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手にキス
「悠稀…君っ……」
あ…また…
泣いてんの?
「女の子ならっ…いいよ?……なんでっ…汚ない男なんかとっ……なんでっ…」
悪かったな
汚なくて
「綺麗なままっ…居て欲しくてっ……近付かなかったのにっ……俺はっ…男はっ…汚ないからっ……」
なんで…そんなに
汚ない汚ない言うんだ?
さすがに小中学生で人殺してないだろ
また…
あいつの夢…
ここで本当なのかどうか考えんのはやめた
いくら考えても
誰も正解を知らない
………あれ?
そう言えば俺、朝立ちしてない
いつから…
ずっと?
待って…
入院中もずっと…
見られて困る感じになってなかった
え?
いやいや…
だから、考えちゃダメなんだって
けど……
考えちゃうだろ!
全然…そんな気になってないけど
触ったら少しは反応する?
ゆるゆると、自分のものを扱いてみる
いや、そりゃ
全然ムラムラしてないのにさ
反応しなくても、おかしくないけど
悠稀を思い出せ
悠稀に…されてる時を…
悠稀に…
キスされてて感じなかった
……ダメだ
思考がマイナスになってく
どんどん焦って不安になって
こんな時に試すもんじゃない
「うしっ!今日も筋トレ頑張るか!」
まずは日常生活、余裕にならなきゃ
出来れば、来週辺りから大学にも行きたい
ご飯、掃除、洗濯
昨日より疲れないぞ
風呂掃除…は、疲れた
一休み
ピンポ~ン
ん?
誰だ?
悠稀は昼からって…
「悠稀!」
「凌久、来ちゃった」
「昼からって言ってなかった?」
「うん。暁がね、晩ごはんは間宮君と食べて来るって言うから、時間余った」
「そっか。どうぞ」
「お邪魔します」
中に入ると、キョロキョロとしている
「凌久…掃除したの?」
「おお」
「綺麗好き。おばさん居なくなったし、手伝おうと思ったのに」
「ありがと。もう自分で大丈夫だ」
紅茶を淹れて、テーブルの前に座ると
悠稀も隣に座った
「ねぇ、凌久。今日俺さ、バイトもないでしょ?今のうちにして欲しい事あったら、何でも言って?」
「して欲しい事?特にねぇよ」
「え~?ゴミ、溜まってるとか、お風呂掃除して欲しいとかでもいいよ?」
「ゴミは、昨日母さん出してったし、風呂はさっき掃除した」
「なんだ…」
ちょっとふて腐れてる?
「じゃあ、お昼ご飯作って」
「あ…うん!…凌久、夜まで…ずっと居ても…いい?」
「ふっ…何遠慮してんの?そんなん、嬉しいに決まってんだろ?」
「……うんっ!」
少し話して紅茶を飲み終えると
悠稀は、冷蔵庫の中を見て、何かを作り出した
悠稀の貴重な料理してる姿
近くに行って見たいのに
眠気が…
寝たくないのに…
寝てしまう…
寝たくないのに……
また…眠ってた
「っ!…~~~っ!」
やめろ!離せ!触んな!
「楠……綺麗だね?…胸で、もっかいイッてごらん?」
やだ!もうやだ!イキたくない!
「楠…ねぇ…綺麗だよ?もっと…イッて…泣いてごらん?」
やだ…
もうイキたくない
イキたくない
助けて
感じたくない
何も…感じたくない…
「…凌久…凌久…」
「………悠稀…悪い、寝てた」
「怖い夢…見た?」
「あ…いや……ははっ…夢見ると泣くシステムでも、出来上がったのかもな?」
起き上がって、ティッシュで涙を拭いて、鼻をかむ
「凌久…夢見る度泣いてるの?泣く様な夢しか…見ないの?」
「そんな事ないよ?」
「おでことか…頬なら…キスしていい?」
「いいけど、もう大丈夫だよ?」
「顔は…怖い?」
「そんな事ない。いいよ」
ベッドに腰かけた悠稀が、額の髪ごとキスしてくる
「怖くない?」
「怖くない」
頬に…瞼に…
キスをして…
「口だけが…怖いの?」
不安そうな顔で聞いてくる
「怖いってか……悠稀…キス…凄く好きだったから……それで…やっぱ気持ち悪いとかだったら……ちょっと今の俺には…なかなかのショックかもしんないから…」
「なんだ…そういう怖いなんだ…良かった。凌久が、いいって思ってからにしよ?」
いいって思ってから…
どの位かかるかな
悠稀で…
感じる様になるまで…
そういう気持ちになるまで…
悠稀とこんな事してんのに…
全然…
「…~~~っ…」
「凌久?」
考えない方がいいのは分かってる
けど!
しょうがないじゃん!
考えない訳ないじゃん!
「悠稀っ…俺っ…!」
「ん…何?」
「悠稀とっ…こんな事しててもっ……昨日…悠稀にキスされててもっ……全然っ…そんな気持ちにならないんだっ…」
「凌久…」
「気付いたら…朝立ちも…ずっとしてない…ずっと入院してて、そんな事してないのに…悠稀と、こんな事してんのにっ……俺っ…きっと…おかしくっ…」
「凌久…」
ふわっと悠稀が抱き締めてくれる
「大丈夫だよ、凌久。そんなの…今悩む事じゃないよ」
「…なっ…何で?!悩む事だろ?!」
「今は、凌久が元気で居てくれたら充分。こうして抱き締められたら…時々キス出来たら充分」
「俺はヤダ!俺は……最後に…感じたのがっ…!悠稀じゃないなんて…最後にイカされたのが…悠稀じゃないままなんてっ…ヤなんだ!!」
悠稀が、ぎゅ~~~っと抱き締めてくる
「お願い…凌久。これでも俺…けっこう頑張って我慢してるんだ。凌久に…怖い事したくないんだ。そういう事…~~っ…言わないでっ…」
「……ごめんっ…自分の事しか考えてない発言だった……~っ…悠稀が…優しくしてくれてんのっ…分かってる……ごめんっ…」
悠稀に
全部してもらいたい
悠稀で沢山感じたい
全部してもらって
何も感じないのが怖い
どうしたらいいのか
自分でも分からない
「凌久…お昼ごはん、食べよ?」
「…ん」
大声で責めながら
犯す様に
ヤりたいよな?
許せないよな?
必死に抑えてんだ
俺が怖がらない様に
「悠稀のチャーハン旨っ。ショウガ?入ってんの?」
「うん。マヨネーズで炒めてね。母さんに教えてもらった」
「へぇ~?今度真似して作ろ」
「そのうち、俺の家と凌久の家の料理が、同じになってくね?」
「ふっ…そうだな?」
悠稀のチャーハンは、ほんとに美味しくて
美味しい物食うと
やっぱ人って笑うんだ
「凌久は、休んでてよ」
「俺は、今もリハビリ中なんだぞ?甘やかさせるな」
「分かった…」
そう言ったのに
食器を洗ってる俺の傍から離れようとしない
傍に居たいのか?
「後ろから…抱き締めたら怖い?」
「怖くないと思うけど?」
「じゃあ…凌久っ…」
後ろから抱き締めて
首の後ろで、顔をグリグリと擦り付けてる
マーキングしてんの?
「ふっ…ワンコみてぇ」
「ワンコみたいに…匂い嗅んだら…俺のものって分かればいいのに…」
「確かに…それは便利だな」
「ちゃんと…ご飯食べさせてもらえなかった?」
胃や、下っ腹の辺りを触りながら聞いてくる
「あんまり覚えてない。多分1日1食は食べてたんじゃないかと思うけど…ほんとに記憶…ほとんどないし…夢も混ざってそう…」
「………っ…そう…」
色々聞きたい気持ちと
聞きたくない気持ち
葛藤してんだろな
聞かれたら全部答える
けど
聞かない方が…いいと思うぞ
「凌久の…同じバイトの人……だもんね?」
えっ…
それ…
知ってんだ
「ん…そう」
名前…知ってる?
だとしたら…
覚えてる?
「けっこう…仲……ごめん…何でもない…」
「…ん」
仲は良くないよ
けど
そいつの事は
あまり聞かない方がいいよ
「終わりっと…」
「…………」
動かなくなってしまった
「悠稀…お願いがあるんだけど…」
「ん…」
「買い物…行きたい」
「買い物?」
ようやく、くっ付けてた顔を上げた
「ん。俺さ、入院中ず~~~っと、カップラーメン食いたかったの」
「カップラーメン…」
「そ。夜中、お湯入れに行けないし、退院して来たら、母さんすげえ沢山料理作ってるし、でも、やっぱ食いたい!」
「ふっ…いいよ。行こう?」
悠稀と、近くのスーパーへと買い物に行く
「せっかくだから、お菓子も買ってこっと」
「凌久、お菓子好きだよね?いつも必ず何かある」
「おお。はぁ~…久しぶりに自由に買える」
ポイポイと、色んな種類のお菓子とカップラーメンをカゴに入れる
「そんなに買うの?!」
「悪くなんないし、いいじゃん?」
「おばさんが作ってった料理も、ちゃんと食べなきゃダメだよ?」
「分かってる……って……」
え?
今……
通り過ぎた人…
「凌久?何処…」
向こう行った…
まさか…
まさか…
嘘だ…
だって入院してるって…
確かめなきゃ!
「凌久!」
ぐいっと腕を掴まれる
「なっ…?!離せ!」
「急にどうしたの?!何処行くの?!」
「あいつが…!」
「あいつ?」
「いいから、離せ!」
「凌久!」
行ってしまう!
確かめないと…
あいつだったら…
結城らしきそいつを通り越して
向かって来るのを見る
隣の人と笑いながら…
次は、その人がターゲットかもしれない
よく…見て…確かめて……
「あ……違う……」
違った…
良かった…
よく見ると、全然違う
何だろう…
遠くから見た時に
ほんの少し髪型が似てただろうか…
「凌久…大丈夫?」
「あっ…ごめん。大丈夫」
「もう…帰ろう?」
「……そうだな」
もしも結城を見付けたとして
俺は、どうするつもりだったんだろう?
悠稀が居るのに…
俺は
どうしようと思ったんだろう
家に帰り、荷物を置くと
「凌久…」
悠稀が抱き付いてきた
「悠稀?どうした?さっきは、驚かせて悪かった」
「凌久…ずっと…震えてるの気付いてる?」
「……え?」
自分の両手を
悠稀の背中の上で見ると
確かに震えてる
何で?
怖かった?
そうは…思わなかったけど…
「凌久…しばらく、こうしてよ?」
「……ん…ありがと」
悠稀に抱き付くと…
あったかくて…
自分の体が冷えてる事に気付いた
「はぁ~~~…安心する」
「うん…怖かった?」
「よく、分かんねぇ…自分では怖いとか思ってなかった…ただ…確めなきゃって思って…だからって…何したかったのかも、よく分かんねぇ」
「うん…分かんなくてもいいよ。どっか行く時は…一緒に行こ?」
「…はぁ…そうだなぁ……もっと簡単だと思ってたんだけど……なかなか難しいんだなぁ…」
あんな…少し似てる奴見付けただけで
悠稀の手、振り払って…
「手…振り払って悪かった」
「ううん…ちょっと…びっくりしたけど…」
「ん…かなり強く怒鳴った…ごめん」
「凌久があんな風になるなんて…凄く怖かったんだよ」
「……ごめんっ…悠稀の事怒鳴って…手振り払うなんて……頭おかしいな…~っごめん…」
「凌久…そんなの…全然いいよ。凌久が…それだけ怖がってたのに…俺で安心出来るの…嬉しい」
「ん…安心するっ……悠稀の声も匂いも…安心するっ…」
悠稀で安心出来る俺に…
安心する…
「凌久、向こう行って座ろ?」
「ん…」
手を繋いでベッドまで行って座る
「凌久…手…キスしていい?」
「ん…いいよ」
悠稀が、握ったままの俺の右手を持ち上げて
手の甲にキスをする
幸せそうな顔に
俺も幸せになる
「ふっ…指でこんなに感じるなんて…可愛いね?」
えっ?
悠稀が…
言ったんじゃない
「頑張って、いっぱい可愛いとこ、見せてごらん?今度は、こっちの指だね」
「ふぁあっ!……やっ……やめっ……んっ…!」
バッ!
勢い良く手を離す
「……え?」
か…感覚が…
あの…感覚が…
「凌久?怖かった?ごめん…」
悠稀…なのに…
大丈夫なのに…
あの…
感覚が…
「…あ…ごめん…違う……悠稀だから……大丈夫…」
大丈夫…
アレは…おかしかったんだ
今は…もう大丈夫なんだ
「凌久…大丈夫だよ?手繋ぐのは大丈夫。キスは苦手だね?少しずつ…怖くない事からしてこ?」
「こっ…怖くない……悠稀なんだから…全然……違うんだ……もう…大丈夫だから…」
右手を悠稀に差し出す
何びびってんだよ?
「凌久…手、繋いでよ?」
悠稀が、右手をさっきと同じように繋いでくる
「もう大丈夫だって…さっきの続き…してよ」
「だめ…凌久が怖がる事は…」
「怖くないから!…悠稀なんだから…怖い訳ないだろ!」
「凌久…」
悠稀が俺を抱き寄せてくる
「抱き締めるんじゃなくて…!」
「分かってる…でも、待って…少しの間…こうさせて?」
それは…
俺が
そうして欲しいって思ってるから
ぎゅ~~~っと悠稀を抱き締める
「~~っ!…ほんとにっ…違うんだっ…」
「うん…」
「悠稀の事…怖いなんて思ってないっ…」
「分かってる…怖かったら…こうやって抱き締めれないよ」
「嬉しいからっ…幸せだって思ったんだっ…ほんとにっ…ほとなんだっ…」
「うん…分かったよ。凌久…難しいね?一緒に…少しずつ考えてこ?」
「~~~っ!…ごめんっ…!……ごめん悠稀っ…!」
あの感覚が薄らぐ日は来るのか
忘れる日は来るのか
もしくは…
打ち勝てる日が来るのか
「…凌久…ちゃんと横になって寝よう?」
「……あ…俺、寝てた?ごめん…」
「ううん。寝ててもいいんだけど、このままだと疲れちゃうから。ちゃんと、一緒に横になって寝よ?」
それは…
悠稀が、辛いんじゃ…
「……俺と…一緒に寝たら、辛くなんない?」
「なるかもしれないけど…一緒に寝たいから」
俺は…
その方が嬉しいけど…
横になって、悠稀に抱き締めてもらうと
あっという間に、またウトウトしてきた
「凌久…」
「…ん」
「好きだよ…凌久…」
「……俺も…好き…」
「凌久…」
悠稀の凌久…
好きだから…
もっと…
呼んで欲しい
「……好きなんだぁ…」
何?
誰?
「だから…今度は俺が行くね?」
何?
何の話?
「楠…バイバイ…悠稀君は、ちゃんと幸せにするから」
え?
どういう事?
待って…
待って!
悠稀は…俺が…!
幸せに出来るの?楠が?
あ……
俺が?
……あ…夢…
悠稀の…匂い
大丈夫
夢だ
大丈夫
「……ん…凌久?起きたの?」
「ん…もう少し…寝てよう?」
「……凌久?」
「あっ…」
もう少し寝てよう?って言ったのに…
「凌久っ…また…夢見て泣いたの?」
「……な?どんだけだよ?って…」
「~っ…凌久っ……」
「泣くなよ…悠稀が泣くと…益々泣きたくなる」
「んっ…そっ…だよね?」
「ごめん…心配ばっか…迷惑ばっか…困らせてばっか…」
俺が見てないとこで
どれだけ泣いてるだろう
散々…暁の事で泣いてきたのにな…
「あっ…あのね?凌久…キス…してくれない?」
「え?」
「俺が…キスするんじゃなくてね?凌久が…キスするの…どうかな?」
「俺が……分かんないけど…気持ち悪いのは一緒だろうけど……確かに、されるよりいいかも…」
「凌久に…キスして欲しい…凌久のキス…好きだから…凌久に…んっ…はっ…んっ…凌久っ…好きっ…」
この…感じ…
「悠稀…俺も…好き…」
この…体中に…熱いものが駆け巡るみたいな…
「はぁっ…凌久っ…んっ!…はっ…好きっ…」
どうしようもない位の衝動を
その源になってる…熱いものを…
少しでも…
伝えたくて…
伝わる様に…
「凌久っ…~~~っ!…んっ!…~~~っ!」
ああ…
この顔…
悠稀のこの顔
もっと見たいな
もっともっと
悠稀を感じさせたい
「~~~~~っ!…んっ…凌久っ…~~~~っ!」
「はぁっ…悠稀…ありがと」
「はっ…はぁっ…凌久っ…凌久~っ…」
悠稀が、ぎゅ~~~っと、俺にしがみ付いてくる
「ん。気持ち良かった?」
「気持ち…良すぎたっ…」
「ん。悠稀…俺も……」
悠稀に…下半身を擦り寄せる
「っ!…えっ?」
悠稀が、驚いて俺の顔を見る
「悠稀とのキス…気持ち良くて…悠稀の気持ち良さそうな顔見てたら…ちゃんと勃った……ふっ…ありがと」
「~~~っ!…凌久っ…凌久っ…」
「ん…もっと…キスしていい?」
「うん…いっぱい…して?」
悠稀にされたら、どうなのか分からない
けど
悠稀とのキスで
気持ちいいって感じて
体も反応した
とてつもない安心感
見ろ
俺はまた
悠稀と気持ち良くなれてる
悠稀を気持ち良く出来てる
俺が…悠稀を幸せな気持ちにしてるんだ
「~~~っ……」
ガッシリと俺にしがみ付いた悠稀の頭を軽く押して、肩に預けてやる
「んっ…んっ…~~~~~~っ…」
相変わらず
すげぇキスで感じてくれんね?
余韻だけで、もっかいトんじゃいそう
「大丈夫?」
よしよしと頭を撫でてやると
徐々に体の力が抜けていく
「落ち着いた?」
「っ…うん…ちょっと…久しぶりに…刺激が強過ぎた…」
「そ?いつもと変わんないよ?」
「いっ…?!いつもは、もうちょっと…」
「もうちょっと?」
「…~っ…早く落ち着く」
嘘つけ
いつも、こんなんじゃん
「そういう事にしといたげるよ」
「………凌久」
「ん?」
「キス…気持ち良かった?」
「気持ち良かった」
「……俺とじゃ…なくて……」
「……え?」
今…それ、聞く?!
天国から地獄じゃん?
「悠稀には…何だって答えるよ?けど…今でいいの?」
「いい!だって…気になって気になって…どうせいつか、聞くもん!いつか聞くまで、ずっと気になってるの、やだもん!」
まあ…
一理あるけどさ
せっかく幸せ感じてる悠稀…
泣かせたくないんだけどな
「ちゃんと話すから…聞きたくなくなったら止めるから、言って?」
「…っ…分かった」
「俺…なんだか分かんないけど、クスリ飲まされてた」
「えっ?!」
「あと…毎日だったのかは分かんないけど、アルコールも」
「そっ…なんだっ…」
ん~…
限界か?
あの光景見たら…
悠稀…気絶しそう…
「大丈夫?続きは、また今度にする?」
「……聞く…また…今度も……いつ、聞いても…同じだから」
「……分かった」
ぎゅっと俺の服を掴んでくる
悠稀を抱き締める
少しでも…怖くない様に…
「そのクスリ飲むと…頭も体もおかしくなって…何されても、すぐイクんだ」
「っ!」
「当たり前だけど、あいつの事、そんな風に思った事ないし…そんなんでイク訳ないのに…勝手に…イクんだ。だから…気持ち良かったか?って聞かれたら難しい。俺の気持ちは…全然ない。悠稀とするみたいな…幸せな気持ちは、どこにもない。ただ…体は勝手に感じてイッてた」
「…………」
固まった
そりゃ固まるしかないか
何て言えばいいか
どう受け止めたらいいか分かんないよな
「もう1つ…」
「え?」
「凌久が…騒がれなくて、良かったけど……なんで…全然報道されないの?拉致、監禁、強姦…ヤバいクスリまでやってたら…大きな事件だよね?全く…時間が経っても報道されないよね?」
「それは…俺も、推測でしかないけど、結…っ」
ヤバっ…
「あいつん家、すっげぇ金持ちみたいで…まあ、話聞いてても、今までも大層な事やってきたのに、普通に暮らしてたんだろなぁ…と。あとは、警察の人に話した時聞いたけど、あいつ、訳分かんない事しか言わないうちに、クスリとアルコールの離脱症状で暴れ出して、入院したらしいから、向こうからも全然話聞けてないのもあんのかもな」
「……そう」
………で?
怒る?泣く?
「……そういうのって…ちゃんと裁いてもらえないのかな…」
「え?」
「お金…沢山出したら…また普通に暮らしていくのかな?」
「まあ…そうかもな」
「……死んで…欲しいね?」
「………え?」
今…
悠稀の…声だった?
死んで……え?
「悠稀?」
悠稀の体を離して、顔を見ると
怒った顔して…泣いてた
「もしもっ…万が一っ…凌久が忘れたりっ…許っ…許そうなんてっ…思う日が来てもっ……俺は絶対忘れないからっ…一生…許さない…」
馬鹿だな結城
大好きな悠稀君
一生許さないってよ…
けど…
悠稀にこんな顔させたのも
こんな事言わせたのも
おそらくお前だけだよって言ったら
頭イカれてるから
喜ぶんだろな…
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