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俺の…願望…
「俺、りっくんの事好き」
「俺も、ひー君の事好きだよ?」
「じゃ、ちゅーしよう?」
「だっ…だめだよ。それは、好きな人とするんだよ」
「だって、俺もりっくんも、好き同士だよ?」
「そうだけど、違うもん」
「何が?」
何がって…
だって、俺男の子だもん
「ちゅーは、女の子とするんでしょ?」
「そんなの決まってないよ?」
「え?」
そうなの?
決まってなかったの?
小学3年生の時
俺は大きな衝撃を受けた
まだ、恋愛感情なんてものが分かってなくて
そろそろ、なんとなく
周りでそんな話を聞く様になった頃だった
好きになるのは、男の子でもいいのだと知った
「ここかぁ♪︎りっくん家に遊びに来るの久しぶり」
「昔は、よくお互いの家に行ってたもんな?」
「ほとんど凌久ん家だったけどな。立派なんだもん」
「立派?どんな豪邸だよ?俺ん家」
鍵を開け、中に入ろうとして気付く
あれ?
大丈夫か?
ここんとこ、ずっと悠稀しか来てなかったから…
「奏…ちょっとだけ待っててくれ。パパッと片付けてくる」
「んなの、いいって。俺はお前の彼女か」
「いいから、ちょい待て」
急いで家に入りチェック
怪しまれる様なもんは…
出てないな?
「なんだ、何もねぇじゃん?」
「うわっ!…おまっ…お前、まだいいって言ってねぇぞ!」
「凌久のやっらしい様々なグッズ、見てやろうと思ったのに」
「お前…友達のそんなもん……見て喜びそうだよな?お前は」
「うん!分かってる~」
こいつは、おかしい
嫌な奴じゃないし
友達として好きだけど
どっかのネジが飛んでしまってるんだ
「適当に座れよ。何飲む?コーヒー?お茶?」
「俺じゃなくて、お前が話すんだから、好きな物飲めよ。ベッド座ってもいい?」
「好きにしろ」
冷蔵庫から、お茶のペットボトルを2本
…話すってもなぁ
話したい事は山の様にあるけど…
「ほい」
「サンキュ」
奏の隣に座り、お茶を飲む
何を…話すつもりなんだ?俺…
ただ…
誰かに何か話したかった
けど、実際何を話したらいいんだか
「どこがいいの?」
「……え?」
「どんなとこが好きなの?」
「……めちゃくちゃタイプだ」
「まあ、イケメンだったよなぁ」
だろ?!
「なのに、可愛い」
「そりゃ、好きな奴は皆可愛いだろ」
「そんなんじゃなくて、すっげぇ可愛い」
「そりゃ、すっげぇ好きって事だろ」
「いや…」
そうなのか?
いやいや
あの顔、誰見ても可愛い過ぎだろ
「あとは?」
「……信じられないくらい優しい」
「…そうか~?全然そうは見えなかったけどな」
「………は?お前…悠稀見て、優しそうって思わなかったの?」
「何その…全人類思うだろ?みたいな発言」
「あ…いや、確かに今日のあいつは、絶不調だったらかな」
優しそうな男ランキング第1位
そんなの誰に聞かなくたって分かる
溢れ過ぎて、滲み出てる
「……お前さ、昨日あんまり眠れなかっただろ」
「…は?急になんの話だよ?」
「あいつの心配してる場合じゃねぇの。目の下クマ、顔色良くない。なのに、なんであいつ心配してくんねぇの?もう散々心配し終わった後なの?」
「悠稀は、今それどころじゃねぇの!」
今ってか…
ずっと…
「ずっとずっと…あいつは考えなきゃなんない事、山盛りなんだよ…あっち考えて…こっち考えて…優しいから何でも自分のせいにして…ずっと苦しんで…」
「………それどころって?」
「あ?…っ!」
なんか…
すげぇ怒ってる?
「それどころって何?」
「な…何…お前、なんか怒ってんの?」
「自分の好きな男が、調子悪そうなのは、それどころなの?」
「……そ。こんくらい、話になんねぇよ。もっとすげぇもん抱え過ぎてて…」
もう…
いっぱいなんだよ
「あいつ…俺が傍に居たのに、去ってった」
「友達と楽しそうにしてるからと、思ったんだろな」
「お前が調子悪そうな時に、他の男と居ても気にしないんだ……余裕な訳?甘やかし過ぎだな…」
「あ?俺らに余裕なんて、あった事ねぇよ。ただ…自分が関わると苦しめるかもって…思って…」
俺が…
思ったのと同じ…
お互いに…
関わるのが怖いって思ってるんだ
ドサッ…
は?
何…やってんの?
こいつ…
「こんな時…他の男と居たのに、ほったらかしにしたら、どういう事になんのか、見せつけてやろうぜ?」
「…な…何訳の分かんない事言ってんだよ?お前、俺が誰だか分かってんのかよ!目覚ませ!」
両手…両手で掴まれて…
「分かってるよ…俺の初恋のりっくん…」
「っ…お前は、初恋のりっくんの友達だろ?りっくんには恋人が居るんだ。こんな事…」
「りっくんの恋人…全然りっくんの事考えてくれない…思ってくれない…」
「だから!あいつは、頭ん中忙しいの!思ってくれてはいるの!」
「そんなの…分かんねぇじゃん…行動に移してくれるから分かるもんだろ?ただの…お前の願望かもしんねぇじゃん…」
ズバッといった
俺が俺自身を保つ為に続けてきた
騙し騙し続けてきた
命綱を
ズバッと切られた様だった
ただの…俺の…願望…
そんな訳ないって分かってる
それも…俺の願望?
「はぁっ…やめろ……」
「やめない」
何があったか言わないのは
言えないのは
益々俺を傷つける事になるからで
……っていう…願望…
「……っ…やめろっ…」
「やめない」
悠稀が調子悪いのに
昨日あんな事あったのに
一緒に居て話したいのに
奏と笑ってたのに
去って行ったのは
ほんとに調子悪くて
バイトまで休んで
俺まで巻き込みたくないって思ってくれたから
……って、願望?
「っ…~っ!…っ…」
「声…出せよ…そしたら…思いっきり泣けんぞ?」
やだ
悠稀以外に触れられるなんて
なのに…
何にも力入らない
何にもやる気が起きない
なんか…
もう…
どうでもいい
「…んっ…はっ……はっ…ぁっ!」
今日もまた…暁とすんの?
「はっ……はぁっ…ん、ん~っ!」
暁と…どんな風にしてんの?
「はぁっ…うっ……んっ…はっ…」
なんで…
俺以外で気持ち良くなってんの?
暁の事は丸っと許せる?
嘘だ
頭の奥の奥の奥に追いやってるだけだ
俺以外の男と…
俺以外の男と…
セックスすんなよ!!
「うっ…ふっ…はっ…あっ…」
「はぁっ…泣くななんて言わない…溜まってるもん…全部出せ…泣け」
「うっ…うっ……はっ…ぁぁあっ!…あっ…あっ…」
「もっと…啼け」
「あっ!……やっ!……あっ…うっ………ぅあっ!」
タガが外れた様に
悠稀と付き合ってから
初めて全てを曝 け出して
自分の無力と情けなさと絶望と
どうしようもなく湧き出て来るそれらが
止まらない涙になって
「あっ!…はっ……うっ……奏…」
「凌久…イケよ」
「やっ…やだっ……やっ…やだっ……うっ…」
「もっと泣きたいのか?お前…どっち?」
「どっ…ち…どっ…ち?」
言葉は…
聞き取れるし
話せるのに
意味が分からない
理解出来ない
ぐるん
世界が…回る…
反射的に掴まると
奏の胸の中に居た
「お前…こっち、気持ち良くなれる?」
そう言って、後ろに…
「やっ!…やめろ!」
後ろに手を回すべきだ
けど
力…入らない上に…
奏に掴まってないと…
どうにかなりそう
「分かった…気持ち良くなれるんだな?」
ぶんぶんと首を振る
「ふっ…それは、そうだって言ってんのと一緒だ」
「っ!…やっ…やめろっ…やだっ…」
「ん、挿れる時は、なんかないとなぁ…ま、お前が気持ち良くなったら、出してくれるか」
「~っ!…やだっ…やだっ…奏…」
訳が分からない
俺の頭もおかしいし
こいつの頭がおかしいのは元々だし
なんで、こいつとこんな事
なんで悠稀…
悠稀…
もう…分かんない…
「っ……う~~…っ…はっ…うっ…う~~~」
「上手。いい子。いっぱい我慢してきたんだろ?俺が、いっぱい甘やかしてやる。ほら、こっちもまた気持ち良くなれ」
「うっ…ふっ…あっ……ぁああっ!」
「そ。何も考えないで、気持ち良くなれ」
「あうっ!……ふっ…うっ…あっ……はっ…」
何も...
考えないで…
2人でそうなれたら
どんなに楽だろう…
「~~~っ!…やっ…奏……やっ…もっ…」
「ちゃんと俺の指3本咥えて、えらいよ。いい子。いっぱい気持ち良くしてやるな?凌久の気持ちいいとこは…あった…」
「うっ…うっ…ぁあああ~っ!」
「ん。気持ちいいな?ちゃんと気持ち良くなって、いい子。いっぱい気持ち良くなって、イキな?」
悠稀は、優しくて優しくて
いつも、ずっと頑張ってるから
俺と居る時くらいは
頑張って欲しくなくて
甘やかしてやりたくて
頼まれてもいないのに
勝手に頑張って
我慢して
いっぱいいっぱいに
なってたのかもしれない
優しく…甘やかされたいと…
思ってたのか?俺は…
「あっ…奏っ……~~~っ!…奏っ…」
「イキなよ。りっくん」
おかしな奴だけど
真っ直ぐで…
自分の気持ちに真っ直ぐな奏が
少し羨ましくて
堂々と、他の人が選ばない道を行くひー君が
格好いいと思って
俺も…
きっと、ひー君と同じ好きなんだって思った
「…っ…いっ…~~~っ!…いっ…くっ…」
「ん。全部出しちゃいなよ、りっくん」
「いっ…あっ……ひー…君っ……あっ…イクっ…イクっ…イクっ!…~~~~~~っ!」
初恋の男に…
何されてんだ?俺…
「いい子…りっくん…よく頑張ったね。休みなよ。いっぱい頑張ったから…いっぱい休むといいよ。起きるまで、ずっとこのまま居るから」
けど…
ひー君に…
りっくんって呼ばれると…
凄く懐かしくて…安心して…
俺は言われた通り…
そのまま眠った
寝返りを打つと
後ろから抱き締められ
まだ、ひー君が居てくれてるのだと思ってまた寝て
言われた通り…
昨日全然寝れなかったから
一気に眠気が…
「……ん…」
ん?
あ…俺あのまま、ずっと寝てたんだ
と、いう事は…
これは、奏の胸ん中か
ずっと同じ位だったのに
いつの間に、こんなデカくなってたんだか
最低だな俺
このベッドで
他の男にイカされて
他の男の胸ん中で眠ってたんだ
でも…
なんか、ちょっとスッキリしたかも
ムクッと起き上がろうとしたけど
起き上がれない
奏…爆睡中
しょうがない
起きるまで待つか
悠稀以外の男の匂い…
落ち着かない
ひー君と居るのは安心するけど
ああいう事は…
もう、ごめんだ
さわさわ さわさわ
あれ…
また俺寝てたんだ
奏が頭撫でてんのか
寝惚けてんのか?
「っ!!」
なっ?!
俺、抱き締めたまま、擦り付けて
腰振ってる
おい!
寝惚け過ぎ!
「奏!起きろ!…っ寝惚け過ぎだ!」
「……はぁっ……凌久っ…凌久っ…」
凌久…
俺だと思ってんの?
何で俺だと思ってて、こんなんなってる訳?
え……
いや……
まさかな
だって、こいつ恋人居たって言ってたし
好きな人欲しいって探してるし
「……凌久っ…はぁっ…凌久っ…」
え?
「んむっ!…んっ…まっ……んんっ!」
突然、寝ながらキスしてきた!
さっきは、キスしなかったのに
絶対寝惚けてる
けど…
俺だって…思ってキスしてる…
俺だって思って…こんな…
「~~~っ!…はっ…まっ……~っ…はなっ……」
気持ち…込め過ぎっ…
待って…
これ以上ここで
悠稀以外で気持ち良くなりたくない
「……ひっ……はぁっ……ひ~くんっ……んっ…はぁっ…やめてっ!」
「……んっ…ん?……んんっ?…んっ…んん…」
おい!
今、目覚めたよな?
考えながら続けんな
「はっ…やっ…やめっんっ!」
「はっ…凌久っ…んっ…凌久…はぁっ…」
「やめっ…はっ…かなっ…んぅっ!」
「はぁっ…凌久…」
「んっ…~~~っ!」
ヤバいヤバい!
ドンドンと胸を叩き、押す
ヤバいって!
お前の初恋は、俺の初恋でもあるの!
何でもない、ただの友達じゃないの!
初恋の男の…そんな顔の…
こんなキス
ヤバいから!
「~~~~~っ!」
「…はぁっ…チュッ…」
ようやく離してくれた…
このっ…!
「…そんな顔すんな…またしたくなる」
「~~っ!」
ぽすっと、俺の頭を押して、胸に付ける
「~っ離せ…!」
「いいの?今離して、お前の顔見たら、確実に襲っちゃうけど」
「~っ離すな!」
「そうだな。悪かった。一応キスはするつもりなかったんだけどなぁ…夢ん中だと思ってたら、現実にしちゃってたんだから…もう続けちゃうよなぁ」
なんで、そんな冷静な訳?
俺達、幼馴染みみたいなもんだぞ?
夢だと思って、現実でしてたら、もっと焦んない?
「事故だったけど……ほんとに好きな人とのキス…すげぇ気持ち良かった」
「………え?」
「俺、りっくんと同じ位、好きな人に出会えてないからさ。今でも、俺の中の1番、りっくんだから」
「……そっ…それなら、こんな形でキスしちゃダメだろが!!」
冗談とか
ふざけてとか
寝惚けてとかじゃなく
好きならしちゃダメだろが
「ふっ…お前さ、自分が信じられない位優しい奴だって、気付いてないだろ」
「…俺は、そんなんじゃない」
「こんなに優しい凌久…傷つける奴が、優しいだなんて思えない」
「傷つけられた訳じゃない…と、言うか…傷つくの分かってても、好きになるの止められなかった」
「ああ…障害があればある程、燃え上がる的な?」
そう…だったのかな
俺は…あんな事知ってんのに好きな自分に酔ってたのかな?
俺にしか許してもらえないって思ってる悠稀に、酔ってたのかな?
暁の事聞かなくても
ここまで好きになってた?
この…面倒で難しい状況に
酔ってるだけじゃなかったか?
「…~っ…分かんなっ……もっ…分かんないっ……せっかく…スッキリして…分かったと思ったのに……もっ…~っ初めからっ…分かんないっ…」
俺が…
俺を…
分からない
悠稀の事…好きだよ
けど…
付加されてるものが多すぎて
今までマイナスだと思ってたものが
実はプラスだったのか?
俺は…
暁の事で背徳感を感じながらも
必死に俺を愛そうとする悠稀が好きなの?
暁の事がなかったら……
ただ、普通に俺を好きな悠稀を…
俺は、ちゃんと愛せた?
「俺の事好きになってくれたらいいのになぁ…」
「ならないっ…」
「ひっ…でぇな。俺…一応、叶わぬ恋を告った、憐れな男だぞ?」
「叶った…からって……憐れじゃないなんてっ…分かんねぇよっ…」
「うわぁ…嫌み?それ、俺に対する嫌み?叶った勝者が何言ってんだか」
勝者?
勝者だった事なんて…1度もない
だって最初から…
あり得ない事も全部許してしまう位に
俺の方が好きなんだから
「……もっ…」
ダメかも…
「ん?何?」
「……疲…れたっ…」
敗者が…余裕ぶって…
ばっかみたい……
「……この状況でそれは…俺にとって、美味し過ぎる言葉だって分かって言ってんの?」
「……知らないっ…もっ…何でもいいっ…」
「それは…肯定って捉えるけど?いいの?」
「……好きにっ…すればいいだろ…」
涙で滲んでよく見えない景色
別に…見たくもない
見たいものなんてない
ああ…そうか
こんななのかな
今…
ガラス玉になってるのかな
俺の目…
「…んっ……かなっ…はっ…んっ…」
「何?」
「…俺の目……どんなん?」
「あ?どんなんって……涙でエライ事になってんぞ?」
そうじゃねぇよ馬鹿
けど、今は…馬鹿な事言われんの
なんか…嬉しい
「……そっ…馬鹿だな?お前…」
「は?!なんで今、馬鹿って言われなきゃなんない訳?!」
「今じゃなくて…ずっと思ってたよ」
「馬鹿だって?…凌久と同じ大学入る頭脳持ち合わせてるぞ?!」
「ふっ…そうじゃねぇよ…馬鹿…」
「馬鹿って…そんな顔して言う事もあんのな?」
いちいち言葉に出すんじゃねぇよ
恋人でもねぇのに、そんな顔見せんなよ
でも…もう…
どうでもいいや
何でもいい
頭…空っぽにしたい
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