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ツーショット
「ありがとうございました~」
ました~の後に、♪︎が付いてるな
「お先に失礼します」
「俺もお先に失礼しま~す」
更衣室に入り着替え出す
「幸せそうじゃねぇか」
「え?!あ…はい」
「彼氏君は順調か?」
「はい。もうすっかり声も出るし、家の中の事は自分で出来るようになりました」
「そりゃ良かったな」
すっかり声も出るし?
声出なかったんか
「八神さん、いつも巻き込んじゃって、すいません」
「お前らからの、盛大なお返しを期待している」
「何がいいですか?」
「ん~…何がいいかなぁ……」
実際、年下に奢られるのもなぁ…
何か…
「あ…」
「何ですか?何でもいいですよ?」
「マジで何でもいいの?」
「そんなに、高額な物は…ちょっと…」
「じゃなくてさ!お前ら2人のツーショットとかあったら欲しいんだけど」
「えっ?なっ…何でですか?」
リアルな奴らに、こういうのって失礼なのかなぁ
絶対あいつ喜ぶと思うんだけど
バイト先を出て歩きながら話してみる
「水無瀬さ、腐女子って聞いた事あるか?」
「ふじょし?…分かんないです」
「だよなぁ…いや、俺の妹、幸恋 ってんだけど、その腐女子ってやつなんだけど…その、面白おかしく言われてるみたいで嫌かもしんないけど…」
「?」
「その…男同士のな…恋愛が大好物なんだ」
「……はあ…?」
言ってる意味分かんねぇか
「えっと…だから、男同士の恋愛ものの漫画やら小説やら読んで、普通に生活してても、男同士が仲良くしてんのを見ると、幸せらしい」
「…俺と八神さんのツーショットじゃなくていいんですか?」
「いや、さすがに自分の兄ってのは……いや、あいつなら…お前、イケメンだしな……うん。彼氏君の写真勝手に見られるのも問題だしな……よし、俺とツーショット撮れ」
「そんなの、いくらでも撮ります」
う~ん…
何処で撮るか…
「あ!一応、彼氏君に許可を取れ。後から面倒な事になって、今度こそ当事者で巻き込まれんのは御免だ」
「八神さんなら問題ないと思うけど…」
「念のためだ。まあ、いい。撮った写真見せて、許可が出たら妹に送るとしよう」
「はあ…ありがとうございます」
「もう暗いからなぁ…お前ん家近いし、水無瀬ん家で暁に撮ってもらってもいいか?暁にも会いたいし」
「いいです!是非!」
すっかり懐かれたもんだな
暁から突然連絡がきた時は驚いた
水無瀬の彼氏君が、行方不明になり、家族も呼んで探してるが見付からず、警察に失踪届けを出した
水無瀬の様子が、だいぶ心配な感じらしく、見て欲しいとの事だった
水無瀬に連絡を取って会うと
もう何日寝てないんですか?って感じになっていた
探すなとも言えず
かと言って、暁と2人なのも心配だし
暁を置いてたら、安心して探す事も出来ないだろうとか考えて
何とか上手く話して、親を呼んだらどうだ?と言ったら
はっとした様に、すぐに電話し出した
彼氏君が、行方不明になった事をそのまま伝えてる
まあ…
彼氏じゃなくたって、高校ん時から仲良かったって言ってたから、おかしな話じゃないか
木曜の夜のバイト以降行方不明
金曜日に発覚、彼氏君の親に連絡するも分からず、一緒に探してから、バイトに行ったらしい
よく働けたもんだ
そして今日、何の連絡もなく、警察に失踪届けを出したとの事だ
そりゃバイトどころじゃない
誘拐?事故?
事故なら発見されるよな?
なんらかの事件?
バイトが終わると暁から連絡がきてた
母親が来てくれたけど、なるべく自分じゃなくて水無瀬の傍に居てもらいたい
俺の時間がある時に、家に居てもらえないかとの事だった
俺は、早々に家に帰り、日曜の朝早くに水無瀬家へと向かった
水無瀬は、憔悴しきってた
まだ、何の連絡もないんだ
母親は、暁から話を聞いてたみたいで、少し挨拶をして、話をすると
「悠稀、さっ…今日も頑張って探してみましょ?警察の人達も探してくれてるから、きっと見付かるわ。大丈夫」
「………うん」
「それじゃ、八神さん、すいませんが暁をよろしくお願いします。家の中の物、何食べても使ってもいいので」
「今日は、俺もバイト休みなんで、全然何時まででもオッケーっす。暁は任せて下さい」
初めて会った男に、暁を任せるって心配だろうに…
「暁、良かったわね~?仲良しなお兄さんが出来て」
「うん!」
信用しきってる
ま、この暁が信用してるならって思うか
母親が出てくと、暁は、しばらく玄関のドアを見たまま、立ちすくんでいた
なんだ?
寂しいのか?
「暁?寂しいのか?ハグするか?」
「……ちょっとだけ…いい?」
「おお」
マジか
冗談だったのに
ぎゅっと抱き付いてきた暁を抱き締める
なんか…前に言ってた事と関係あんだろな
「暁…母ちゃんも、兄ちゃんも、ちゃんと帰って来るぞ?」
「うん…分かってる」
だよな?
そんなん分かってても、こうなんだよな?
「…で?暁は、彼氏とどこまでいったんだ?」
「?…何処まで…この前の宿泊研修の話?」
「宿泊研修行ったのか?」
「うん…その話じゃないの?」
さっきより力が抜けて、俺の顔を見上げてくる
可愛い兄弟の弟め
「宿泊研修の話も聞きたいが、お前が彼氏と、もうエッチしたのか?って話」
「まだだよ。そういうタイミングない。宿泊研修の時は、間宮先に寝ちゃった」
「あ~…それは、暁とヤりたくなっちゃったんだろなぁ」
「やりたく?」
「好きな…男…と、一緒に同じ部屋に居たら、ムラムラすんだろ」
ってか、同じ部屋だったんか
「ムラムラ…」
「ん?」
暁が俺から離れる
「ムラムラって?どういうの?」
「えっ?ムラムラ?」
「うん」
「いや…だからさ…好きな奴は勿論、タイプの奴見付けたりしたら、ヤりてぇなぁ…って思うだろ?」
「やりてぇなぁ?」
「いや、だからさ、エッチしたいなぁ…って」
「エッチしたい…あの、どうしようもない不安の時じゃなくて?」
んな訳あるか!
どんなムラムラだよ!
「時じゃなくて」
「じゃあ…ない」
「ない?!エッチしてぇなぁ…ヤりてぇなぁ…って…スケベな気持ちになる事ねぇの?!」
「スケベな…さっき言ったみたいは状況以外で、セックスしたいなんて思った事ない」
セックスしたいなんて
なんか…
暁ん中では
セックスは、あんまりいいものじゃないんだな
「そっか。ま、人それぞれだから、いいんじゃね?」
「でも、間宮はそうなってたって事?俺、気付かなかった」
「それも気付いてるよ。まだ、暁とするタイミングじゃないと思ったんだろ?」
「たしかに…あの時は武藤も居たし…」
「だったら、尚更最初から、そんな事しようなんて思ってねぇよ。体は反応するだろうけど」
暁が、黙って俯いてる
「暁?」
「俺…分かんないから、もしも、そういうタイミング来た時も…分かんないかも。間宮が目の前で我慢しててもわ分かんないかも」
「それはそれで暁なんだから、いいと思うぞ?」
「?…どういう意味?」
「大抵の人が知ってる事とか、思う事、暁が知らなかったり、気付かないのなんて、暁を好きになるくらいの奴、分かりきってるだろ?それも含めて暁が好きなんだからさ。無理にお前を変えてく必要ないと思うぞ?」
少しずつ自分で変わってくなんて
たまらん楽しみだと思うぞ?
「そう…かな?」
「そうそう。そんなのが嫌だの面倒だのって奴が暁の事好きになる訳ないだろ?」
「そっか…じゃあ…ムラムラ分かんなくてもいい?」
「ん~…暁、ちゃんと勃つんだろ?」
「うん。あの人とも、悠兄とも、セックスしてる時、ちゃんとイク」
「っ!…あ、そう…じゃあ大丈夫だけど…ってか、中入ろう。もう玄関じゃなくて大丈夫か?」
「うん」
ちょっと…
勘弁してよ
あの人はどんな奴か知らないけど
お前と悠兄は知ってんだよ
可愛い兄弟がヤって、暁がイッてるとこ想像しちゃうだろが
全部、幸恋のせいだ
ソファーに暁も座らせる
「暁、さっきみたいな話、学校でもするのか?」
「ううん。長谷と八神さんに言われてからは、してない」
「そっか。」
「…うん?」
そういう話出来るだけ信用してるって事なんだろうけど
少しも恥ずかしそうじゃない
「えっと…暁、いつ水無瀬んとこ来たんだっけ?」
「中1の時」
「結構長く施設に居たのか?」
「ううん。ほんとに短かった。すぐに、今の母さんが迎えに来てくれた」
「そっか。じゃあ中1まで、ずっと母ちゃんと2人だったのか?」
「うん」
「んで?その、ろくでもねぇ奴は、いつ来たんだ?」
「ろくでもねぇ?」
「だから、まだ小さなお前に、とんでもねぇ事教えた挙げ句、好き放題してた奴だよ!」
ほんっと、口に出しただけでムカつくな
今だって暁は、同年代に比べたら小さい方だ
もっとずっと小さくて
選択権なんてなかった暁に…
「…10歳の時。でも、初めは全然そんな事しなかったよ?」
「10歳から、ずっとそいつ居たのか?」
「うん。母さんとね、喧嘩増えてくと、皆来なくなっちゃうんだけど、その人は居てくれた。母さんが、あまり帰って来なくなっても居てくれたんだ」
「居てくれたって…暁、嬉しかったのか?」
「うん。1人で…待ってるのが1番怖いから…何日も1人で居ると…この世界に…忘れられたんじゃないかって思って…今ならね、誰かに言えば良かったって思う。でも俺、幼稚園とか行ってなかったし、母さんと母さんが連れて来る男の人以外知らなかったから…小学校行くまで、あの部屋が世界の全てだと思ってたから…」
だったら、いっそ施設とかに預けろよな
施設が、どんなんかは知らないけど
とりあえず、食う心配だけでもなくなるだろ
「何日か母ちゃん居ない時は、何食ってたんだ?」
「冷蔵庫とか、家の中にある物探した。最初の頃、お腹が空いて沢山食べたら、次の日ほとんど食べる物なくなっちゃって…その次の日、母さん帰ってくるまで、いっぱい水飲んでた記憶があって…」
「~っ…それ…何歳の頃だよ?」
「分かんない。小学校行かなきゃなんないんだよって、どっかの人が何回も来るまで、自分の歳の事なんか考えた事なかったから」
誕生日なんて
祝ってくれる訳ねぇもんな
幼稚園にも行ってなくて
誰も教えなければ
自分の歳、分かる訳ねぇよな
「だから、お腹空いたら、どこに、どれ位食べれる物あるのか探して、少しずつ食べる事にした。凄く食べたかったけど…ほんとに…あの日の記憶が辛かったから、少し食べたら、なるべく水飲んで…」
「母ちゃん、ずっとそんな感じだったのか?」
「うん。小学校行って、給食食べて感動した。あんなご飯初めてだったから。給食さえあれば、家帰って食べる物なくても大丈夫だから、凄く安心した」
そんな風に思って給食食べてる奴が居るなんて
まだまだ気になる事盛りだくさんだけど
「で、10歳の時に来たそいつは、暁に最低な事したけど、ずっと一緒に居てくれたのか?」
「うん。居ない日もあったけど、母さんと違って2日位しか居なくならない。居ると、一緒にご飯食べたり、作った事もあった。勉強とか、お手伝いとかすると、褒めてくれた事もあった。学校から帰ると、居てくれて、お帰りって言ってくれる事あった」
誰にも与えられなかったものを
全部そいつから貰っちゃったんだなぁ…
「そりゃ…恨みたくても恨めねぇわな」
「…っ…八神さん…そう思う?」
「だって、ずっと欲しかった知らないもの、全部そいつが初めてくれたんだろ?」
「そうっ…凄く悪い事した人だって分かってる…でも…俺にとっては、やっぱり…」
「いいんじゃねぇの?あんまり真面目に考えんな。自分の気持ちなんだから、どう思おうが勝手だ。最低最悪な奴。けど、初めて安心くれた奴でいいんじゃねぇの?」
「~~っ…」
暁が泣き始めた
ま、水無瀬や家族には、そんな事言えねぇか
そこから救った人達には…
「誰にも言えなかったか?」
「悠兄に…ちょっとだけ話した事あるっ…けどっ…俺がどう思ってもいいけどっ…やっぱり許せないって言ってたからっ…」
「そうか。まあ、特に水無瀬達はそうだろな。俺は、そこまで暁の面倒見てる訳じゃねぇからな。別に、暁が、やっぱ殺したい程憎い!って言おうが、やっぱり大切な思い出だって言おうが、どっちでもいいな」
自分にとって
初めての嬉しい思い出が
最低最悪な事をした人で
それで今も
自分も周りも苦しんでて…
言えねぇわ
暁を抱き寄せる
「おら、今のうちに、思いっきり、嬉しかった事話せ。どうせ、辛い事ばっか思い出してんだろ?」
「うっ…八神さんっ…」
「ん」
「俺っ…勉強なんて全然出来なかったけどっ…理科だけは得意でっ…たまに、テストでいい点数見せると、褒めてくれたっ…」
「そっか」
覚えてんだ
母親には、褒められた事ないんだろな
「その人、料理作ってくれたからっ…手伝うと、褒めてくれたっ…一緒に作って…一緒に食べるのっ…嬉しかった...」
「そうだよな?」
母親の手料理…
食った事ねぇんだろな
「洗濯も、掃除も、シャワーだけでも毎日入るとかも…全部その人から教わった」
「…そうか。教えてもらわないと…分かんねぇよな?」
「悪い人だけど…悪い事したんだけど…俺は…あの人に…か……っ…」
「飲み込むな。ちゃんと言いたい事言っとけ」
ぎゅ~っと俺にしがみ付き
「俺はっ…あの人に感謝してるっ……こんなに沢山の人巻き込んで…悪い人だって、ちゃんと分かってる…けどっ…それでも俺はっ…~っ感謝してるんだっ…」
「ん…いいんじゃね?今の暁は、そう思ってる。それで、いいんじゃね?」
暁の頭を撫でてやると
「~っ…ありがとうっ…八神さんっ……聞いてくれてっ…ありがとうっ…」
「おお。いつでも聞くから呼べ」
そいつは、どんな気持ちだったんだろ
自分の女の子供
元々、そっちに興味でもあったのか?
暁の話聞く限り
それ目的にしては、ちゃんと可愛いがってるな
そこまでしなくたって、暁が、そこから逃げれない事は分かってるだろうし
同情とかで面倒見てるうちに
そういう気になってきた?
暁、普通に可愛いしな
だからって、大人の男が、小学生の男に何やらせてんだよ
何でも初めてを教えてるうちに
そっちの初めても教えたくなったか?
エスカレートし過ぎだ
しばらくして泣き止むと、暁が俺から離れた
「なかなか他の奴らには言えねぇだろ?また、聞いて欲しい時、電話でもいいんだから、連絡しろ」
「はい…悠兄のとこに来てから…世界には、こんなに優しい人達が居るんだって…毎日思います」
「八神さんも、優しくてイケメンだろ?」
「はい。凄く」
「安心しろ。暁も立派なイケメンになれる」
「イケメンじゃなくていいので、優しくなりたいです。俺は、人の気持ちが分からないから、もっと知って、優しく出来たらいいです」
そりゃ、人の気持ち、分かんねぇだろ
学校生活も想像出来るわ
楽しくなかったろうな
あれ?
でも、彼氏も友達も居るな
「学校は楽しかったのか?」
「…全然。時々帰って来る母さんが、家に居ろって言ったら、居なきゃなんなかったし、給食は美味しいけど、そのお金、ちゃんと払ってなかったり、服も、サイズ合わない物とか、汚れた物とか着てたし…色んな事で苛められた」
「そうだよな。服…どうしてたんだ?」
「たまに、母さんが貰って来たり、凄く機嫌のいい日に、何回か買いに行った事あった。あとは、あの人が来てからは、俺に合いそうなサイズの物、何処かから結構持って来てくれた」
え…
それって、自分の息子のとかじゃねぇよな
聞けば聞くだけ闇深っ…
「でも、今の学校のクラスは、皆凄く優しい。先生も、ちゃんと俺を見て話してくれる」
「今までの先生は見てくんなかったのか?」
「見えてると思うけど…存在してないって言うか…俺に関わると面倒なの分かってたんだと思う」
面倒なの、どうにかすんのが教師ですけど?!
暁が何も言わないからって、どいつもこいつも腹立つな!
「今のクラスでは、沢山友達出来そうか?」
「うん。間宮は彼氏でしょ?長谷は、いつも俺に色んな事教えてくれる。皆の前でそういう話しない方がいいよとか、嬉し涙とか」
「嬉し涙…教えてもらったのか?」
「うん。神田も古谷も、皆優しい」
「へぇ~?良かったな。高校の友達って、けっこう長く付き合ったりするぞ?大切にしろよ」
「うん!」
可愛いね~
よくもまあ、あの可愛い水無瀬の弟に、こんな可愛いのが来たもんだ
「あっ…」
「ん?」
暁の携帯に母親から連絡が入り
彼氏君が発見された
けど、そのまま入院する事になった
水無瀬の様子を見て帰るとの事だった
発見って…警察?
入院って…殺されかけてた?
何が起きてんの?
怖っ…
「…良かった」
「まあ…とりあえずな」
全然帰ろうとしない水無瀬を残して、母親が先に帰って来た
詳しい事情は分からないが、目が覚めてないらしい
とりあえず、俺の役目は終わったので、帰る事にした
次の日、水無瀬から、彼氏君が無事戻って来た事と感謝の言葉が送られて来たが
バイトで、入れ違いに見掛けた顔は、全然嬉そうなものではなかった
ゆっくり話を聞く時間もなく
数日後、同じシフトで会うと、少しはマシになってた
「彼氏君は、元気になったのか?」
「…少しずつ…元気に…なってきてます」
「…そうか」
話したくなさそう
警察まで介入してるし、あんまり深く聞かない方がいいんだろな
更に数日…少しマシになってきたか?
バイトしなきゃなんない理由でもあんのか
馬鹿真面目なのか
何かしてないと余計な事考えんのか
水無瀬は、全然バイトを休まなかった
あの日から3週間程で、彼氏君は退院したらしく
日に日に、水無瀬の顔はにやけてくる
何があったか知らんが
お前らの周りは騒がしいな
それでも離れないのが凄い
「ただいま~。暁、八神さん来たよ」
ガチャ
「八神さん!」
「おお。元気か?」
何その嬉しそうな顔
中に入り、事情を説明すると、喜んで撮影してくれる
どんなポーズがいいかなぁ…
ま、2人で写ってりゃ、何でもいっか
「八神さん、ソファーに座ればいいですか?」
「…おお。じゃ、俺は後ろから…暁頼む。適当に何枚か撮ってくれ」
「うん」
「妹さん。この写真喜ぶんですか?」
「そうだ。変わってんだろ?」
「はい…」
ソファーの後ろから、水無瀬の首に片腕を回して、片手でピースする
ピースしか知らんし
「……あ、八神さん」
少し振り返り、顔の横にある俺を見てくる
「ん?」
「髪の毛に埃…」
「埃?着替えん時か?」
「……取れた」
「サンキュ」
パシャ パシャ
あ…忘れてた
「暁、ありがと。もう、いいぞ」
「うん。何枚も撮っちゃったよ?」
「おお。どれどれ?」
1枚目から確認する
さすがイケメン2人絵になりますなぁ
こりゃ、絶対喜ぶぞ
ふんふん…ふんふ…んっ?!
なっ…?!
これは!
水無瀬が、軽く振り返って、俺の髪の埃を取ろうとしている姿が…
まるで、キスしようとしているようだ!
俺だけか?
俺だけにそう見えるのか?!
そんな事ばっか考えてるから?!
「…………」
「八神さん?撮り直しますか?」
「いや…ちょっと…お前らも確認しろ。そして、感想を述べよ」
可愛い兄弟が、俺のスマホを覗き込む
「暁、写真撮るの上手いね?」
「そう?」
「うん。なんか、ちょうど綺麗に写る様に撮れてる」
「写真なんて、ほとんど撮った事ないよ?」
「じゃあ、そういう才能あるのかも。ほんとに上手」
「~っ…ありがとう」
おい…
お前ら、ちゃんと見てんのか?!
「八神さん、ちゃんと綺麗に撮れてます」
綺麗に撮れてるかの確認じゃねぇよ!
やっぱ俺がおかしいのか?
「いいか?今から、それを送るから、彼氏君に確認しろ」
「分かりました」
「ちゃんと…会って…確認しろよ?」
「?…分かりました」
彼氏君も何も言わなければ
俺がヨコシマな事を考える大人になってしまったんだ
いや!
絶対幸恋の影響だ!
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