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ムラムラ

「…~~~~っ!…まっ…みやっ…」 「っ!水無瀬?!…泣いっ…大丈夫?!」 間宮が、すぐに手を止めて抱き締めてくれる 「~~っ!…だいじょ…ぶっ…」 「ごめん!痛いな?痛かったな?ちょっと…つけるの足りなかったんだ」 そんなに… 涙が出る程の痛みじゃないのに 涙が止まらない 涙が出ると なんとなく、泣きたい気持ちになってくる 間宮に…優しくされたい気持ちになってくる 「~~っ!…間宮っ……うっ…」 「うん…ごめんな?大丈夫だよ。すぐに治まるよ」 「うんっ……ごめんっ…間宮…」 「俺の方こそごめん。もっと、時間かけるべきだだったんだ」 間宮は、俺の涙が止まるまで ずっと抱き締めていてくれた 「間宮、ありがとう。もう大丈夫」 「ほんとか?」 「うん」 間宮が、じっと俺の顔を見てくる 「……ん。涙止まったな」 「ごめんね、突然」 「いや。きっと水に浸けてる時間足りなかったんだ」 「もっと浸けると涙出ないの?」 「まあ、絶対じゃないし、玉ねぎにもよるけど、だいぶマシだ。残りは、もっかい浸けとこ」 間宮が、残りの玉ねぎを水に浸ける 「そう言えば俺、お手伝いの時は、じゃがいもと、人参の皮剥きしてて、玉ねぎ切った事ない」 「そっか。そりゃ、びっくりしたな」 「うん。知識では知ってたけど、あんなに涙出るんだね?」 「そ。こんな小さい物に、すっげぇ負かされた気分になるよな」 負かされた気分… には、ならないけど 全然涙止まらなかった シュッ シュッ シュッ シュッ 間宮が、リズム良くピーラーを動かし どんどん皮が剥かれていく 「間宮早いし、綺麗」 「そんな事ないと思うけど…はい、じゃがさん切って?」 「うん」 さっきまで、茶色くてゴツゴツしていたのに 間宮によって、あっという間に 綺麗な黄色のコロンとした物に変えられた 間宮が作ったのかと思うと なんだか壊すのが勿体なくなってくる 「水無瀬?まだ目痛い?」 「あ…ううん。切っちゃうね?」 「?…うん」 玉ねぎの切り方、炒める程度 色んなルーや、それぞれの辛さの違い 間宮に色々、沢山教わって 「よ~し、完成!」 「わぁ…完成」 「ほとんど、教える事なかったな?ってか、何でも適当に切って炒めて、箱に書いてる通りにすりゃいいんだよ」 「そうだけど…ちゃんと全部やれたから、自信ついた」 「そっか」 2人で遅めのお昼ご飯にする 「どう?水無瀬ん家と味、違うだろ?」 「うん。どっちも美味しいけど、少し違う」 「カレールーとか、隠し味とかで、みんな少しずつ違うからな」 「皆、どうやって決めてるの?」 「そりゃあ、食べてみるしかないから、食べる度に、この前のルーの方が旨かったな、とか、これは旨いけど、ちょっと辛めだなとか、少しずつ調整してくんだよ」 食べる度に… 毎日ずっとカレーじゃないのに 「凄い」 「自分だけの味を作り出せるぞ?」 「皆、そんな風に長い時間かけて、何回も何回も作って、変えてくんだね?」 「そう。カレーなんて簡単だから、他の料理より作る回数多いしな」 「間宮、俺と同い年なのに、色んな事知ってて、出来て凄い」 「俺だって、一人暮らしするってなって、焦って覚えたんだよ」 俺は、ほとんど悠兄がやってくれるから 悠兄は、間宮より年上だし 父さんと母さんが居ない時も、困ってる感じじゃなかったから、元々全然出来なかった訳じゃないと思うけど 「毎日って、色んな事しなきゃなんないの大変だよね…」 「そう思うよ。ほんと、今まで親に感謝。部屋片付けろだの、洗濯物しまえだの、うるせぇなって思ってたけど、そりゃ、言いたくなるわ」 「……そっか。俺も、もっとお手伝いしよう。俺…母さんにも、悠兄にも、そういうので怒られた事ない」 「それは、水無瀬がちゃんと綺麗にして、手伝ってるからじゃないの?」 汚なくとかはしないけど 出来る事はやるけど それ以外に、もっともっと迷惑とか心配とか、普通はしなくてもいい苦労かけてきたから 「ご馳走さま」 「一緒に作ったカレー旨かったな?」 「うん。間宮、食器洗うから、見ててくれる?」 「見てるだけでいいの?」 間宮が不思議そうな顔で聞いてくる 「俺、ほんとの家族じゃないでしょ?」 「っ!…そう…なんだね」 「うん。中1の時にね、施設から今の家に来たんだ」 「そう…だったんだ」 「うん。だからね…多分、父さんも、母さんも、悠兄も、俺の事、怒ったり、注意したりって、なかなか出来なかったんだと思う。今でもまだ普通じゃないけど、もっと…普通じゃなかったから」 今度は、どんな人達の所で 何をすれば生きていけるのか 毎日、そんな事ばかり考えて しばらく家族にも、何にも喋んなかった 「ほんとに困る事とか、人に迷惑になる事は教えてくれたんだと思う。けど…そうじゃない沢山の事、飲み込んでそうだから…見ててくれる?」 「………うん。いいよ」 食器を洗ってる間 間宮は、すぐ隣に居て 時々確認する俺に 「うん。大丈夫だよ」 「それで、いいんだよ」 ずっと、優しい笑顔で答えてくれた 「俺も、正しい洗い方なんて知らないけど、全然いいと思うけどな?」 「ほんと?良かった」 洗い終わって手を拭くと 「デザート…デザート…」 間宮が、しゃがんで冷蔵庫の中を覗いている 買い物の時買って来たプリンの事だろう ………? そんなに探せないの? 「間宮、見付からない?」 傍まで行って、冷蔵庫の中を見ようとして 「……え?間宮?」 間宮が泣いてる事に気付いた 「…っ…ごめん……」 「どうしたの??」 とりあえず、冷蔵庫を閉める 「お腹痛くなった?」 「ははっ…違う…」 「俺…何か、間宮を傷つける様な事言った?ごめん」 「…~~っ…全然違うっ」 間宮が…どんどん泣いていく どうしよう 間宮の隣に座り込む 俺…何かした? 洗い方の話して… 今の家族の話して… あ…家族の事思い出した? 「間宮…もしかして、家族の事思い出した?寂しくなった?ごめん」 「…っ…水無瀬っ…」 間宮が、抱き締めてきた 怒ってはいない 間宮は怒らない けど… 俺のせいで、寂しいなのか分からないけど 良くない気持ちになった 「ごめんね?間宮…俺ね、人の気持ち分からないんだ。だから、嫌な気持ちになった時、我慢しないで言って欲しい」 「~~っ!…俺の方がっ…」 「…え?」 「…俺の方がっ…気持ち…分かんない奴だ」 「なんで?間宮は、いつだって優しいよ?」 「~~っ…水無瀬がっ…今っ…どんな気持ちなのか分かんないっ…」 「……俺?俺は…間宮が俺のせいで泣いちゃってて、どうしようって気持ち」 ほんとにどうしよう 分からない 何で、俺の気持ち聞いてくるのかも分からない 「水無瀬が…前に、今の父さんと母さんと兄ちゃんって…言ってたから、ほんとの家族じゃないんだなとは思ってた。でも…施設に居たとかっ…どんなか知らないけど、普通じゃなかったとか…勝手だけど…きっと…大変だったんだろうなって思って…」 「……間宮」 間宮を抱き締める 俺の事考えて 泣いてくれてるの? 「こんなの、俺の勝手な想像で…偏見で…全然…大変じゃなかったのかもしれないし…そしたら、水無瀬に、すげぇ失礼だけど…」 「ううん……間宮…大変って言葉が合うのか分かんないけど…俺は今の家族に会えて良かった……そう思えるまで時間かかったし……そうだね。多分家族は、凄く大変だったと思う」 今でも… 今だから余計思う 中1にもなって 何にも喋らない奴… よく連れて来てくれたなって 「そうっ…思えるまでっ…時間かかったの?」 「うん…今考えると…かなり…普通とは、かけ離れた環境に居たから…今度は、どんな人達の所で、何したら…いいのかな?って……ただ、優しくしてくれる人達に…あんまり会った事なかったから……全然喋んなかったし…ほんとに、よく連れて来て…」 ぎゅ~~っと間宮が、力を入れて抱き締める 「間宮?」 「なんでっ……なんでっ……そんな思い…してきてっ…水無瀬は…こんなに優しいの?」 「……間宮…俺はまだ…自分が優しいって思った事ない」 「なんでっ…水無瀬は…充分優しいっ…」 「間宮が、そう思ってくれてるなら、少し安心する。俺、ずっと沢山の人達と話してこなかったから...話すの下手なんだ…そして…人の気持ちも、よく分からないから…自分の言葉で…誰か傷つけてるんじゃないかって…凄く心配」 今の俺に話し掛けてくれる人は 優しい人達だから 俺が傷つけても 何も言わないで笑ってそう 「水無瀬は…優しいよ…少なくとも、今のクラスの奴らは…皆思ってる。皆、水無瀬の事大切に思ってる」 「俺…そんな風に思われるだけの事、してないよ?」 「水無瀬は…何でも一生懸命だから。皆がどうでもいいと思ってる事とか、何気なくしてる事も…話す時も、一生懸命だから。それが、苦手とか慣れないって理由だとしても…水無瀬が一生懸命なの…皆、分かってるから。一生懸命な水無瀬が、皆大好きなんだよ?」 皆が普通に出来る事 それが俺には普通じゃなくて 一生懸命な…… そんな風に… 見てくれてたんだ 「…俺もっ…俺もねっ…間宮」 「ん…」 「今のクラスになって…今の先生になっ…~~っ…初めてっ…学校楽しいって思ったんだっ…」 「~~っ!…そっか…」 「うんっ…初めてっ…学校の楽しい事っ…家族に話せるっ…家族にっ…喜んでもらえるっ…」 「~~~~っ…水無瀬がっ…ずっと…頑張ってきたからだよっ…」 「今の家族が…俺を見捨てないでっ……間宮達が…こんな変わった俺の事…そんな風に思ってくれたからだよ…」 ずっと…ずっと… 俺とは違う世界なんだって思ってた 違う世界で生きてきたから 仕方ないんだって思ってた 「水無瀬…」 間宮が体を離すと 凄く…涙流してて… 「俺もね。水無瀬が、いつも一生懸命なとこ好き。けど…あんまり…無理はして欲しくない。一生懸命やって、上手くいかない時とか、疲れた時、愚痴言いたい時に…俺に傍に居て欲しいって…思ってくれたらいいな」 涙…まだ流れてて… なのに… 間宮、凄く優しい笑顔で 触りたく… 間宮の左目の下を、指で拭う 「ははっ…ありがと。水無瀬も涙…え…」 近づきたくて… 触れたくて… 間宮の唇に…自分の唇を重ねた 間宮は… 驚いた様に、目を開けたまんまで… でも… なんで、間宮だけ キスするだけで、こんな感じになるんだろう ゆっくりと唇を離すと 間宮が、目を開けたまま 固まっている 「間宮?…ごめん。何も言わないでキスしたから、びっくりしたよね?」 「…あ...うん…ちょっと…今……考えれない…」 「ごめん…間宮見てたら…急にキスしたくなっちゃった」 「~~~~っ!…あ…そっ…そう……ありがとっ…」 ありがとう? お礼言われる事なの? 「間宮、嬉しいの?」 「そっ…そりゃっ……好きな子にっ…キスしてもらって……嬉しくない訳ないだろっ…」 間宮が、真っ赤になって 俺から視線を逸らした 視線…逸らした... 「間宮…ちゃんと言って欲しい。ほんとは…急にはダメなんだよね?無理して、嬉しいなんて言わなくていいよ?」 「……はっ?!なんで嘘なんてっ…」 こっち、向いてくれた 「間宮…言いづらそうに、視線逸らしたから」 「~~っ!…それはっ…そんなんっ…恥ずかしいからだろ?水無瀬の顔見ながらなんてっ…言えないだろ?」 また… さっきみたいな… こういうの…よく分からない 恥ずかしい…が…よく分からない 「間宮…ごめんね?俺…多分、恥ずかしいが、よく分からないんだ。だから、間宮が恥ずかしいと思う事…分からないかもしれない。ちゃんと言ってね?」 「……え?恥ずかしいが…分かんないの?」 凄く驚いてる顔… 「なんとなく…は、分かる気がするけど…俺にとっては…凄く嫌な気持ちで……間宮を見てると…違う気がする」 「えっと…水無瀬は、どんな時に恥ずかしいと思ったの?」 「どんな時…」 多分… あの人に、初めて お風呂じゃなくて 布団で裸にされた時…とか… 中学入ってから 連れてかれて…… 同級生に…… 「水無瀬!ごめん!」 「え?」 まだ答えてないのに 間宮に抱き締められた 「思い出さなくていい」 「……なんで?」 「水無瀬…~~っ…凄く…辛そうな顔してたっ…ごめんっ…そんな事っ…思い出さなくていい!」 「…俺…辛そうな…顔してたの?」 「うんっ…」 辛い…と思ってたのかな あれは… 恥ずかしいじゃなくて 辛いなのかな 俺の中では ああいう事全部が 怖くて嫌な事にまとまってたから 他の気持ちが… あまり分からない 「じゃあ…辛いも入ってたのかも…」 「うんっ…あのね、水無瀬。恥ずかしいは、嬉しいけど、恥ずかしいもあるんだよ?」 「嬉しいけど、恥ずかしい…嬉しいけど、泣くみたいな?」 「うん…例えばね、俺は、あんまり慣れてないから、水無瀬とキスするの、凄く恥ずかしい。でも、凄く嬉しい」 キスするの… 恥ずかしくて、嬉しい 「水無瀬と喋ってて、たまに、凄く笑って見てくれる時も、凄く嬉しくて、恥ずかしい…ってか、照れる」 照れるも出てきた… 照れる… 「あ!」 「ん?」 「照れる…何となく分かるかも」 「ほんと?」 「父さんとか、母さんとか、悠兄に、褒めてもらったり、抱き締めてもらったり、愛してるって言われた時…何て言うか…嬉しいだけじゃない気持ちになる」 「なっ?!愛…愛…」 違うのか 「違った?」 「いっ…いや…凄いな…」 凄い? 何が? 「そう…それ!照れてる!水無瀬は、それ照れてたんだよ。嬉しくて恥ずかしいのも、それに似てるよ?だから、全然嫌な感情じゃない」 「…そっか。なら、良かった」 きっと… 幼稚園から、俺より喋ってる子達は こんな事も 小学校に行ってる頃には分かってるんだろうな それから、改めて取り出したプリンを 2人でゆっくり食べて 明日の話をしてると 「ふぁ~…」 「水無瀬、眠いの?」 「あ、ごめん。いつもお昼寝なんて、滅多にしないのに…なんか、眠くなってきた…」 「おっ…俺は無実だぞ?!何も…入れてないからな?」 「…入れる?…って?……家族以外の人の家…初めて…で……料理…頑張った…し……ちょっと…疲れた…の…かも……」 「え?マジで?!他人の家、初めてだったの?」 なんか… 間宮の声聞こえる でも…眠い… 寝たら…間宮に迷惑…かけるのに…… 「……ここに置いてあった金どうした?」 「……お腹…空いて…」 「勝手に使ったの?」 コクン バシッ 「私が稼いで来た金…お前、勝手に使ったのか!ああ?!」 「~~っ…ごめんなさいっ…」 「泣くな!泣きたいのは、こっちだ!お前…ただで学校行ってると思ってんのか?!金かかってんだよ!お前が生きてくだけで、金かかってんだよ!なんとか言え!このクソガキ!!」 バシッ バシッ 俺が生きてるだけで… だから、食べる物ないんだ 俺が生きてるだけでお金なくなるんだもん 母さん…働いても… 俺が生きてるだけで、なくなるんだ 俺…生きてなかったら……… 「……せ……なせ…」 「…………間宮…あ…ごめん…寝ちゃった」 「水無瀬…怖い夢見た?」 間宮が、悠兄がしてくれる様に 心配そうな顔で、俺の頬を拭ってくれる 「……久しぶりに…母さんの夢…見た」 「母さん…って……本当の?」 「うん…少し…忘れてた」 「本当の母さん……死んじゃったのか?」 「多分…生きてると思うけど…分かんない」 「………そっか」 あの頃は 自分が生きてない方がいいのかと思った けど 自分で自分を殺すって考えも浮かばなかった 何にも出来なかった 「水無瀬…あまり…思い出すなよ…また涙…出てきてる…」 「……うん…」 「水無瀬…隣行って…抱き締めていい?」 「うん」 いつの間にか寝かされてた 間宮のベッドに、間宮も入って来て ぎゅっと抱き締めてくれる 「水無瀬…よく夢見て泣いてるの?」 「最近は…あんまりなくなった」 「昔は、よく泣いてたの?」 「うん…夜中も…眠れなくて、何回も起きてた」 「そっか…今は?」 「朝まで、ぐっすり」 「ははっ…凄いな。ほんと……っ凄いよ…」 「間宮?」 ぎゅ~っと、俺の頭を間宮の胸に押し付けて、抱き締めてくる 間宮の匂い… 間宮の…鼓動が… そっと、胸に手を当てる 顔と、手に、間宮の鼓動が伝わってくる 何だろう… 安心する 間宮はこれ、知ってたのかな… 知ってて…安心させてくれたのかな… せっかく目が覚めたのに こんなの… また、すぐ眠くなっちゃうよ 「間宮…」 「ん…?」 「ありがとう…」 「ん…」 母さんに抱かれた記憶はない 母さんに撫でられた記憶もない 母さんに褒められた記憶もない 人に、無関心だったから 小学校3、4年生くらいになって 行事の度に、皆が楽しそうにしてる事 親が来ると嬉しそうにしてる事 そういうのに気付いた 学校以外でも、よく見ると 自分と同じくらいの子達が 親と楽しそうに歩いている 他の人を知って 自分が違うって気付いた 他の親を知って 自分の親との違いを知った けれど 母さんに、あんな風にするなんて想像出来なかった 母さんが、あんな風にしてくれるなんて想像出来なかった あの人が来て初めて… なんとなく… そういうのを知った ? この…感覚… 息…荒い… これ…知ってる… ガバッ! ? ダダダダダダ ガチャ バタン ぱちっ… あれ? 「間宮?」 トイレ? そうだ 間宮の家だ あの人と寝た時… 夜中に触られて…体押し付けられて… その時の感覚… なんで突然思い出したんだろ… 間宮…急にトイレ行きたくなったのかな お腹の調子悪い? …っ! 俺が…作ったカレー食べたから? 吐いてる音は聞こえないけど… トイレの前に行ってみる コンコン 「間宮…大丈夫?」 「…~~っ!…ちょっと…~~っ…待って…」 ! 間宮…辛そうな声… どうしよう… 胃薬?病院?救急車? どうしよう… そうだ! 悠兄! 『悠兄、間宮がお腹壊したかも』 『俺が、ちゃんと炒めてなかったのかもしれない』 『寝てたら、急にトイレ駆け込んだ』 『どうしたらいい?』 間宮… トイレから全然出て来ない 苦しいんだ どうしよう ヴヴ ヴヴ 『寝てたって、普通に寝てたの?』 ? 何だろう? この質問 『俺が夢見て泣いて、間宮抱き締めてくれたら、また寝ちゃって』 『寝てたら、急に間宮、トイレに駆け込んだ』 『トイレで、辛そうな声してた』 普通にって何だろう この答えでいいの? ヴヴ ヴヴ 『多分、大丈夫だと思うよ』 『もう少し様子見ててごらん?』 『トイレから出て来て、調子悪そうなら、また連絡して』 なんで…分かるんだろう 悠兄は見てもいないのに なんで俺は… こんなに近くに居るのに分からないんだろう 『分かった』 ガチャ あ... 「間宮!大丈夫?」 「え…あ…大丈夫」 「ほんとに?お腹壊した?」 「えっ?…ああ…いや…違う。大丈夫」 「ほんとに?俺、ちゃんと炒めてなかったからじゃない?嘘吐いてない?」 「え?!違うよ!全然違う。全然痛くない」 「そっ…そっか。はぁ…良かった」 ほんとだ 大丈夫だった 凄い!悠兄 「心配させたんだ…ごめん」 「なんか…間宮、凄い勢いでトイレ駆け込んだから…」 「~~~~っ!ごめんなさいっ!水無瀬と一緒に寝てたら、ムラムラして、少し触ってしまいました!そしたら…~っそうなっちゃって…!それだけです!」 出た… ムラムラだ… 「えっと…ムラムラしたら…トイレ行くの?」 「えっ?…だって…その……た…勃っちゃったから…出さないと…だろ?」 「………そっか」 「うん…?」 勃っちゃったから トイレ行って、出さなきゃなんだ 「覚えておく」 「え…何を?」 「ムラムラして…勃ったら、トイレ」 「えっ?!そんなのっ…覚えなくていいよ!ってか…水無瀬だってそうだろ?!」 「俺は…ムラムラが、よく分かんない」 「ええっ?!嘘!」 勃ってるのは セックスの時しか知らない セックスの時しか 勃って、出したいなんて思った事ない セックスなんて… 出来ればしたくない…

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