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2回目のお泊まり
「それじゃ、母さん、暁の事よろしく」
「任せて!」
「父さんは、暁退院させたら、戻んなきゃなぁ…」
「父さん…仕事忙しいのに、この前から何度も、ごめんね?」
「何言ってんだ?今回は、暁と悠稀に充電させてもらったから、仕事頑張れるぞ~~!」
父さんが、嬉しそうに話す
「俺ね、全然責任のないバイトだけど、それでも、働くって色々大変だって思った。そして、そういう俺達の事、考えてくれながら働いてる店長って、凄いんだなって思った。だから、そうやって働いてるのに、いつも優しくて、元気な父さん、尊敬する。勿論、それを支えてる母さんも…」
「……は…悠稀~~~~っ!!」
父さんが、ガッシリと抱き付いてきた
「父さん…父さん…今ので半年は、めちゃくちゃ頑張れる!」
「父さん…じゃあ…半年したら、また父さんの事褒めなきゃね?」
「ははっ…いいんだよ。悠稀と暁が、父さんが働いたお陰で、幸せに暮らせてるのが、何よりなんだ。それだけで充分だよ」
仕事してて、嫌な事ないなんてない
不満も、理不尽も、ストレスもあって
上手くいかなかったり、失敗したり
それは、バイトの俺なんかとは
比べ物にならない位大きい物
それでも、いつも人に優しくしていられるって
凄い事だ
きっと…
凄く強いんだ
俺も、もっと強くなりたい
ピンポ~ン
「はいは~い」
「凌久、お迎え来た」
「ありがと。悠稀は1講目からじゃないのに、悪いな?」
「俺が一緒に行きたいから」
「ん…待ってて」
準備が出来た凌久と、学校へ向かう
家の中歩くのとは違うから心配
朝は人が多いから、電車も凄い人
「凌久、大丈夫?」
「大丈夫だよ。そんな心配すんな」
そうは言っても
体力なくなってる凌久
満員電車で潰されそう
流れに連れてかれそう
しっかりと、凌久の体を支える
「…っはぁ~…久しぶりの満員電車…ヤバいな」
「大丈夫?」
「大丈夫。ずっと支えてくれて、ありがと。階段はやっぱ、しばらくは、下りだけにしといた方が良さそうだな?」
「うん…そうしよ?」
大学まで歩ける?
着いたら、疲れ果ててるんじゃない?
「凌久…今日2つも講義、大丈夫?」
「ま、座ってるだけだしな?」
「うん…」
「ふっ…帰り、またお願いします。昼、一緒に食お?」
「うん!」
こうやって慣れてくしかないんだけど
凌久より、俺が慣れない
心配で…心配で…
凌久を送り届けて、構内を歩く
いつもと変わらない
凌久が…居なくなる前と同じ
適当にベンチに座ると
母さんから連絡が入り
暁が無事退院決まって手続き中と
「暁…1人で寝れたかな…」
眠くなってきた
昨日…色々考えてたら
あんまり寝れなかったから
人通りの少ないベンチで横になる
アラーム…セットしてと
ちょっとベンチ借ります
凌久に会う時には
元気で居たいから
少し…眠らせて…
ヴ~~~~...ヴ~~~~...
「……ん?」
もう…起きる時間?
寝たばかりだと思ったら
時間経ってたんだ
起きなきゃ…
うっすら目を開けると…
………?
あれ?
なんか…人…いっぱい
え…
何事?
ゆっくり起き上がると
「水無瀬君、おはよう」
え…?
「おは…よう…?」
「眠くて寝ちゃったの?」
誰…この人達…
「うん…え?…何か…あったの?」
周りを見渡すけど…
特に何もない
「何にもないよ~」
「水無瀬君、今日遊びに行かない?」
「……え?遊びに…?」
なんで…俺?
「うん、うん。男子も呼ぶからさ」
「私達と、遊びに行かない?」
「……えっと…これから…講義で…その後、バイトあるから…」
あれ?
そう言えば、先輩じゃなかったかな…
ため口…
「そっかぁ…」
「バイトの後でもいいよ?」
なんで…そんなに…
「弟…待ってるから…」
「弟?!弟君と住んでるの?!」
あ…言わない方が良かったかな
「そうだったんだ~」
「弟君、何歳?!」
どうしよう
なんか…怖い
「は~るき!」
「碧音…」
「さっ…行こ?」
「え?」
碧音が、俺の腕を引く
「あっ…待って、水無瀬君!」
「もうちょっと、お話聞かせて~」
「えっと…」
「ごめんね~。悠稀、これから講義あるから」
「え~~!」
碧音に連れられて脱出する
「碧音…久しぶり」
「悠稀、あんなとこで寝てたの?」
「うん…碧音、たまたま通りかかったの?」
「なんか、水無瀬君、水無瀬君聞こえるから、行ってみたら、ベンチに起き上がる悠稀が、女子に囲まれてたのを、遠くから発見した」
水無瀬君、水無瀬君…
でも、俺…
さっきの人達見た事ない
「俺、知らない人達だったけど、なんで俺のとこ来てたの?」
「悠稀が寝てたから」
「?…俺が…寝てたから?」
「うん。皆が見えるとこで、寝ちゃダメだよ?」
「………よく…分かんない。皆が使うとこで寝たのは悪かったけど…だから?」
「ちょっと理由は違うけど…そうだね。皆が使うとこで寝ないようにしよ?」
「……うん…分かった」
よく分からない
でも
怖かったから、もう、あんなとこで寝ない
「あっ…悠稀、ちょっと待って」
「何?」
「髪に、なんか付いてる。取ってあげるから、じっとしてて?」
「あんなとこで寝たから…何か落ちてたのかな?」
「なんか…葉っぱかな?枝?」
碧音が、向かい合って俺の左側の髪の毛から、何かを取っている
「…碧音、髪の色変えたんだね?」
「うん…ブルーブラックだって」
「へぇ~…皆、自分に似合う色探すの上手いね?」
「そ?ありがと」
碧音の髪を少し触ろうとすると
「悠稀」
「…凌久!」
1回外出て来たんだ
凌久のとこへ行こうとすると
「悠稀、ちょっと待って…」
「あ、ごめん」
忘れてた
「はい。取れたよ」
「ありがとう、碧音。凌久、大丈夫だった?」
凌久の元へ行く
「ん。久しぶりに、頭働かせて来た。宇佐美~?俺が居ないからって、悠稀に近寄り過ぎじゃね?」
「悠稀は、楠だけのものじゃないんで」
グイッと、碧音が腕を組んでくる
これは…また…
「ベタベタし過ぎなんだって!」
グイッ
「凌久…碧音は…」
「ベタベタじゃないです~。バスケ部は、これが普通なんです~」
グイッ
「碧音は…髪の毛…」
「もう悠稀は、バスケ部じゃないんです~!」
グイッ
「あっ!時間!授業始まる!」
「うおっ!遅刻だ!」
「悠稀、またね~」
「うん。碧音、ありがとう」
凌久と急いで講義に向かう
碧音とふざけ合ってる凌久
前と変わらなくて安心する
凌久とお昼ご飯食べてると
母さんから、暁が無事退院して
3人でファミレスですって連絡が来た
良かった
あんな事があっても
家族でファミレス行けるくらい
暁は変われてる
「遠回りになるのに、悪かったな」
「ううん。ゆっくり休んでね。また明日」
「おお。ありがとな」
暁も…
母さんが帰ったら、送り迎えした方がいいよな
バイト…調整してもらった方がいいのかな…
家に帰って、母さんのご飯食べると
母さんは、また明日と去って行った
暁と2人になると
今日あった色んな事を話してくれた
間宮君を彼氏だって紹介して
母さん、間宮君に会ってた
凄い…
暁の、本当の母さんの話になると
「母さん見付かっても…別に会いたいって、思わないんだ」
そう言った
13歳までの、唯一の肉親
そう思うって…
どんな生活だったんだろう
暁が、一緒に寝ようと言ったので
一緒にベッドに入った
話してるうちに
暁がウトウトしてくる
もう…ほとんど寝ながら
「悠兄…顔……見られ……ちゃった……どう…しょ…」
そう言った
愛情とか
優しさとか
そういうのに、ほとんど触れてこなかっただろうに
暁は優しい
俺達に関わらない様に働こうとしてた
きっと
どんな事させられるかも知らないで
「暁…何処にも行っちゃだめだよ……」
翌日
朝から暁が、学校行くって準備を始めた
まだ、家でゆっくりしてて欲しい
外…出歩かないで欲しい
「悠兄に、そんなに心配かけるなら、行かなくていい」
張り切って準備してたのに
俺の為に諦めようとする
優しい暁が
こんな状況で俺の心配してきて
完敗だった
暁の事は、今日も母さんに頼み
俺は今日も凌久のとこ
約1ヶ月の遅れを取り戻す為
凌久は頑張っている
学校とバイトを終えて帰ると
母さんと暁から
暁のクラスメイトが、暁の送り迎えをしてくれる事になったと聞く
凄い…
暁、愛されてる
今日の帰りも、早速送って来てくれたみたいで
母さんも凄く喜んでた
週末まで様子を見て、母さんは帰る事になり
警察からの連絡は、父さんか母さんにって言ってあるから、大丈夫よって言ってた
「暁…ほんとに、いいクラスだね?」
「うん…皆が優しいんだ」
暁が優しいからなんだよ?
「間宮君、今日も来てくれたの?」
「うん。母さんがね、ご飯作ってる間、俺の部屋に居るでしょ?優琉とね?ただ抱き合ってるだけで、凄く気持ちがいっぱいになって、涙が出てくるんだ」
「そっか。間宮君、いっぱい気持ちくれるんだね?」
「うん…」
「暁…優琉って呼んでるんだ?」
「うん。優琉も俺の事、暁」
「そっか」
嬉しそう
“暁”が、どんどん好きになってくね?
「悠兄、あのね?俺、優琉の事、こんな風に思う様になって、いっぱいいっぱい優琉と一緒に居たいなって、思うようになった」
「うん。そうだね?」
「だからね?悠兄もでしょ?」
「…え?」
「悠兄も、凌久さんと、いっぱい一緒に居たいでしょ?凌久さんも、悠兄と、いっぱい一緒に居たいでしょ?」
暁…
「俺、もう高校生だから大丈夫だよ?皆より、知らない事いっぱいあるけど、ちゃんと皆に聞くから。だって、優琉は1人で暮らしてる。優琉が居てくれる時だけでも、悠兄…凌久さんのとこ、いっぱい行って?」
「暁…ありがと。暁が、そんな風に言える様になるなんて…ほんと凄いね?」
「うん。いつまでも悠兄に守ってもらう訳にはいかないから」
そっか
そりゃ…そうだよね?
いつまでも一緒には居られない
お互いに大切な人が居るんだし
きっと
もっと、一緒に過ごす時間少なくなってって…
「なんか…それはそれで寂しいな…」
「悠兄…」
「ははっ…父さんや母さんが、俺達を家から出す時も、そんな気持ちだったのかもね。だから、たまに会えると嬉しいんだ」
「うん。寂しいって思ってくれる人が居るの…嬉しい」
あ…
暁を、そんな風に思ってくれる人、居なかったから
暁自身は…少しは思ってたのかもしれないけど…
「寝よっか。今日も一緒に寝る?」
「ううん。今日は大丈夫だよ」
「ん。おやすみ、暁」
「おやすみ、悠兄」
早く凌久と暮らしたい
けど
暁と、こうして一緒に居られなくなるのも寂しい
我が儘だな…俺…
「……え?」
「だ~か~ら。土曜日、凌久君の家、泊まって来なさい?」
「母さん…週末帰るって…」
「うん。日曜までと思ってたけど、念のため、月曜日暁が学校行くの見送って、何の連絡もないの確認したら、お昼頃帰る事にしたの」
「そうなんだ」
いつまでって決めるの
難しいよね
「だから、土日は暁の事心配しないで、思いっきり遊んで来て?」
「でも…暁、心配だし…」
「無理にとは言わないけど、いつも悠稀に任せっぱなしだから、もし、悠稀も凌久君もそうしたいなら。ね?」
「ありがとう…ちょっと…考えてみる」
大丈夫かな…
嬉しいけど
すっごく嬉しいけど
母さんと2人で居て
母さんが、何か用事で出て行った時
暁は……
「俺、大丈夫だよ」
「でも暁…買い物とかは、済ませとく様に言っておくけど…母さん此処に泊まる様に言っておくけど…何かの用事で、母さんが家出なきゃなんなくなったら……暁…俺居なかったら、堪えられないでしょ?」
「悠兄…あのね、これ見て?」
暁が、スマホの中のアルバムを見せてくれる
「……わぁ…暁…凄く沢山写真撮ってるんだね?」
「ううん…皆が撮ったの、送ってくれるの。俺…あんまり笑わないけど…よく皆、一緒に撮ってくれる」
「そうなんだ…ははっ…柿内先生も写ってる」
毎回、色んな子が写ってる
クラス全員が、何処かに写ってるんじゃないかってくらい
「俺の送り迎えもね、皆が言い出したの。皆、凄く楽しそうに喋りながら歩くの。俺…堪えられなくなる前に、頼れる人、沢山居るんだ」
「…暁」
「寂しいとは違うけど…寂しいって言ったら、誰かが連絡取ってくれると思う。優琉に言ったら、家まで来てくれるかもしれない。あと、忙しくなかったら、八神さんも居る」
「うん…」
「俺…やってみたい。母さんが出掛けるかどうかは分からないけど、悠兄が居なくても、大丈夫って…早く思いたい」
頑張れ~!暁!
きっと、今の暁なら、大丈夫だよ!
って気持ちと
そうやって
少しずつ俺が必要なくなって
離れていっちゃうんだろなぁって気持ちと
「じゃあさ、暁。どうしようもないと思ったら、その時は必ず俺に連絡するって約束してくれる?」
「え?」
「俺が必要ないならないでいい。でも、やっぱり俺じゃなきゃ、だめだって時は、絶対!必ず!気を遣うとかナシ!それ約束出来ないと、凌久と居ても、暁の事心配過ぎて、楽しくないから」
しばらく、俺の顔を見て
「分かった。約束する」
と、嬉しそうに笑顔で言った
そのうち
ウザいとか思われるのかな
でも、今はまだ
嬉しそうにしてくれてるから…
そんな訳で、土曜日
ピンポ~ン
「は~い…ようこそ」
「お邪魔します」
久しぶりのお泊まりは…
やっぱり少し落ち着かない
「凌久…ここに荷物置いていい?」
「何処でも、好きなとこにどうぞ」
「うん…」
前は…
凌久と沢山デートした
俺のせいで、凌久は学校の行き帰り以外
外出歩いてない
俺の我が儘に付き合って…
「悠稀?」
「わぁっ!」
すぐ横に凌久の顔があって、びっくりした
「どうした?暁が心配なら無理すんな」
「違うよ」
「じゃあ、他に何か心配事?後から聞いても、その時何にも出来ないから、教えて?」
「あ…暁の事…すぐ言わなくて、ごめんね?」
「怒ってる訳じゃないよ。俺の事、心配して言わなかったのも分かるし。けど…悠稀が大変な思いしてる時、何にも知らないで、何にも出来ないのは…やっぱり悲しい。心配くらい、させて欲しい」
今日の事を言う為に
母さんが居るって言わなきゃならなくて
じゃあ、何で来てるの?って聞かれる訳で
全部話したら、相当びっくりしてた
「うん…ごめん。凌久…まだまだ戦ってるから…心配…かけたくなくて……」
「ん。分かってる。けど…悠稀も戦友だろ?大変な事程、隠し事はナシだ」
「……うん」
凌久は…
俺より、ずっと強い
「さ、コーヒーでも、飲みなはれ」
「うん。ありがとう」
凌久と、テーブルの前に座って
凌久が淹れてくれたコーヒーを飲む
「ちゃんと、通知音、着信音、設定した?」
「うん。暁が襲われてから、暁のは、ずっと音出したままにしてる。必要な時は、バイブにして、ポケットに入れてる」
「そっか…」
優しい凌久
いつも暁の心配してくれる
「凌久…」
「ん?」
「今日ね…散歩、行かない?」
「………ふっ…無理すんな。顔、引きつってんぞ」
「買い物は…ちょっと怖い…けど、散歩…行かない?」
「悠稀が、したい様に…俺は、別に今も困ってないよ?」
怖いって…
俺が怖がってどうするの?
凌久が怖い事から、守ってあげなきゃなんないのに…
「少しだけ…15分位…その辺、散歩しよ?」
「了解。途中、やっぱり嫌だったら、さっさと戻って来よ?」
「……うん」
凌久に心配されて、どうするの?
でも…
あの時の
スーパー行った時の凌久が
脳裏を過る
俺の手、振りほどいて
凄く焦った顔で
他の何も目に入ってない様に…
そいつだけしか
見えてない様に…
でも、美容室だって行かなきゃだし
ずっと、このままって訳にいかない
「悠稀」
「あ…何?」
「あと、何する?」
「あと…凌久の家の事。掃除と洗濯と…」
「んなの、毎日やってるわ」
「あと…は…」
「俺の筋トレ、付き合って?」
「あ…うん。いいよ」
そう言えば…
心なしか、凌久の体つき
しっかりしてきた様な…
「凌久…あんまり筋トレ、頑張らないで?」
「無理してないよ。ようやく、ちゃんと筋トレ始めたとこだ」
「…じゃなくて」
「ん?」
「結局俺、筋トレしてないし…また…そんなに頑張ったら、凌久だけ…いい体になってっちゃうから…」
「ふっ…んな、簡単になるかよ。俺は今、1からまた、筋肉作ってる様なもんなんだぞ?」
「元にまで、戻さなくていいよ?」
俺が、そう言うと
「ふっ…」
と凌久が笑って
「必死かよ。んじゃ、筋肉付いてきたら、悠稀にチェックしてもらうな?」
と、イタズラっ子みたいな顔で言ってきた
凌久と外に出て、家の周りを歩く
「今日は、風があって気持ちいいな」
「うん…」
そいつの顔を俺は知らない
俺達と同い年位の男の人が歩いてると
緊張する
まだ…病院か警察なんだろうけど
常識はずれな行動力…
何をするのか、何が起きるのか分からない
ちょうど15分位で
凌久の家へと戻る
疲れた…
精神的に…
ベッドに座って一息吐くと
「悠稀…大丈夫?」
「…え?」
「ずっと…緊張してたから」
「あ…ごめん。凌久に心配させて、どうすんだろ」
「そんなに、気張らなきゃならない事…頑張ってくれて、ありがと」
「凌久…ごめんね?俺の我が儘で、外も歩けなくて」
「気持ち分かるから。俺が悠稀だったら、鎖付けて繋いで、閉じ込めてたかも」
鎖…
閉じ込めて…
出来たらいいのに
「ふっ…嘘。悠稀が、ほんとに嫌がる事しないよ」
「あ…うん」
「頑張ってくれた悠稀に、キスしていい?」
「うん」
「悠稀…ありがと…」
「んっ…凌久…んっ……んぅ…んんっ…」
凌久は…
少しずつ、少しずつ
俺に触れられるのが大丈夫になってて
俺がキスしても
キスマーク付けても大丈夫
指や手も、もう平気
胸も、触ってもキスしても大丈夫
ただ…
下は…
俺も怖くて触れてない
感じるの…怖いって言ってたから…
「んっ…ふぁっ……んぅ…んん~っ…」
「悠稀…キス…気持ちいい?」
凌久のキス気持ちいい
けど
凌久の声で
更に気持ち良くなる
「んぁっ……きもちいっ…んっ…んっ…凌久っ…ん~~っ……はぁっ…きもちいっ…~~っ…!」
「悠稀の…感じてる顔……ヤバいって…」
「ん~~~~っ!…んはっ…凌久っ…ぁっ…きもちいっ…んんっ…~~~~~~~~っ!」
「はっ…ごめん。いつも…途中で止めれなくなる」
全身が
どうしようもない幸福感に包まれて
気付くと、凌久の胸の中
「ごめんっ…凌久……いつも…途中でっ…んっ…終わらせちゃって…」
まだ…体中が、おかしい
「途中じゃないよ。悠稀が、感じ切ったら終わり」
「~~っ…俺だけ、いつも恥ずかしい」
「恥ずかしくないよ。嬉しいよ」
凌久の胸の中から
少し上に上がり、肩に顔を埋める
「凌久…なんで、そんなにキス上手なの?そんなのされたら…皆、凌久から離れられなくなっちゃうからね?」
「悠稀以外にするかよ」
「ん……」
…あれ?
なんか…
凌久のシャンプーの匂い
いつもと違う
………え?
何で?
だって、昨日も大学終わり、送って来て
それから、今日まで家に居たはずなのに…
俺の知らないうちに…
何処か行った?
全身が凍りついたかの様に
急速に冷えていく
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