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頑張れ!俺!
悠稀がシャワーを浴びに行く
今日1日
悠稀でいっぱい
チョイチョイ結城が邪魔しに来るけど
悠稀の顔見ると
安心する
ベッドに悠稀の匂い…
安心する
ふわっと…何かに包まれた
「……悠稀?」
「ごめん。起こしちゃった」
良かった
良かった?
変なの
クルッと向きを変えると
目を開けなくたって分かる
この触り心地
フィット感
抱き締め方
シャワー浴びて来ても分かる
悠稀の匂い
「今日、沢山頑張ったから、疲れたね?」
「……ん」
「凌久…ずっとここに閉じ込めておけたらいいのに…」
悠稀が言ったのか?
そんな事言うんだな
彼女にも
言ってきたのかな
羨ましいな…
あ…
俺が今、言われてんのか…
俺だって、ここから出たくねぇわ
「凌久…もう…だめだよ?」
「……ん」
ダメ?
「もう…俺以外…だめだよ?」
ああ…そういう事…
「凌久…なんでそんなに…惹き付けちゃうの?」
馬鹿だな
それは、お前なんだよ
「ここに居て…ずっと…ここに居て…」
いいよ
ずっと…
ここに居ればいいんだろ?
こんな安心したとこ居れんなら
いくらでも居てやるよ
起こしちゃったと思ったら
寝惚けたまま、ひっくり返って
小さな子供みたいに
俺にしがみ付く様にして
また眠った
もう…こんなに時間が経ったのに
思い出すだけで震えるなんて
どれだけ怖かったんだろう
「凌久…」
凌久の、ほとんど色のない髪を撫でる
グレー?シルバー?
綺麗な…
凌久によく似合う色
「ん…」
凌久が、気持ち良さそうな声を出す
凌久を連れてった奴は
バイト先の同い年の男
腕も、首も、うなじも、胸元も
キスマークだらけだった
多分…見えないとこも沢山…
ほとんど記憶ないのは
クスリのせい?
怖過ぎて忘れたの?
そんなになるまでの事されたのに
どこも怪我してなかった
それが…逆に…怖い
初めから、そういう目的で
凌久の事連れてったの?
こんなに経っても
未だに騒がれない位の力あるから?
凌久の事
散々好きにして
最後…
殺そうと思ってたの?
暴力は振るわれなくても
殺そうとする素振りとか
見せられた?
声…
たった3日位で出なくなるって
どれだけ叫び続けてたの?
怖くて?
助け呼ぶ為?
それとも…
ずっと…
そいつにイカされ続けて?
それの全部?
「凌久っ…」
なんで
凌久は今
普通にしていれるの?
そんなの…
おかしくなるよ
凌久は…知らないかもしれない
凌久のおばさんが教えてくれた
喉は声の出し過ぎだから元に戻る
しばらく、色んな影響で
記憶とか、言ってる事、やってる事おかしいかもしれない
感情も、少しおかしいかも
腎臓も肝臓も、治療が必要
脱水で栄養状態良くない
色んな影響で、更に安静必要で
だいぶ体力落ちるって
退院する頃
おばさん凄く喜んでた
体も心も
こんなに早くに
こんなに、まともになるなんて
奇跡みたいだって言われたって
けど…
体…元気になったけど
「凌久…」
せめて…
沢山の事覚えてなくて良かった
早く…
全部忘れて
「ご馳走さま」
「はぁ…全部食べ切った」
「おばさんの料理、なくなっちゃったね」
「さすがに、あんまり置いといたら、悪くなるしな?」
沢山、食べれる様になった
沢山喋って
沢山動いて
「悠稀?」
「あ…凌久…いっぱい食べれる様になったなって思って」
「ああ…毎日、少しずつ体動かしてるしな」
「体…動かしてるって?」
まさか…
1人で外歩いたりしてないよね?
「ストレッチと、筋トレを少しずつ」
「え?凌久…筋トレなんてしてるの?まだ、無理しちゃ、だめだよ」
「だから、ほんの少しだよ。ちゃんとした筋トレする為の準備」
「……凌久…学校…出来るだけ、一緒に行こうね?」
「悠稀…心配してくれんの嬉しいけどさ。あいつは、しばらく出て来ないし、出て来たとして、一生怯えて暮らすなんて無理だって」
そんなの…分かってるよ
でも
異常だもん…そいつ…
「……分かった。なるべく…悠稀が行きでも、帰りでも行ける時に合わせるよ」
「……うん」
「悠稀も…気を付けて?」
「俺?」
「俺だけがって事じゃないから…たまたま…俺だったって事だから」
「……うん」
こんな事…
そんな起きないよ
起きる自体、異常なんだよ?
家に帰ると、暁から衝撃的な話をされた
でも
間宮君が、暁の事ちゃんと考えてくれてるって分かって…ちょっと、ほっとした
けど…
その間宮君…いつか悲しませるんだろな
翌日も、暁は皆と、その後間宮君と遊ぶって出てった
俺はまた、凌久の家
毎日、凌久に会いに行く
「悠稀…どうぞ」
凌久の家に凌久が居る
安心する
「今日は?紅茶にする?コーヒー?」
「紅茶…凌久…今日、一緒に買い物行こ?食べる物、一緒に買いに行こ?」
「……そうだな。カップラーメンはあるけど…ってか、母さんの料理で、あんまりカップラーメン食べれてない」
「凌久…」
紅茶を淹れてる凌久の後ろから抱き付く
「ふっ…何?手…危ないから、引っ込めて?」
「凌久…」
「今日は、甘えっ子悠稀だな?」
「うん…」
「でも、熱いから危ない。紅茶持ってくから、離れて?」
「…………」
明日から、凌久学校
1人で歩く時間いっぱいある
「悠稀?買い物…行かなくたっていいんだよ?」
「え?」
「今は、ネットで何でも注文出来るし、デリバリーもある。そしたら、学校の行き帰りだけ、心配すればいいだろ?」
「……ん」
「今日も…何か頼も?で、必要な物、一緒にネット注文しよ?」
「……凌久は…それでいいの?」
「いいよ。悠稀が、それで少しでも安心するなら」
「……ありがと」
これじゃ…
俺も凌久、監禁してるみたい
でも…
「凌久…」
「ごめんな?いっぱい心配かけて」
「ううん…」
「向こう行く?」
「行かない」
「ふっ…行かないの?ここに居るの?」
「ん…」
「今日は、我が儘悠稀も居るのか」
なんで…
こんな気持ちになっちゃうんだろ
頑張ってる凌久、応援してあげたいのに
俺が心配されちゃダメなのに
ちゅっ
「悠稀の手も…キスしとこ」
「ん…いっぱいして?」
「ん…」
左手の指1本ずつにキスして
手の甲にキスして
「はむっ…」
「俺の手…食べちゃうの?」
「ん…食べていい?」
「いいよ…凌久になら…全部食べられてもいいよ」
「ふっ…危ない発言だな」
凌久は?
全部…食べられた?
「悠稀…」
凌久が、クルッとこっちを向くと
「え?…凌久?」
突然、服を投げ捨てた
「また、適当に何個か、悠稀の痕付けといてよ」
昨日付けた痕に触れる
「消えなきゃいいのに…」
いくら付けてても意味なかったけど
「まだ付いてないとこ、悠稀の痕付けて?」
「ん…」
昨日とは別の場所に印を付けてく
ここも…ここも…
取り返した
俺の…
「っ!」
「あっ…ごめん…」
右の鎖骨の辺りに付けながら
右手動かしてたら、敏感な部分に触れてしまった
「…大丈夫」
そこ…何されたの?
「凌久…感じるのが怖いの?それとも…ここだけ、特別?」
「……感じさせられるのが…イカされるのが…怖い」
「そっか…でもね、凌久。俺がここ触っても…舐めても…凌久、そんな感じないよ?」
「…え?」
俯いてた凌久が、顔を上げる
「だって俺、凌久みたいに上手じゃないもん。凌久、感じる気持ちいいじゃなくて、幸せな気持ちいいだって言ってたもん」
「……あ…そ…そうだったな?」
「だから、怖くないよ?」
「悠稀…そうだった…悠稀の…幸せな気持ちいい、ちょうだい?」
「うん…」
凌久みたいには出来ないけど
俺も、少しでも気持ち良くなって欲しいんだよって
俺で、少しでも気持ち良くなってって
そういう気持ち…
ちゃんと伝わるから
「…っ…すげぇよ…悠稀」
「うん?」
「ふっ…全然…怖くない気持ちいいだ」
「ん…」
「悠稀…悠稀…悠稀…」
いつもみたいに
凌久が俺の頭撫でる
凌久がしてくれる時の俺は
こんな余裕全然ない訳で
きっと凌久は、全然気持ち良くなれてない
けど…
それでも、これが幸せなんだって
「悠稀…ありがとう」
喜んでくれるから…
「いっぱい増えたな?」
「うん」
「紅茶…冷めちゃったけど、飲む?」
「うん。飲む。凌久…服」
「ん、ありがと」
凌久と座って紅茶飲んで
ネットで色々注文して
デリバリー頼んで
「つっかれたぁ~…これ、講義寝るんじゃないか?」
「仕方ないよ。ずっと、こういう作業してなかったもん。お昼寝しよ?」
「ん…」
凌久がベッドに上がり
俺も隣に横になる
「暁、大丈夫?」
「うん。まだ、カラオケ。ちゃんと通知音出してる」
「…っか……じゃあ…寝てても…分かるな?」
「うん…」
普通に元気に見えるけど
凄く体力落ちてる
もっと休んでて欲しいけど
慣れないと体力も戻らないんだろな…
凌久が寝てる間
凌久の髪を撫でキスをする
「凌久…」
すやすや眠ってる
服の上から凌久の腰を触る
全然起きない
そのまま…ゆっくり手を下ろしてく
熟睡
「凌久…ここ…挿れられた?」
そっと…割れ目の窪みに触れる
「…奏みたいに、凌久がほんの少しも、好きでもなくて…向こうは…凌久の事好きかもしれないけど…凌久は…全然気持ちないのに……無理矢理…挿れられた?」
全部…全部…
中洗いたい
そんなの…もう何も残ってないって知ってる
でも…
俺が…洗いたい
俺の物…注ぎたい
だって…
あんなにキスマーク付ける奴
挿れない訳ない
「…~~っ…許せないっ……許せないよっ…」
飲み物も食べ物も、ちゃんと与えないで
声出なくなるまでイカされて
「凌久っ…凌久っ…」
ぎゅっと凌久を抱き締める
「……ん…」
それでも、全然起きなくて
どれだけのダメージ…
「……ん…」
お昼を過ぎた頃、凌久がモゾモゾしだした
まだ…眠いのかな?
モゾモゾ…すやすや…モゾモゾ…すやすや…
何回動いても
俺の胸の中に収まってるのが可愛い
「……ん……あ…寝てた…何時?」
「お昼頃だね」
「…ごめん…時間、勿体無い…」
「勿体無くないよ。凌久と居れるんだから」
「悠稀…寝てなかったの?」
「ん…俺は眠くないから
「…ん~~っ!…っと…起きるか」
あ~あ…
俺の胸の中から出ちゃった
「眠くないのに、あのまま居てくれたの?」
「だって…凌久、抱き締めていれるから」
「俺は快眠だったけど、退屈だったろ?」
「全然?」
「ふっ…お昼食べよ?」
「うん」
暁も、お昼ご飯かな?
この後、間宮君の家…
「ストーカー悠稀、カップラーメン食べる?」
「ストーカーじゃないもん」
「はいはい」
今日は…大丈夫かな…
いつ…そういう話になるかな…
「悠稀、のびるよ?」
「あっ…いただきます」
「暁、もう彼氏ん家?」
「ううん…お昼ご飯は皆でって言ってた」
「んで?晩ごはんは?」
「今日は家で食べる」
「んじゃ、今日はないな」
「え?」
凌久が、麺をズズッと、啜りながら言う
「話は…どのタイミングで出ちゃうか分かんないけど、そんな時間ないのに、初めてシようとは思わない」
「……あ、そっか」
「ちゃんと最後までじゃないから、話しないか?って言われたら、そんなの分かんないけどな」
「うん…」
いつか…
暁が、泣きながら帰って来るかもしれない
「兄ちゃん、シッカリしろ!まだ始まってもないのに、お前がそんな顔してて、どうする?」
「ん…そうだよね?」
「暁だって、ちゃんと分かってなくても、気にしてるんだろ?それでも今、幸せだって思ってんなら、一緒に喜んでやれよ」
「っ…そうだよね?暁…喜んでんのに、こんな顔してたら、暁も不安だよね?」
「そっ…その時が来たら…どうせ、そんな顔になる。今からすんな」
「……ん…そうだね?」
そうだ
せっかく楽しい時間
思いっきり楽しませてやりたい
「それじゃ…凌久、明日ね?」
「おお。後でまた、連絡する」
「配達…受け取るのも…気を付けてね?」
「…ふっ…分かったよ。じゃな」
これじゃ、束縛だ
凌久…信用してないみたいだ
そうじゃないけど
凌久は悪くないんだけど
「はぁ~…」
買い物して、家帰って、ご飯支度をする
凌久…買い物行きたかったよね?
俺の我が儘なのに
嫌な顔しないで…
ヴヴ ヴヴ
『間宮に駅まで送ってもらった』
『もうすぐ駅着く』
ほっ…
普通だ
『了解』
大丈夫そう…
分かんないけど
間宮君も…優しいから
ショックでも送ってくれそう…
?
そろそろ帰って来るはずなのに…
手を止めて、スマホを確認する
まだ駅?
さっき、もう着くって言ってたのに
『暁、どうかした?』
全然…既読にならない
嫌な予感しかしない
すぐに家を飛び出す
電話も出ない
何かあった…?
凌久の時の二の舞は、ごめんだ
もう、警察呼びたいくらいだ
全然、電話出ない
暁…
駅の近くまで来ると…
男が…何か叫んでる
男の前に…横たわってる人…
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「もしもし…」
暁でも、暁じゃなくても、どうでもいい
早くここに警察呼びたい
電話しながら近づいてく
「そうです!はい!駅の東口前です!」
信じたくないけど…
暁だ…
「暁から…離れろ…」
なんで…
誰…
「ああ?何だ?テメェ…やんのか?」
「すぐに警察が来るぞ?」
「やっ…やめて!その人は関係ないんだ!」
「あ?兄ちゃん関係ねぇってよ?」
なんで…
「何言ってんの?!暁!」
なんで…
俺の大切な人ばかり…
「なんか知らねぇが、俺は金さえ手に入れば、どうでもいいんだ。兄ちゃんが、こいつの母親の借金払ってくれんのか?」
暁の…
お母さんの?
「はっ…払わない!俺がっ…ちゃんとっ…払うからっ…」
「何言ってんの?!暁!暁は、そんな事しなくていいんだよ!」
「違う…俺の母さんの話なんだ。だから…俺が、払う」
「物分りのいいガキで良かったぜ。んじゃ、行くぞ。ほれ…」
俺が払う?
行く?
暁を…
何処に連れてって
何させる気?!
「やめろ!!暁に触るな!」
そいつの手を払う
「ああ?!何すんだ?!」
俺の…
大切な…
「居たぞ!」
「おい!そこで何してる?!」
あ…
警察…
「……はっ?お前…マジで…クソっ!覚えてろよ?!」
「暁!暁!大丈夫?暁!」
「……悠兄…ごめん……さい…」
すぐに救急車を呼ぶ
「暁…暁が謝る事なんて、何にもないんだよ?」
「ごめんなさい……悠兄…見られた…」
「暁…」
俺の心配してる場合じゃないのに
痛くて、怖くて
「暁…大丈夫だよ…大丈夫だよっ…」
病院に着いて
それでも…暁は目を覚まさなくて
ようやく目を覚まして
父さんも母さんも来て
こんな時にって思ったけど
警察の人が来たら
暁が…
警察の人と話したいって言い出した
家族以外の人なのに
家族を外に出して
暁が…
暁じゃないみたいで怖い
「暁の…お母さんのお金返せって…言われてた」
「…そう…」
「悠稀…暁の母さんな…水商売してたってのは、分かってるんだ。いつも…家に色んな男が来てたって…」
水商売…
それで、色んな男の人…
「暁は…関係ないでしょ?暁が返さなきゃならないの?」
「そんな事ないわ。暁は、関係ない」
「実際に、こんな傷害事件起こしてるんだ。警察だって、ちゃんとしてくれる」
「……うん」
凌久も…暁も…
傷ついてから…
傷つく前に
何とかして欲しいのに…
「……暁…俺達に…話したくないのかな…」
「動揺してるのよ。暁…優しいから」
「暁…あんなに…怖くてっ…痛い思いしてるのにっ…~~っ…俺の顔見られたって…謝ってた…」
「暁…悠稀の事、大好きだからな?大切な人…巻き込みたくないって…思ったんだろ?」
「うっ…嬉しいっ…けどっ……俺達…家族なのにっ……家族なのにっ……」
「悠稀…大丈夫。ちゃんと暁も、分かってくれる」
「そうだな…少し…時間…必要なんだ」
待合室で
家族皆で涙流してると
警察の人が来てくれた
凄く…俺達の事、大切に思ってて
自分に関わって欲しくなかったみたいだって
でも…ちゃんと話すって言ってたって
病室に入ると
暁が泣いて謝ってきて
皆も泣いて
皆で…話して…
今まで、何となく避けてた様な事
ちゃんと話して
父さんの言葉が
暁に、ちゃんと届いてるのが分かった
だって
暁…父さんに甘える事なんてない
父さんに、抱き締められると嬉しそうだけど
何となく、母さんには、自分から近くに行ったり、話し掛けたり
少し…甘えてるのかな?って事あるけど
父さんには、自分から、そんな風に近づく事なかった
何となく…
その…
暁が忘れられない奴を
思い出してしまったりとか
色々考えてしまうのかなって思ってた
けど…
その暁が今
父さんに甘えてる
父さんの胸の中で
ウトウトして
きっと…
暁の中で何かが変わったんだ
父さんも嬉しそうで
俺も、きっと母さんも嬉しかった
安心して俺達は、病院を出た
父さんも母さんも、凌久の事があったばかりなので、凄く心配してくれた
正直…
全部、落ち着いたら
俺、倒れるんじゃないかなって思う
でも、今それどころじゃないから
凌久も、暁も
1番辛い人達が頑張ってる
俺が倒れてる場合じゃない
途中で投げ出した料理を、母さんと作って
少し少なめになったご飯を、皆で食べる
そう言えば
こうやって3人で食べるの久しぶり
「3人で食べるのなんて、暁が来る前以来ね?」
「そうだなぁ…そっちの方が、ずっと長いのに…寂しいもんだなぁ」
「うん…暁が居ないなんて…考えられないから」
俺は、もう大学生だけど
難しい事は分からない
何か大きな事が起きたら
暁が、強く望んだら
ここから離れるとか、あるんだろうか
「悠稀。暁が居なくなる事なんてないわよ?」
「そうだ。暁は、水無瀬 暁だろ?何処行くってんだ?」
「……信じたくない…信じられない様な事…起きるから……俺には分からない事…沢山あるから…」
「そうだな…ちょっと…悠稀、今、頭も心もいっぱいだもんな?よく頑張ってるな?」
父さんが、俺の傍に来ると
「悠稀…こっち向いて」
父さんの方に体を向けると
「よしよし…悠稀は、凄く頑張ってる。エライエライ」
さっきの暁みたいに抱き締められて
頭撫でられた
「…父さん…俺、もう大学生…」
「いくつだろうと…父さんの息子だ。息子が頑張ってたら、褒めるだろ?」
「…~~っ…なんでっ…なんでっ…俺の大切な人ばっかり…」
「うん…そうだな?」
「なんでっ…いつも間に合わないっ…傷ついてからじゃ…遅いのにっ…」
傷つくのは、すぐ
回復するまでは
長くて長くて
ちゃんと治るのかも分からない
「悠稀…すぐに気付いてくれたでしょ?」
「…それでもっ…遅かった…!」
「悠稀は…警察でも探偵でもないわ?おかしいって気付いたのも、すぐに警察呼んだのも、悠稀だって、怖くて動揺してたのに、すぐに救急車呼んだのも…なかなか出来る事じゃないわ?」
「……それでもっ…遅かった…凌久も…暁も…俺の知らない所で…」
「悠稀…」
こんなの言ったって
どうしようもないの分かってる
ただただ
父さんと母さん困らせてるだけだって
けど…誰かに言いたかった
ずっと父さんに抱き締められて
父さんの胸の中で泣いて
父さんに撫でられてたら
何も変わってないけど
何か言われた訳じゃないけど
少し気持ちが落ち着いた
「ありがとう…父さん。なんか…少し落ち着いた」
「そうか?悠稀は…昔から、疲れてる事に気付かないからな?たまには、こうして吐き出して休まなきゃな?」
「そう…かな?」
「そうだよ」
やっぱり
父さんと母さんって、凄いんだな
俺より、俺の事分かってる
落ち着いた俺を見て
食事の片付けをした後
父さんと母さんは、ホテルへと去って行った
明日は、暁の退院
父さんと母さんに任せるから
俺は…明日からの凌久の学校
父さんにパワー貰ったんだから
頑張れ!俺!
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