだって 「凌久…あの日の…『いつか、悠稀と一緒に暮らせるかな』…凄く…凄く…嬉しかったんだ。凄く…凌久の優しさ伝わってきた…ありがとう」 「~~~っ!」 ヤバいヤバいヤバい! 何これ イキそうな訳じゃないのに 何かが、もう限界 胸…いっぱい過ぎて… 「凌久…泣かないで?」 水も滴るイイ男が 俺の涙を拭ってくる だから… ヤバいんだって 目を背ける お前の顔見てるだけで 何かが限界になって どうしようもないから 勝手に涙溢れてくんだって 「凌久…ありがとう…凌久…好きだよ…」 「~~~っ!」 凌久凌久言わないでくれ! お前の凌久、ヤバいんだって! 「凌久…愛してる」 「~~~っ!」 ガバッと悠稀に抱き付く 「凌久?」 「~~~っ!」 耳元で凌久言うな! 「震えてる?大丈夫?」 大丈夫じゃない 何これ? 「~っお願いっ…ちょっと…黙ってて…」 「…うん?」 ?じゃない! この無自覚タラシが! 言葉攻めどころじゃない! 視覚と聴覚で…じわじわと… そんなん俺に出来ない! 「…ずるい」 「えっ?…何が?」 「悠稀の存在が…」 「えっ?…どっ…どうすればいい?」 「悠稀が…ぶさいくで、しゃがれた声になればいい」 「え…っと…?」 「ふっ…真剣に考えんな」 「凌久…もう大丈夫になった?」 「ん…」 悠稀から離れる 「悠稀…何時に帰る?」 「っ…16:00頃…1回…家帰って…荷物置いて…迎えに行くから…」 「な、一緒に晩ごはん作らね?」 「え?」 「どうせ、なんか用意しなきゃなんないだろ?一緒に買い物行ってさ」 「い…行く!作る!」 「ふっ…んじゃ、そろそろ上がるか」 「うん!」 スーパーまでの道のりで、ハンバーグを作ろうという事になり、ハンバーグの具材を買って行く 「あ、サラダも作るか。ポテトサラダ」 「作る!」 「よし、ジャガイモ、ジャガイモ…」 「凌久の分も一緒なら、これ買っちゃってもいいかな?」 「そうだな…あと、ミニトマトも添えよう」 「ふっ…凌久オシャレ」 「そうか~?普通だろ」 今日が、終わってしまうのが寂しいのは、俺も一緒な訳で けど、せっかくなら、最後まで悠稀と笑ってたい訳で 「悠稀、重くない?」 「重くないよ?まだ持てるけど?」 「うっ…悠稀さ、筋トレしなきゃとか言ってたけど、すげぇ筋力あるだろ?」 「そんな事ないよ?この前、八神さん家行く時走って…体力の衰えを感じた」 「ほんとか~?俺の筋トレ、全然追い付いてねぇわ」 「そんな事ないよ!凌久の腹筋凄く綺麗だもん!腹筋だけじゃなくて、ちゃんと鍛えてる人の体で綺麗だもん!」 んなっ?! 向こうから歩いて来たお姉さん達2人が、クスクスと笑ってる 「ちょっと…悠稀!」 「何?」 「何じゃねぇよ!そんな事、デカイ声で言うな!」 「?…だめだった?」 「いや、恥ずかしいだろが」 「男の人に褒められる筋肉あるって…恥ずかしい事じゃないんじゃないの?」 なんか、ここまで恥ずかしがらないと 俺がおかしいみたいだな 「いや、腹筋も、他のとこも俺の体見てますって公表してる様なもんだろ?まあ…普通にスポーツとかやってんだなと、思ってくれてるだろうけど…なんか、褒め方が、そういう感じじゃ……悠稀?」 止まった? 「…~~~っ!…そっ…だよね…ごめん」 真っ赤っか! それはそれで こっちまで、すげぇ恥ずかしくなってくるんですけど?! っつ~か… 「~っその顔、可愛い過ぎ。下向け。他の奴に見せんな」 「うっ…うん…」 なんで、こんな女の子みたいな心配しなきゃなんないんだ? 不安だ… 俺が居ない時に、こういう事思い出したりしてたらどうしよう こんな顔で歩いてたら、フェロモン撒き散らしてんのと一緒だぞ ドサッ ドサッ と、荷物を下ろす 言われた通り、従順に俯き続けた悠稀 「どれどれ?どうなったかな?」 クイッと顔を上げてみると 「んなっ?!お前…全然変わってねぇぞ!」 「だっ…だって…もしも…万が一そういう関係だって気付かれてたら…」 ああ… 彼氏だなんて、思われたくいよな? 「だいじょぶ、だいじょぶ。一部の女子達を除き、そうそうそんな風に思う人達居ないから」 でも、なんで真っ青じゃなく、真っ赤なんだ? 「でも…もしも、そうだとしたら…凌久が…俺の彼氏だって…思うって事でしょ?」 「……嫌だよな?悪…」 「嬉しい…」 「え?」 あれ… 聞き間違い? なんか今、嬉しいって聞こえた様な… 「凌久が…俺の彼氏だって……ほんとは皆に自慢したいから……ただの友達じゃなくて、彼氏なんだって…言いたいから…」 「……言いたい…の?」 「?…うん?」 「え?…知られたら嫌じゃないの?」 「知られていいなら、皆に見て欲しいけど…?」 いや…だって… 水無瀬 悠稀だよ? このイケメン…絶対綺麗な彼女って思うじゃん? それが、彼氏とか…あり得ないでしょ 知られたくないって思うでしょ 「あ…でも、言わないから安心して?知られたら、やだよね?困るもんね?」 「いや…いやいや…嫌で困るのは、悠稀だろ?」 「困る…事はあるかもしんないけど、俺は、やじゃないよ?」 「~~~っ!…やじゃ…ないの?男が…恋人だって思われても…」 「だって、凌久でしょ?やな訳ないじゃん」 「~~~っ…悠稀っ…」 悠稀を抱き締める 男が恋人で、恥ずかしかったんじゃないの? 俺が彼氏だって見てもらえて嬉しいとか… もう… 神じゃん 「凌久?これは…嬉しいでいいの?」 「っ嬉しいっ!…すげぇ嬉しい!ありがとう…」 「…良かった…凌久が嬉しいの…俺も嬉しい」 神… 俺のイケメン彼氏は 神です 買ってきた、たこ焼きを2人で食べ、晩ごはんを作る 「ポテトサラダは出来上がり。ハンバーグは、やっぱ焼きたてがいいから、そのまま持って帰れば?」 「うん。そうする。2人で作ると、あっという間…ってか、凌久の手際がいい。なんか、気付いたら、洗い物もなくなってるし」 「俺、綺麗にしながら作るの好きなの」 時間を無駄なく使い 綺麗を保つ スッキリ 「すご~い!凌久、いい旦那さんになれるね?」 「…ふっ…悠稀の旦那さんにはしてくんないの?」 「え…あっ!する!俺の旦那さんになって!」 「えっ…いや…まさか、いきなりプロポーズされるとは…」 「え?あっ…間違えた!今は…ちょっとまだ無理だから…もっと…俺がちゃんとしたら……」 「ん…まずは一緒に暮らすの目標な?」 「あ…うん!」 どんどん… 時間が過ぎてく 悠稀も、明らかに口数が減って… 「悠稀、シーツ取っ替えるの手伝って」 「うん」 何かしてないと 2人して泣いてサヨナラなんて 最悪な事になりそうで 「あ、そうだ。デザート、デザート」 冷蔵庫から、さっきスーパーで買ったデザートを出し 「悠稀、何飲む?」 ベッドに座った悠稀に声を掛ける 「…………」 お~い 止まったら終わりだぞ~ 紅茶にして2人分をテーブルに並べる 買ってきたデザートを並べ 「悠稀、食べよ?」 「うん…ありがとう」 泣く寸前… 気持ち、分かるけどさ 「俺の旨いよ。食う?」 「うん…俺のも食べる?」 悠稀が、自分のをこっちによこそうとする 何だよ もっと楽しめよ 俺が、スプーンで掬って 「はい、悠稀、あ~ん」 「え?…えっ?あ…じゃあ…」 口を開けて、俺のスプーンを咥える エロっ… 「美味し…俺のも食べて?」 「ん…」 口を開けて、悠稀の差し出したスプーンを咥える 俺のも食べてが… 別な意味に聞こえる俺の脳ミソは だいぶイカれてる 「悠稀、明日は?午前中から?」 「………え?あっ…午後から」 俺と離れるのが寂しいで合ってる? それとも、そろそろ暁切れ? 「じゃあ、明日も家の中の事やったら来いよ」 「…うん……あっ!違う!明日は暁が振替休日で、1日休み」 これは… 暁切れの方か? 思ってたより連絡よこしてなさそうだったしな 「……もうちょっとで帰って来るって」 「……帰って…え?」 「暁中毒の症状出てきてんじゃないの?」 「なっ…出てない!凌久と離れるのが…もうちょっとで…」 まさかの、そっち? 「なんだ。じゃあ…その時間まで楽しめよ。俺、悠稀ん家まで送ってっていい?」 「えっ?うん!いい!」 「暁の学校の前まで行きたいとこだけど、もし、どっちかが泣き出したりしたら、ヤバいからな」 「……うん、泣きそうだね」 もう、泣いてんじゃねぇの? 「悠稀、家出るまで、いっぱいくっ付いてよ?」 「……うん」 「なんだよ?くっ付きたくないのか?」 「そうじゃないけど…離れる時…寂しくなるから...」 「…俺さ、悠稀に名前呼んでもらうの好きなんだよ」 「凌久…」 早っ…! 「ありがと。で、突然悠稀の声出なくなってさ、ああ…こんな風に大切なもの突然なくなったりするんだなって思った」 「っごめん…心配かけて」 「そうじゃなくて。今あるものを、大切にしなきゃなって思った。いつでも聞けると思ってた、悠稀の凌久が2度と聞けないかもしれないって思ったら、もっと大切に聞いておけばよかったって思った」 「凌久…凌久、凌久、凌久!」 必死かよ… 「だからさ。寂しくて落ち込むのも、それはそれで思い出だと思うけど、せっかく与えられたこの時間、大切にしたい」 「あっ…うん…」 「いつもさ、時間限られてるから、キスしたり、すぐヤッちゃうじゃん?」 「…っうん」 「だから、ただくっ付いてんの。あと2時間…ただくっ付いてんの。やっていい?」 「いい!」 だって、勿体ないじゃん 2時間だよ? 120分だよ? 7200秒だよ? こんなに長い時間、くっ付ける事ないよ? ベッドに上がり、壁に寄りかかって座ると 悠稀が左腕を組んでくる 「悠稀、実はくっつき虫だろ?」 「え?」 「チョコで少し酔ってた時、コアラみたいに俺にくっ付いて寝てたろ?」 「やっ…やっぱり気付いてたよね…」 「ぶっ…!気付いてないかもとか思ってたの?」 「~~~っあれは…俺じゃないから」 「いいや。正真正銘悠稀だった。しょんなの、しやないよ!も正真正銘悠稀…」 「あっ!それ、早く忘れてってば!」 腕を離して、軽く叩いてくる 「何回も思い出したら、忘れないでしょ?!思い出さないでよ!」 「え~?分かりました~…なんて、言ってねぇぞ?可愛いから、一生覚えとく」 「なっ…だめ!早く忘れて!」 「え~?どうしよっかな~?」 「忘れて!忘れて!俺の酔ってる顔も全部!」 悠稀の酔ってる顔… 「……無理。やっぱ、定期的に思い出して、覚えとこ」 「えっ!なんで?!」 「だから、可愛いからだって」 「嘘だ!面白がってる!からかってる!」 「え~?そんな事ない…と思うけどな~?」 「笑ってる!凌久笑ってる!」 悠稀が、凌久って呼ぶ度に 今まで以上に愛おしく感じる たまたま名前だっただけで 他の色んなものも大切なんだろうけど 「凌久!聞いてるの?!」 「え?…ああ、聞いてる聞いてる」 「絶対ちゃんと聞いてなかったでしょ、凌久!」 「聞いてたって。悠稀が可愛いって話だろ?」 「全然違う!凌久、全然聞いてない!」 やっぱり、悠稀の凌久が好きだから 好きなのに失いかけたものは やっぱ、今まで以上にかけがえのないものになる 「凌久!」 「うん。ありがと」 「え?何が?」 悠稀の凌久に… 「秘密」 「暁が居ないのに家に入るのはなんだかなぁ。玄関でいいや」 「え?上がらないの?」 「ん。どうせなら、暁の居る時にする。なんか、せっかく暁も頑張ってるからさ、ちゃんと挨拶出来る様になってからにする」 「凌久…凌久の事、暁には言ったから」 え? 俺の事…って… 「ええっ?!言ったの?!彼氏居るって?!」 「うん…勝手に言ってごめん」 「いや…暁、大丈夫だったの?彼女が居てもショックっぽいのに、彼氏って…あ、いや…そこは、自分も彼氏だからいいのか?」 「暁…俺に恋人が居て、自分のせいで俺が泣いてるんじゃないかって…心配してたみたいで…」 「え?……そうなの?」 あれ? なんか、予想と違うな いくら彼氏ができたりしても 暁の中の悠稀は絶対で、誰にも奪われたくないものだと思ってた 恋人が居るって気付いてて 自分のせいで悠稀が泣いてるって心配してたの? え……泣きそう… そこまで思えるのに 悠稀とヤる事でしか安心出来ないって… 「凌久?」 「あ…そっか。ありがと。じゃあ、そのうちちゃんと挨拶しなきゃな?大好きな兄ちゃん泣かせた、悪い彼氏認定されてっかもしんないけど」 「ううん…暁との事知ってて付き合ってるって言ったら、優しいって言ってたよ」 それは… ほんと、泣きそうだから… 「そっか。暁、楽しかったって帰って来るといいな?」 「うん!」 「じゃ、俺行くな?明日は、たっぷり暁孝行しろ」 「…うん」 「んな顔すんなって。あさってな」 「うん。あさって…」 悠稀の家のドアが閉まった途端 涙が浮かんでくる 俺が、勝手に大きな勘違いをしていた暁は 大事な大事な兄ちゃんの彼氏を 優しいって言ってくれる様な奴だった 恨んだりなんてした事ないけど やっぱ、全然嫉妬しなかったかって言われたら嘘になる 暁は…俺よりずっと 優しくて強い奴だった

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