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自分の体

コンコン 「失礼します。楠さん」 ビクッ! 男の声の楠は… あまり聞きたくない 「体拭いてきますね」 体… 拭かれたくない ぶんぶんと首を振る 「背中だけ拭いて、タオル置いて行きますけど、背中も拭かない方がいいですか?」 コクンと頷く 「分かりました。じゃあ、タオル置いて行きますね?」 「…っ…っ…」 すみません 「いえ、後で取りに来ますね」 きっと… 凄く困った患者なのに 可哀想な奴だから 皆優しくしてくれるんだろな 病衣の紐をほどいて、前を開ける …………え? え? 何…これ… あれから5日 とっくに薄くなってると思ってた りくは りくではなくて、その周りの歯形に沿って 益々赤みを帯びている 他にも… 胸も腹も腰も 気付くと、両腕も ……え? スマホを取って、自分の体を撮影する 首も、肩も、背中も 下も脱ぐと 「っ!」 両脚にも… 「~~~っ!」 キスマーク付けられた記憶 全然ない いつの間にこんなに… 全身… タオルであちこち擦って見るが… 取れる訳もなく 諦めて、また病衣を着る きっと… 見えてんだろな 皆にも コンコン 「失礼します。タオル持ってきますね?」 コクン 男に囲われた 可哀想な奴… そう思ってんのかな スマホを手に検索する 結城の名前でも、俺の名前でも 何にも出てこない 警察に捕まってすぐ 結城の親が何とかしたのかな 不幸中の幸い 俺の両親も、俺も悠稀も その方が助かる 結城が罪になろうと、なるまいと どうでもいい あの時間を失くす事が出来ないのなら あいつの親が金を出そうが 服役しようが どうでもいい 今までも同じ様な事 揉み消してきたんだろ? また 普通に暮らしてくんだろ? どうでもいい ただ、もう あいつと関わりたくない そっとしておいて欲しい コンコン 「お昼ご飯です」 食べたくない… けど、食べなきゃ体力回復しない 「起きてからでも、大丈夫ですよ?」 そうは言われたが 胃だってリハビリしないと 腹12分目まで食べたつもりなのに 半分しか減ってない こんなんじゃ足りないのに 検温が終わると 「お昼からは、耳鼻科の受診と、リハビリと、臨床心理士さんが来てくれます」 昼から予定詰め過ぎじゃね? 看護師さんが出てくと すぐに耳鼻科の先生が来た 「楠さん、あ~って言ってる感じで口開けて下さい」 あ~って言ってるつもりです 「はい、いいですよ。大丈夫。安静にしてれば、徐々に声出る様になりますよ 良かった 「その代わり、無理に出そうとしたり負担をかけると、治るのが遅くなるので、気をつけて下さいね?」 コクン コンコン 「失礼しま~す。リハビリの…あ、診察中でしたか」 「いえ、もう終わりましたので、どうぞ」 こうなっちゃうよな 全部午後だもん 「こんにちは。リハビリの斉木(さいき)です。よろしくお願いします」 よろしくお願いします ペコリ 斉木さんは、30代位の 元気な男のリハビリの先生だ すぐに歩く練習をするのかと思ったら ベッドで横になったまま 腕やら脚やら どの位力が入るのか確認され マッサージされ 早く歩きたい 「よ~し!じゃあ、ベッドの横に足を下ろしましょう」 足を下ろす ついに歩ける! 「眩暈しませんか?」 コクン 声治るまでに 今度は首の使い過ぎになるんじゃ… 「じゃあ、このまま足踏みしよう」 足踏み?! 「1、2、3、4…」 早く歩く練習させてよ って思ったけど 足踏みだけなのに なんか、じんわり筋肉痛みたいになってる どんどけ?! 「疲れてないかい?僕に掴まって立てそうかな?」 コクン 立てるよ だって、1日何回かは歩いてたんだから 「じゃあ、行くよ~?ゆっくり~」 ……え? 「よ~し、手離すよ?」 立てるけど 立っていれるけど 「じゃあ、1回座ろう。ゆっくり~」 座れるけど 「よ~し。一休み。大丈夫?」 大丈夫だけど 俺の体なのに 俺の体じゃないみたいだ ただ、立って座っただけなのに 凄く疲れて… じいちゃんみたいだ 「もう1回、頑張れそう?」 コクン もう1回立って座ったら もう、すっかり疲れてて 「はい、お疲れ様~。後は、ゆっくり休んで下さい」 斉木さんが、簡単に俺の体を、グルンと横にしてくれる 「?…大丈夫かい?調子悪い?」 調子悪い訳じゃないけど… 「凌久の腹筋凄く綺麗だもん!腹筋だけじゃなくて、ちゃんと鍛えてる人の体で綺麗だもん!」 あ… ヤバっ… 余計な事思い出しちゃった 「…楠君?大丈夫?」 大丈夫じゃない… 全然大丈夫じゃない 悠稀に… 嫌われる もう溢れそうで 両腕で顔を隠す 「…大丈夫だよ?何日か、筋肉がサボってたのと、薬の影響だから。君は若いし、元々がいい体してるんだから、あっという間に元通りだ」 ほんとに? 元通りになる? 「大丈夫。みるみる回復して、あっという間に俺の筋力超しちゃうから」 気を遣ってくれてんだ 顔を隠したまま コクコクと頷く 「明日もまた来るね。お疲れ様」 そう言って、斉木さんは、出て行ってくれた しばらくして泣き止み 改めて、腕や脚を見る まさか… 歩けないだなんて なんか… 立った感覚が久しぶりで 俺…歩いてなかった? 記憶がほとんどなくて分からない コンコン 「凌久、どう?」 「お、起きてたんだな?」 父さん、母さん どこまで知ってて、どう思ってんだろう ホワイトボードに 『ご飯、朝も昼も半分食べた』 と、書くと 「そう。病院食美味しい?」 「父さんは、病院食じゃ味気なかったなぁ」 『けっこう おいしい』 「あら、良かったわね」 「へぇ~?昔とじゃ違うのかな?」 2人共、普通にしてるけど 父さん、仕事は? 母さんも、父さんの仕事手伝ってんのに 『オレの家に泊まってるの?』 「2人して、ホテルに泊まってるわよ」 「凌久は綺麗にしてるとは思ったけど、親に見られたくない物、見付けても困るしな」 父さんが笑ってる けど、家行ったよな? 良かった 見付けられたくない物 ちゃんと仕舞っておいて シャレになんねぇ 『さっき、リハビリで立つ練習した』 「そう。すぐに歩ける様になるわね?」 「耳鼻科の先生には診てもらったのか?」 『安静にしてれば、徐々に治るって』 「そうか。良かったな」 「無理に声出しちゃダメよ?」 先生と同じ事言ってる コクンと頷く 母さんはいいとして、父さん、仕事大丈夫なのか? 警察の人、失踪届けって言ってた 何日か前から仕事休んでたのかもしれない 『父さん、仕事あるから帰っていいよ』 「そうだな…帰んなきゃなんないよなぁ…」 「毎日、私が報告してあげるから」 『オレも、連絡するよ』 「そうか。ごめんな?こんな時にも、仕事仕事って」 父さん… 『父さんが、お金持ってるから、いいとこ住めてる』 「ははっ…そうか。じゃあ、頑張らなきゃな。凌久…」 ふわっと父さんが、ほんとに優しく抱き締めてくる 父さんに抱き締められるなんて、何歳以来だろ? 「怖くないか?」 コクン 「良かった…早く見付けてやれなくて、ごめんな?」 ぶんぶん 心配かけてごめん 「しばらく、ゆっくりしような?」 コクン 「凌久、お母さんもいい?」 父さんが離れる 代わりに、母さんが抱き締めてくる そっか 父さんも母さんも 俺が、こういうの怖いかと思って 出来なかったんだ 「よく、戻って来てくれたわね?お帰り、凌久」 ただいま、母さん 母さんも離れると 「あ~~~…帰りたくないなぁ…」 父さんが駄々をこね始め 「分かるけど、いい加減戻んないと、あなた1週間位寝ないで仕事しなきゃなんないわよ?」 「…分かってる…」 しゅんとしてる 『父さん、頑張って!』 「…うん。よし!頑張るか!じゃあな、凌久」 「お母さんは、また明日も来るわね?」 「いいなぁ…やっぱ俺も…」 「いい加減にしてよ…」 母さんに、説教されながら2人して出て行った 良かった 報道なんてされてたら 父さん、仕事行けなくなってたかも しばらくすると コンコン 「失礼します。こんにちは。臨床心理士の深雪(みゆき) 琉生(るい)です」 こんにちは ペコリ ほんとに、午後から忙しいぞ 「僕は、医者と違って、薬を出したり、治療したりって仕事とは少し違う。この病院で働いてる人も含めて、皆の愚痴を聞く係みたいなものだよ」 愚痴を聞く係… 大変そう… 40代位? 顔から優しさが滲み出てる 「僕は医者じゃないから、深雪さんか、琉生さんって呼んでね?君は?楠君と凌久君、どっちがいい?」 ホワイトボードに書く 『りく』 「分かった。凌久君、早速だけど、愚痴でも、悩みでも何かないかい?」 愚痴…悩み… 悩みなんかあり過ぎて 何を言えばいいんだか 「何でもいいよ?皆に凌久君って呼んでもらいたいでもいいし」 コクコク 「あ、呼んでもらいたい?」 コクン 「皆喜ぶよ~。凌久みたいに若い子が入院してるってだけで、嬉しいんだから。皆優しいだろ?」 コクン 「おっきな声じゃ言えないけど、じいさん、ばあさんばっかりだからさ、10代の子なんて入ったら、かわいくて仕方ないんだよ」 俺が、可哀想な奴だからじゃなかったのか 『オレ、わがままばかり言って、困らせてる』 「そうなの?どんな?」 『クスリ、のまない』 「薬が嫌いなの?僕もだよ?」 「ふっ…」 おじさんが、僕もだよって… 「あ、今笑っただろ!」 ぶんぶんと首を振る 「大人だって、苦手な物あるんだぞ?」 もう、いい大人なのに子供みたい 『クスリのむの 怖い』 「そっか。じゃあ、無理しなくていいよ」 え~?! 簡単! それじゃ、病院として困るんじゃないの?! 『皆、困ってる』 「でも、凌久君が無理する事ないよ」 そうなの? そういうもんなの? ヴ~ ヴ~ 「あ、ちょっとごめんね?はい、もしもし…はい…はい……ああ~…いや、いいですよ。ええ…じゃあ、今行きますね?…いえいえ…はい」 ピッ 「凌久君、話の途中でごめんね?ちょっと、急ぎの用事が1件。また後で来てもいい?」 コクン 琉生さんは、バタバタと騒がしく病室を出て行った 確かに、あんな先生居ない しばらくすると コンコン え? もう戻って来たの? 「凌久」 悠稀! 「来ちゃった」 うん 「調子どう?」 ホワイトボードに書いて ご飯と、リハビリと、耳鼻科の事を伝える 「そっか。凌久、あの後、朝まで眠れた?寝息が聞こえたから、俺電話切っちゃったんだけど」 コクン 「そっか。良かった」 『悠稀のリク聞けて嬉しかった』 「うん。俺も早く、凌久の悠稀聞きたい」 ? あ…首元…見てる 『ごめん』 「凌久が、謝らなきゃならない事なんて1個もないよ?」 1個もどころか… 『いっぱいあるんだ ごめん』 「凌久……っ」 抱き締めたいんだ 悠稀の腕を引っ張り、抱き締める 「っ…凌久…誰か来るかも…」 コクン 「ちょっとだけなら…いいかな…」 コクン 「~~~っ!…凌久っ!」 ぎゅ~~~っ!と悠稀が抱き締めてくる 俺も怖かったけど 何の連絡もなく居なくなってしまって どれだけ不安だっただろう 朝、ちゃんと確認したら 物凄い数 悠稀から連絡が来ていた 頭や背中を撫でては抱き締めて ほんとに… 心配させて 今もまだ、心配させてる しばらくして離れると 「良かった…ほんとに凌久だ」 『ほんとにって、何だよ?』 「何度も何度も、夢見たんだ」 え? 「凌久が普通に居て、抱き締める事が出来て、凄く怖い夢見てたんだって話して。夢で良かったって安心するんだけど、その後目覚めちゃうんだ……~っそっちが…夢でっ……現実では凌久居ないままでっ……~~っ何度も…見たからっ…どっちが夢なのかっ…分かんなくなったりしてっ…」 ああ… 俺と一緒だ だから悠稀は、夢じゃないよって 言ってくれたんだ 『オレも、何回も夢見て、分かんなくなった』 「うんっ…」 『もしかして、今もって思う』 「うんっ…違うよね?夢じゃないよね?」 『だと、いいな』 「~~~っ…夢じゃないよっ…凌久っ…帰って来たのがっ…現実でしょっ?」 『そうなのかな』 「っそうだよ…」 良かったって思った事は全部夢だったから 『悠稀の声、録音したい』 「うん、いいよ。何言ったらいいかな?」 『声聞ければ何でもいい』 「えっと……あ、もう撮ってるの?」 コクン 「あれ?待って、普通に動画?ちょっとそれは…心の準備が…」 「ふっ…」 「だって……何回も見られるなら、もっとちゃんとした服とか…髪もちゃんとしてくれば良かった…」 「ふっ…っ…っ…っ…」 イケメンが何言ってんだか 何着たって着なくたって イケメンだろが 「笑ってる!…ちょっと1回ストップ!もっと、ちゃんとしたやつにするから!もっかい最初から、やり直し!」 「……っ」 やだ 「やだじゃない!ストップ!止めて!」 可愛い しょうがないので止めてあげると コンコン 「ただいま~。お待たせ…あっ!失礼しました」 「こんにちは。水無瀬です。凌久の…高校の時からの同級生で……友達で…」 恋人です とは言えない 「あ、そうなんだ。僕は、臨床心理士の深雪 琉生。凌久君、友達来てくれて良かったね?」 コクン 最高の彼氏なんで、最高です 「水無瀬君と、同じクラスだったの?」 『3年の時 大学も同じ』 「へぇ~?いいな。2人共モテるでしょ」 『悠稀は』 「凌久はモテます」 は?! 「へぇ~?やっぱな~」 違う! ぶんぶんと首を振って 『モテるのは悠稀!』 と書くと 「ふっ…2人共モテるって事でしょ?」 「共じゃないです!」 コクコク 「いいなぁ~…モテる学生生活楽しいだろなぁ」 聞いてない… 悠稀と視線が合って笑う 「凌久は気付いてないだけだよ」 「っ……っ…っ……っ…っ!」 それは、こっちのセリフだ! 「…っ……っ………っ……っ……っ……っ……っ…?」 バスケ部の水無瀬君が何言ってんの? 「あっ!また言った!もうバスケ部じゃないんだから、言わないでってば!馬鹿にされてるみたいで嫌なんだから!」 「ふっ…」 「へぇ~?バスケ部かぁ。凌久君は?部活やってたの?」 『中学までは野球部』 「おお~…そりゃ2人共、いい体してる訳だ」 いい体… あ… 「凌久の腹筋凄く綺麗だもん!腹筋だけじゃなくて、ちゃんと鍛えてる人の体で綺麗だもん!」 ヤバいヤバい 思い出すな 「俺は、部活引退してから何もしてないんですけど、凌久は筋トレ続けてるから、ちゃんと筋肉付いて…て……凌久?!」 「…~っ……っ…っ…っ…」 ごめん…ちょっと… 「何?どっか痛い?看護師さん呼ぶ?」 ぶんぶんと首を振る どうしよう 全然泣き止める自信ない 「水無瀬君、あとはプロが何とかしておくので、今日は帰ろっか」 「あ……その方が…いいんですよね?」 「うん…やっぱりね、急に色んな事が起きると、人って、全部一気には受け入れられないから、たまに溢れちゃうんだ。それを、調整してくのが僕達の仕事だから。その辺はお任せを」 「……はい。宜しくお願いします。凌久、また明日来るね?」 コクン ごめん、悠稀 せっかく楽しく話してくれてたのに 具体的な事知らなくたって 知らないキスマーク付けてたら そりゃ、そういう事してたって思う 気になるのに 聞かないで 一生懸命笑顔で楽しく話してくれてたのに 「さて、凌久君。水無瀬君は、恋人かい?」 「…っ?!」 「あ、正解?ごめんね。あまり知られたくないかもしれないけど、君にとって、とても大切な人の事、ちゃんと知っておきたいんだ」 どうしよう バレた 病院の人皆にバレる? そしたら、父さんと母さんにもバレて 「そんな顔しないでくれ。僕の仕事は、君に安心してもらう手助けであって、君を不安にさせる事じゃない。これでも僕は、人の言動を見て心理を読み取るプロなんでね?その代わり、プロとして、秘密は絶対に守るよ」 優しくて真剣な目… 『病院の人にも?』 「水無瀬君が、凌久君の友達で大丈夫なら。水無瀬君が、凌久君の恋人である必要が生じない限りは、僕は誰にも言わないよ」 『必要が生じるって?』 「分からない。けど、友達として会いに来る。それでいいのなら、あえて僕から誰かに言う事はないよ?」 よく分からないけど 『友達として会いに来るでいいです』 「そっか。さっき泣いちゃったのは、僕が部活の話した事に関係ある?」 『立って座るのも1人で出来なくなったから』 「あ~~~…そっか。そうだよな?それはショックだよな?」 コクン 「徐々に、ちゃんと歩いて元通り動ける様になるけど…今の凌久君にとって、それは未知だもんな?」 コクン そう 出来る様になるって言われても 予定通りかどうかなんて分からないから 「そうだ!リハビリの先生に聞いてさ、だいたいの予定表作ろうか」 予定表… 「何日位で1人で立てるとか、何日位で歩き出せるって。僕は、そっちの専門じゃないから、どこまで予定立てれるか分からないけど、大まかにでも、予定分かると少しは安心しない?」 コクコク 「よ~し!じゃあ、予定表作成ね。あとは?何か気になる事ない?」 気になる事… いっぱいあるはずだけど 何だろう 気になる事……… あっ! 「お?何かあったかい?」 あった…けど… 凄く気になるけど… ちょっと聞きづらい… 「今日じゃなくてもいいよ?」 でも… もしもまだだったら 早い方がいいだろうから… 『オレがされた事知ってますか?』 「僕が知ってるのは、君が失踪してた事。ある人に監禁されてた事。病院に運ばれて来た時、着物の様な物1枚だった事。全身に…今薄くなってきた物が付いてた事。それを見て、医師が調べたら、誰かの精液が残ってた事。性病の検査をした事…」 えっ?! 「ん?何か気になる事あった?」 『性病の検査 結果は?』 「もちろん大丈夫だったよ。何かあるのに、隠したりしない」 「っはぁ~…」 良かった… あんなに… あんなに沢山されたから 「そうだよね?心配だったよね?あと、気になる事は?」 『あと、オレの事で知ってる事』 「あまりにも体が衰弱してて、意識朦朧としてるのかと思ったら、そうじゃなくて、アルコールと薬の成分が検出された事」 あ… それも分かってるんだ 「そんな事されてるのに、体のどこにも暴力を振るわれた後がなくて、体も綺麗にされてた事…こんなもんかな?」 『教えてくれて ありがとう』 「君を連れてった人はまだ事情聴取とかなのか…そっちからの情報は何もないから、皆知ってる事は、こんなもんだよ」 そっか 結城からの情報がないんじゃ 俺が言わない限り分からないんだ 『あいつ、何か分からないけどクスリやってた』 「そっか」 『オレは酒もクスリも初めてだから』 「うん」 『ほんの少しだけって言ってたけど』 「そうなんだ」 『でも、完全におかしくなってた』 「そっか」 『あいつ、人殺してると思う』 「…そうなの?」 『皆、同じ事するって言ってた』 「そっか」 『オレも、気に入らなかったら殺すつもりだった』 「それは…怖かったね」 「…っ!」 『怖かった スマホなくて 家電繋がらなくて』 「そうだったんだ」 『そこに人居るのに 誰も助けてくれなかった』 「…っ…そっか…それは…相当怖かったね?」 「…~~~っ!……っ…~~~っ…」 怖かった 怖かった 逃げれない 繋がらない 助けてくれない 殺される 殺される 「凌久君…よく、頑張ったね?頑張って生きて、偉かったね?」 「~っ…っっ…」 『汚ない事 いっぱいした』 「そんな事ない。生きる為に必死だったんだ」 『汚らわしくて ケイベツされる事いっぱい』 「そんな事思わない。途中でこの世界から消えなかっただけで凄いよ」 『ほんとは はるきに合わせる顔ない』 「~~~っ!…っ…っ…」 殺されたくないから 抵抗もしないで あいつに好きな様にされて 「…っっ…~~~っ…っ…」 悠稀が沢山愛してくれた体 中まで全部 あいつにくれてやったんだ 「~~~っ!…~~~っ!…~~~~~っ!」 琉生さんが うん、うんって ずっと背中さすってくれてて 散々泣いて いつの間にか 横になって寝てたらしい

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